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「大阪で50人死亡 過去最多」の誤情報 いかに拡散したか

 大阪府で5月7日、4月23日〜5月6日に死亡したと新たに判明した死者50人が発表されたことについて、大手メディアの安易な速報報道をきっかけに、「1日で50人死亡は過去最多」という誤情報が爆発的に広がった。
 膨大な拡散量であるが、今後インフォデミック現象を検証できるよう、主なものだけでも可能な限り、時系列で記録する。

(冒頭写真:NHK5月7日放送、NHK関西NEWS WEBより)

主要メディアの第一報(5月7日17時すぎ)

 大阪府が「本日判明した死者は50人」と速報値を発表すると、メディア各社が一斉に速報した。
 この時点でまだ死亡日別人数は発表されていないが(従来から毎日20時に死亡日別人数を含む詳細版が発表されることは公知の事実だった)、テレビ各社は間髪入れずに「過去最多50人死亡」と一斉速報した。
 大阪府が「過去最多」と発表したわけではない。だが、メディアは1日で発表された死者数としては「過去最多」と判断し、そのように速報したのである。

 ネットニュース媒体として圧倒的な影響力をもつYahoo!ニューストピックスにも掲載される。

 全国紙メディアも1つとして例外はなかった。

ジャーナリストや識者が拡散(5月7日17時以降)

 この速報ニュースに、フォロワーを多数有する著名なジャーナリストや識者が反応し、次々と拡散させた。

大阪府の詳細版の報道発表(5月7日20時)

 大阪府が5月7日20時、死亡日別人数や年齢別人数などの詳細版を発表した。ここで50人の死亡日は4月23日〜5月6日にかけて分散していたことが明らかとなった。整理すると、次のようになる。

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 この発表時点での死亡日別死者数の推移をグラフ化すると、次のようになった。直近の5月6日の死者数は16人で、死亡日別に見た最多人数は4月30日の32人だった(注:その後、新たな情報が発表され、数値が更新される可能性があります。最新情報はこちら)。

詳細判明後も、報じ方は変わらず(5月7日20時以降)

 この詳細情報が判明した後も、「1日として過去最多」というメディアの報道は変わらなかった。

 例えば、朝日新聞が21時すぎに配信したデジタル版記事には、「死者は過去最多となる50代~90代の男女計50人が確認された」と書いてあり、大阪府の詳細版報道発表を受けて記事化されたものだった。
 だが「過去最多」と1日あたりの死者数とミスリードする見出しは変更されなかった。

 そして、翌日朝刊も同様の報じ方であった(下:朝日新聞5月8日東京本社版朝刊1面)。

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ジャーナリストや有識者も拡散(5月7日20時以降)

 「大阪府で過去最多の死者50人」のニュースは、その後もジャーナリスト、有識者、政治家などによって拡散される。以下は、いずれも大阪府が詳細版の報道発表をした後のものである。

 さらに、AERA.dotが5月8日15時に大阪の100万人あたりの新規死亡者数がインドを上回る 「まるで姨捨山」とまらない医療崩壊という扇情的な見出しをつけて配信。この記事も冒頭に「大阪府の死亡者数は最多を更新した」と記されていた。

 この記事はネット上で多くの識者らが引用し、瞬く間に拡散した。

医師もテレビで発言、ネットでも拡散(5月9日以降)

 さらに倉持仁医師が5月9日朝のTBS「サンデーモーニング」に出演し、「大阪府では(毎日)40〜50人が死亡している」と発言。これもネットで引用され、拡散した。

 この時点で判明していた1日あたりの死者数は20人前後で、最も多いときで4月30日の32人であった。【訂正:5月8日発表時点で4月30日は33人としていましたが、正しくは32人でした。グラフも差し替えました。最新情報はこちら

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 5月9日20時、本プロジェクト主宰の楊井がYahoo!ニュースに詳細な解説記事を配信した。






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