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23. 今日受けた質問:語彙のニュアンスの違い

 日本語を学習しているクライエントが中・上級レベルともなると、語彙の細かいニュアンスの違いを根掘り葉掘り聞かれます。クライエントがせっせと自分で言葉の意味を調べてみても、英語で書かれている意味、同じじゃん…( クライエント怒 )!でも先生、この言葉とこの言葉では使い方違うんでしょ?意味も微妙に違うんだよね?…なんてのはよくある話です。

 てことで今回は、今日のとある60分クラスで聞かれた「違いを教えて」質問と私なりの答えをメモっておきます。いつものことですが、以下の回答は私なりの答えです。頑張って調べて答えてはいますが、100%正しいのかは保証しません。

Q1.「~とされる」と「~とする」の違いって、なんですか?

A_「~とする」は、
①人が何かの仮定条件を設定するときや、
  例:ここに川があるとします。
②「…と考える」とか「…と判断する」という意味で使います。
  例:アメリカは、日本には良い指導者がいないのが問題だとしています。

で、「~とされる」は、その受け身形です。つまり、その仮定条件を設定した人が誰かわからないとき、または誰か特定する必要な無いときに使われるのが「~とされる」のほうです。

Q2.「取り戻す」と「取り返す」の違いって、なんですか?

A_「取り戻す」は失ったものを元の状態に戻すことを指し、「取り返す」は失ったものを補うための行動を指します。この言葉は、感情や状況を元の状態や位置に戻すことも含みます。
 例:「失った時間を取り戻す」「かつての栄光を取り戻す」

「取り返す」では、「補う」ものは、失った物と同じ場合もありますが、同等、またはそれ以上の価値がある別な物でも構いません。相手や状況に対処し、その状況を修復しようとする意味が含まれます。
 例: 「失敗を取り返す」「損失を取り返す」

Q3.「くみとる」と「把握する」の違いって、なんですか?

A_「くみとる」は、意味が2つあります。
1つは、 液体などをすくって、別の器などに移すこと。
もう1つは、情報の一部から見えていないことも推察して情報全体を理解すること。
今回は2つ目の意味でかんがえます。

 「把握する」は、全ての情報をしっかり見て、情報全体を理解することです。

 「Aさんの考え」で考えてみます。
 「Aさんの考えをくみとる」は、Aさんの話をちょっと聞いて、そこから「Aさんの考え」の全体像を「こんなんかなあ?」とイメージする感じです。
 「Aさんの考えを把握する」だと、Aさんの話を全部をひとつずつしっかり聞いて、何を言いたいのかをしっかり理解して、その全ての情報を組み合わせて「Aさんの考え」の全体像をイメージする感じです。

 全体像を捉えるという点では意味はよく似ていますが、捉え方の程度に大きな違いがあります。

Q4.「映画館の客席はがらんとしていた。」は、なぜ「とする?」なぜ「がらんでした」ではない?

A_ ここでの「がらんとしていた」という表現は、映画館の客席が空いていて、人がほとんどいなかったことを表しています。ちなみに、このような形容詞による表現では、「~としていた」という形で状態を示すのが一般的ですが、名詞修飾の形になると、「〜した」の形になりますね。
 例:部屋はしいんとしていた→しいんとした部屋

 ところがこれが「がらんでした(Nでした)」だと、状態を表す形容詞ではなく、「がらんとする」の語源でもある「伽藍:がらん」という名詞になってしまいます。
「伽藍」とは、宗教建築物の中でも、広大で壮大な建物や建築物のことを言います。意味が変わってしまいますね。

Q5.「そのチームは、力強いプレーで敵を圧倒した」…なぜ「完敗した」ではいけないのですか。

A_「完敗する」というのはボロボロに負けてしまうことをいいます。
 逆に「圧倒する」は、相手よりもずっと素晴らしい力や威力で相手を負かす(つまり勝つ)ことをいいます。
「そのチームは力強いプレーで完敗した」だと、「自分たちの力強いプレーのせいで、試合に負けてしまった」という意味になってしまいます。
なんか、変ですよね。

Q6.「撃つ」と「討つ」の相違は、なんでしょうか。

A_「撃つ」は武器を使って攻撃することを意味し、
 例: 猟師は矢を弓から放ち、鹿を撃った。
    警察官は銃を撃ち、犯人を制止した。
「討つ」は敵や悪者などを倒すことを指します。
 例: 戦国時代、武将は敵将を討つために戦いに挑んだ。
    天使たちは、悪魔との戦いで悪を討つために戦った。

Q7.「脅す」と「脅かす」の相違は、なんでしょうか。

A_「脅す」は、自分の意のままに他人を従わせようとして、脅しの言葉や行動で危害や不利益を与えるとほのめかして、怖がらせることです。
 例:彼は彼女を脅してお金を要求した。
      泥棒は、盗みに入った家の人たちを脅して金を出させた。
 「脅かす」は、具体的な行動や手段による脅しはなしで、怖がらせることです。
 例: 我々の果敢な攻撃が、敵を脅かした。
    インフレが生活を脅かしている。

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