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【本紹介】『欲しい ほしい ホシイ』から学ぶ、ヒトの本能から読み解く広告。

みなさんこんにちは、
グラフィックデザイナーのウエマツです。


今回は、現在私が受講している講座、

「アートとコピー」の、
課題でペアを組んだ相方から教えてもらった本がとても面白かったので、そちらの紹介をしていきたいと思います。


クリエイティブディレクター・コピーライターの、
小霜和也(こしもかずや)さん著、

『欲しい ほしい ホシイ── ヒトの本能から広告を読み解く』

今回も、安定の付箋とマーカーだらけになりました。





クリエイティブディレクター・小霜和也さんとは。


お恥ずかしながら、今回この本と出会うことで小霜和也さんを知ったので、まずは簡単にどんな方なのかを見ていきます。


小霜和也

1962年10月22日〜2021年9月22日
兵庫県西宮市生まれ。
職業、クリエイティブディレクター。

マス・Webを統合する広告キャンペーンに多く携わっている。 2018年より内閣府政府広報アドバイザー。 電通デジタル顧問[3]
児童養護施設の孤児たちの学費支援を続けており、震災後は食事のデリバリーや本などを携えて被災地に入った。
家庭では3人の子の父親。「読む本の9割はマンガ」というだけあって、「マンガ書庫」と呼ぶ部屋まである[4]
2013年に希少がんである軟部肉腫を発症。闘病生活を続けながら活動していたが、2021年9月22日7時5分死去。58歳没[1]

Wikipediaより抜粋

本の中でも何度も例に上がる、小霜和也さんが手がけたプレイステーションの広告。



ヒトの本能から読み解く広告。


この本から学んだ、
『ヒトの本能から読み解く広告とは』

それは、

広告とは製品に文化遺伝子をくっつけて商品にするメソッド

それではここからこの言葉を分解して見ていきたいと思います。


まず、文化遺伝子とは、

文化遺伝子「ミーム」

言語が基となって伝わっていく知恵や知識のこと。

リチャード・ドーキンスが著書『The Selfish Gene』で提唱した概念。

遺伝子が生物の情報を伝えるのと同様に、ミームは文化やアイデア、信念などを伝え、進化させます。例えば、都市伝説や流行りの言葉などがミームとして広がり、変化していく様。

では、なぜこのミームが広告に必要かというと、

ミームを深く理解することは、文化やアイデアがどのように広がり、進化していくかを理解するのに役立つから。

と、なります。
それは、人間の行動や社会の変化を予測し、文化的現象を分析するために重要です。


大切なのは、企業が文化遺伝子(ミーム)をどう発信していくか、生活者とどう伝え合うかを考えていくこと。
コミュニケーションをとっていく中で製品に価値の付加をしていくこと。
となるわけです。


広告表現を考える。


購買行動を科学的に掘り下げる。


この本で書かれている、広告表現を考える上で大事なことは、

ヒトの認知に本能がどれほど影響を与えているかを知ること。

になります。

伝説のダイレクトマーケッターと呼ばれるジョセフ・シュガーマンは、

「人は感覚で買い、理屈で納得する。」

と言っています。
それを科学的に掘り下げていきます。

ベンジャミン・リベットという生物学者が、
ヒトの脳は何か行動を起こす時に、脳に準備電位が生ずるタイミングと実際に行動するタイミングの時間差を測定しました。

結果、脳は行動「前」ではなく0.3秒「後」に活動していることがわかりました。

動いてから「やろう」と意思決定しているということです。

これを購買行動に置き換えると、

最初に無意識による衝動で「買いたい」と思い、
その次に意識が納得をして、購買行動に至る。

ということになります。


広告表現に活かす。


それを、広告表現に活かしていくには、
広告の持つ2つの大きな役割を知ることが必要です。

ひとつは、

無意識の情動に訴えかけ「買いたい」ドーパミンを分泌させるもの。

もうひとつは、

「買わないほうがいい」という意識の拒否権を押さえ込むもの。

以上になります。

消費行動の研究によれば、消費者がお店に入る前に買うべき商品を決めている「計画購買」の割合は約11%に過ぎない、というデータがあり、
買う物を決めてから理由を「後付け」しているかもしれない、ということがわかっています。


これをブランド戦略に置き換えると、

生活者の無意識にじゅうぶん刷り込まれているトップブランドは、さらに無意識への刷り込みを続ければよく、
刷り込みがじゅうぶんではない弱いブランドは、意識の拒否権を押さえ込むための差別化ポイントを理性的に訴求していくことが大事。

と、なります。


そこで、どのような広告が無意識のレベルで購買行動を促すことができるのかをあげてみると、

・あなたが買うからわたしも買う

模倣行動と呼ばれ、動物の多くは他の個体を模倣しているということ。
行列が行列を呼ぶ現象や、ブームの正体もこれにあたる。

あなたが楽しいからわたしも楽しい

霊長類特有の能力として、他者の感情が理解できる、自分事のように感じてしまう、というものがある。
バラエティ番組でも「笑いどころ」というタイミングで観客から笑いが起こるようにするなど。
人間は相手や周りの感情に引っ張られます。
「笑い」には警報解除のメッセージ力がある。

など、他にも多くの具体例が本文には書かれています。


広告とは。


そろそろまとめに入りたいと思います。

記事の冒頭でも書きましたが、

広告とは製品に文化遺伝子をくっつけて商品にするメソッド

そこから考えもう一段掘り下げてみると、
広告を作るという仕事とは、

文化遺伝子(ミーム)の増殖をサポートする仕事

ということになります。

なかなか、このように2000文字程度の文章でこの本の内容をうまく伝えることは厳しいところがありますが、大まかに言うとこのような感じかと思います。

この記事で、なんとなく小難しく、理屈っぽくなりそうな本という印象を与えてしまったかもしれませんが、
なぜ、小霜和也さんはここまで広告というものを掘り下げて考え抜いていたのか、と言えば本当にシンプルに、

広告、だけでなくクリエイティブへの「深い愛」

これに尽きると思うし、これが溢れる1冊だと思っています。

だからこそ、
人を、社会を持続可能なものにするために、人間の本質を見据えた人間愛の価値を説いてくれています。

文章も読みやすく丁寧に解説されているだけではなく、ところどころにクスっと笑ってしまうような表現も入っていたりと、とてもテンポの良い構成になっています。


プロを名乗るなら!


最後に私の感じたことを少し書かせてください。

デザイナー、コピーライター、クリエイティブディレクターなど、
他にもモノ作りを職業としている人達。
いわゆる「プロ」と呼ばれる人達は『必ず』読むべき本です。

プロの定義というのは色々あると思いますが、トッププロの共通点に
「変態レベルの解像度」
というものがあると思っています。

私が今までお会いしてきた、世界の最前線で活躍されている方達には必ずありました。

それが形になったモノがこの本だと思います。

楽しい広告を作って世の中をよくしたい、というありふれた思いから、人間の本質なところまで掘り下げていく姿勢は全てのプロが学び、標準装備していかなければいけないと思います。

小霜和也さんの真似をしろ、というわけではなく、
「こういうプロがいた」ということを知り、そこから自分はどんなプロになるのかを選択していけばいいと思います。


Aiが発達し、イケてるイラストや、イケてる文章がコモディティ化した今、本当に価値のあるものを生み出す「プロ」としてどのように振る舞っていくのか、ここをしっかりと考えていきたいと思います。

そして、本当に広告への愛に溢れる本だったので、少しでも気になった方は手にとってみることをオススメします。


以上、ウエマツでした〜

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