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【開催レポート】全国自治体リスキリングネットワーク 第3回自治体情報交換会:地域企業リスキリング~自治体による中小企業のDX支援~

ベネッセコーポレーションは、2023年5月に「全国自治体リスキリングネットワーク」を発足しました。
このネットワークでは、自治体同士が横のつながりを持ちながら人材育成に取り組むことで、業務改善や行政サービスの向上、地域の活性化を目指しています。

2024年2月7日には、第3回目となる情報交換会を開催しました。
今回はその中でも「地域企業リスキリング」を切り口とした内容についてレポートします。


中小企業のDX/デジタル化の取り組み状況と課題

ベネッセコーポレーション 成澤直

コロナ禍をきっかけに、さまざまな業界でDXへの関心度・緊急度は高まりました。
一方で内閣府の2021年度の調査では、中小企業でのDX取組状況は1割未満ということがわかっています。
大企業の6割以上という数値に比べると、ここには大きな差があります。

そこで、ベネッセは2023度、中小企業を対象としたDX調査を実施しました(全国1,760社、従業員300名以下の企業の経営者・役員を対象)。

自社にDX/デジタル化が必要だと答えた企業のうち、「取組を行っていない」「やっても手ごたえがないと感じる」と答えた企業は実に65%にも上ります。
DXへの感度が高いにもかかわらず、DX化が進んでいない原因はどこにあるのでしょうか。

DX/デジタル化推進の課題について、およそ60%の企業が「取組み方・進め方がわからない」と回答しています。
また、「デジタル・ITの知識や技術を持った人材がいない」と答えた企業は43.7%でした。
つまり、企業内でDXを推進する人材が不足しているということです。

DX推進人材の不足に対して、人材育成・リスキリングが必要だと考える企業は75%いるものの、課題としては「人材育成ノウハウ」「コストの課題」「社員のモチベーション」の順に挙げられています。

この課題を解決するためには、自治体などによる支援が必要だと考えます。
今日の情報交換会にて皆さんと意見を交わしながら、自治体による中小企業のDX支援のあり方を一緒に考えていければと思います。

広島県の取り組み事例「広島県が取り組む県内企業のリスキリング」

広島県 商工労働局 産業人材課 リスキリング支援グループ 主査 濵中俊典氏

広島県リスキリング推進検討協議会について

近年、社会環境の大きな変化により、働く人に求められるスキルも変わってきています。
そんな変化の激しい中でも成長を続け、雇用労働の観点で課題を解決するために、広島県では2022年4月に「広島県リスキリング推進検討協議会」を発足しました。

経済団体・労働団体・有識者・行政が集まり、「リスキリングにおいて必要となるスキルとは」「リスキリングで必要な労働環境とは」「労働市場の流動化に対応する社会システムとは」などについて議論して方向性を決め、連携した取り組みを進めています。

広島県リスキリング推進検討協議会」では数多くの議論を重ね、2023年7月に最終報告書を発表しました。
以下ではその内容を抜粋してご紹介します。

広島県リスキリング推進検討協議会最終報告書について | 広島県 (hiroshima.lg.jp)

◆経済成長・社会環境の現状と求められる対応

  • 少子高齢化により働き手が減る中でも経済成長を目指すには、労働生産性の向上が不可欠

  • 広島県内の企業では「DXに対応する必要がある」と認識しているものの、まだ着手できていない事業者も多い

  • 日本では「人材への投資はコスト」という風潮が長らくあったが、今後経営者は「人材への投資は重要である」という意識改革が求められ、労働者にデジタルスキルなどを身につけてもらう必要がある

企業はリスキリングによって労働者のスキル習得を支援し、スキルを身につけた人材を最適な部署に配置することで、生産性と付加価値の向上に加えて業務効率化も実現できる可能性があります。

◆企業におけるリスキリング推進のあり方

  • リスキリングは企業が主導するものであり、学ぶだけでなく業務に活用することが重要

  • リスキリングは一度実施して終わりではなく、文化としての定着が求められる

  • 企業の経営戦略と人材戦略をひもづけたうえでリスキリングを推進することが大事

  • 労働者は受け身ではなく、自ら学び続けるマインドを持つべき

経営者はリスキリングを主導する立場として、方針の策定・環境整備・知識やスキル習得機会の提供・評価や処遇の見直しをセットで検討することが重要です。

◆労働市場の流動化を踏まえた社会システム等のあり方

  • 企業は人材に対する投資を拡大し、自社の価値向上を図る

  • 労働者は学びのアンテナを高く持ち、自律的なキャリア形成を図る

  • 両者の取り組みを支える柔軟性のある労働市場が社会インフラとして必要

上記3つのトライアングルが地域経済の継続的な発展につながることから、行政はキャリアコンサルティング機能の充実や、職業訓練・再就職支援などの社会インフラの整備について、時代にあったものへと変化させながら実行する必要があります。

広島県における今後のリスキリング関連施策について

広島県では2022年から2023年にかけて、「県内のリスキリング推進機運の醸成」をテーマに、経営者・人事担当者などを対象としたセミナーを実施してきました。
リスキリングを実践する企業が独自の取り組み内容を発信する「広島県リスキリング推進宣言」では、2024年1月末時点ですでに246社が宣言を公表しています。

2024年度からはさらに一歩踏み込み、「県内企業のリスキリング実施フェーズへの支援」をテーマに進めます。
今後はリスキリングを含む人的資本経営に関する情報発信を行うポータルサイトの構築や、伴走型コンサルティングによる知識やスキル習得支援など、地域企業が具体的にリスキリングを実行できる状態を目指します。

広島県の取り組み:まとめ

企業からよく聞かれる声として、「リスキリングをしたら社員が会社を離れてしまうのでは?」というものがあります。
その答えは、YESでもありNOでもあると思います。

もしリスキリングが個人任せの学びになってしまえば、退職理由になり得るでしょう。
しかし、リスキリングにおいて大事なのは、社員が会社での存在意義ややりがいを感じることです。

「経営理念を実現するためにリスキリングをする」という方向性を明らかにしたうえで、実務において学んだ知識・スキルが活かせる場を作り、その活躍度合いに応じて適切な評価をすることが重要です。

従業員エンゲージメントが上昇すれば、離職が減るだけでなく企業の価値向上やスムーズな人材確保にもつながります。
広島県内の地域企業の持続的な成長・発展に向けて、今後もリスキリングの重要性を伝えながら地域のビジネスの競争力強化を目指したいと考えます。

パネルディスカッション

【登壇者】
広島県 商工労働局 産業人材課 リスキリング支援グループ 主査 濵中俊典氏
ベネッセコーポレーション 成澤直

トークテーマ①県内企業のリスキリング機運醸成にどう取り組んでいるか


===note版でのご紹介はここまでとさせていただきます===

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ぜひ多くの皆さんのご参加をお待ちしています。