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アクア・創世・リウムをやり、おまえは神の仕事を始める

よくきたな。おれは逆止弁魚津々郎(ぎゃくしべんうおつつろう)だ。おれは毎日ものすごい量のアクアショップ経営者の変態的趣味ブログを読み漁っているが、誰にも教えてやるつもりはない。アクアリウム業界というメキシコを、情熱と努力と知識と技術と人脈と行動力で生き抜いてきた真の漢たち・・・・それらが語るマニアかつリアルな情報、例えば実際に生息地へ飛んだ際に目撃した環境、水質、空気感、現地の漁師などから得られた知見・・・その体験を飼育/管理技術へ応用したり慣習を見つめ直す過程などはとても興味深く勉強になるし、思いもよらぬ魚種との出会い、また既知であっても見落としていた魅力に気付かされる瞬間は代えがたい喜びだ・・・・。たいへんおすすめする。

知らねばならないこと

再三の注意書きになりこころぐるしいが、このメキシコ・アクアリウムシリーズは敬愛する逆噴射聡一郎氏───その独特な、タフと表現するほかない文体で紡がれた数々のコンテンツ紹介、ハウツーテキストでその名をとどろかせている、あの───へのリスペクトそしてラブを前提に、マネっ子してアクアリウムについて語りたい放題するものだ。もしおまえが未だ本物のメキシコの風を知らないならば、すぐにブラウザバックしてビールとドリトスを買いに走り、氏の名で検索とかして真の漢のぶんしょうを目撃するべきだ。それだけでもおれがこの記事を書いた意義がある・・・・。毎度のことながら前置きに時間をつかった。本題に入っていく。

水槽が立ち上がる、それは何?

「水槽を立ち上げる」というタームは、いかにもアクアリストという感じで使いごこちは悪くない・・・・が、初心者にとってはわかりにくいうえ、頻出する語句でなんかウザいし、前提知識のように扱われがちでもし認識のズレがいちじるしい場合なんかはとても、とてもよくないことになる。今回はまず、おれとおまえの立ち上げ概念を過去の記事を参照しつつシェアーアーリングし、立ち上げの過程について書いていく。今回目指す立ち上がった水槽とは、有機物の分解過程で生ずるアンモニアを、微生物の働きにより、漏れなく速やかに弱毒化するシステムが出来上がった水槽、とする。水槽の設置や管理維持方法は、その規模、収容する生体、個々の信条に因ってさまざまに存在し(毎日全換水、または無換水、新水垂れ流し等)、混乱を避けるため持って回った言い方をしたが、家庭の水草水槽であれば、ごくスタンダードな立ち上げ概念と言えるだろう。この弱毒化(硝化)の仕組みについては、シリーズの濾過編を参照してもらうとして、とにかくなにをやればこのシステムができあがるのか、示していこう。

アンモニアというダニートレホは、目に見える汚れとして現れない

現状のバーチャル・おまえの水槽を見てみよう・・・・とりどりの水草が植わさりカルキを抜いた清浄な水で満たされ、ピカピカの外部フィルターが今しがた稼働を始めグングン水を回している・・・美しい・・・・が、ここに戦略無く生体をドボドボ入れた場合、間違いなく大部分がしぬ。水を入れたばかりの水槽には、見えざるダニートレホ──────主にソイル、生体から発生する有機物そしてアンモニア──────をどうこうする機構が存在しないためだ。この機構を支える微生物たちは、ゆっくりと、それぞれの特性に応じた段階を踏んで少しずつ水槽に定着していく。まず有機物分解細菌が繁殖する。その営みがアンモニアを生じ、それを分解する細菌が増殖、亜硝酸を生じ、それを糧にする細菌が増え始め、硝酸のかたちまで漕ぎつける。この仕組みが滞りなく、また水中の有機物に対して充分な処理能力を獲得するまで、添加剤など工夫をするにしても一か月、しなければその倍は想定しておきたい。予期せぬ有害物質の急増(これはちょっとしたことで起こりうる)にも対応できる、ある程度の冗長性まで獲得するには、さらに時間を要するだろう。アクア・ニュービーにとって、果てしなく、とても耐えがたい話だ。ここで安心してほしいのは、耐えがたいのはおれもおまえも他の連中もおおむね同じであること、また、必ずしも上記の仕組みが完全にできあがるまで生体を入れられないわけではないということだ。

神であっても安息日までは働く

水槽を立ち上げるためにどれだけじっくりと向き合うべきかをおまえは理解した。では、長くしのびがたい創世紀をどのように過ごすべきなのか?これは答えのない問いで、蒸発分を足すのみでほぼ放置してしまうやり方から、積極的に介入する考え方もある。正直各々の性格や生活様式に左右される部分が大いにあるため、おまえのいい塩梅でやってもらえばいい。今回はあくまで初心者の立ち上げを想定しているため、水槽管理の手順に慣れてもらう意味でも、しっかり介入していく方法を示す。難しいことはない、水を換えまくることだ。

水を入れてから1週間から2週間、隔日または毎日、総水量の1/3から1/2程度の水を捨て、カルキを抜いた新水を補充する(このとき新水に規定量のバクテリア剤を添加するのもいい)。注水して間もなく発生する茶色のコケや緑の柔らかい苔が落ち着いたら1週間ほどかけて頻度を落とし、その後は日常管理のルーティンとして週に1、2回程度で継続する。頻度を落とすタイミングでエビや貝などのコケ取り生体を少量入れるのも効果的だ。そのまま1週間ほど様子を見て、入れた生体が元気なら、魚を少しずつ導入していく。おおむねこういった手順だが、ここまでこのシリーズを追ってきたタフで知的好奇心にあふれ注意深いおまえには、いくつか腑に落ちない点があるだろう。たとえば、せっかく増えたバクテリア、または投入したバクテリア剤その他が含まれている大事な飼育水を、みすみす捨てては足して薄め続ける(換水分を添加しなおすにしても、それだけ無駄にしている)意味、そして、まだ立ち上がりきっていない段階で生体を入れてしまうことの是非、そのリスクを補うメリットについて、などだ。答えとしては、水草の成長促進の為、ということになる。水草の旺盛な生育は、淡水水槽の立ち上げそして維持に多大な恩恵をもたらしてくれる。アンモニア、硝酸塩の消費、根張りにより土壌を耕し、また酸素も供給してくれる。これはバクテリアによる浄化の営みとは別のところで働くために、立ち上げ中の不安定なバクテリアの趨勢に起因する悪影響を緩和してくれるうえ、安定後のセーフティネットとしても機能する・・・・この万能のアクアリウム・スーパーバッファーはしかし、ただちに十全に機能するわけではない。新しい環境におかれたり、剪定等ダメージを受けたりしたあとしばらくは、順応のために成長を止めてしまうからだ。ものによっては葉をすべて落とし、茎だけのような状態になってからようやく成長を始めるものもいる。より早い順応のためには、水質の安定、CO2または微量元素の供給、コケの予防、抑制が不可欠であり、高頻度の水換えはそれらに高いレベルで貢献する。水草が勢いづけば、少量のコケ取り生体が生存できる程度の余地は作り出せるし、そのフェーズにあっても依然水換えは頻度高めに行っているので、有害物質の排出と水草が相互に、正の方向に作用し合い、その間にもバクテリアの分解システムはできあがっていき・・・・なんやかんや、魚が棲めるようになる。ここで注意するのは、バクテリアの浄化の営みは発生する有機物と有害物質の絶対量に対して適切な処理能力を獲得していくものであるため、一旦数匹の生体導入が成功したからといって一気に数を増やすと処理能力が追いつかずに・・・・R.I.P.・・・・どうして・・・・ということになる。少しずつ間隔をおきながら導入していくことだ。

さいごに

テーマを絞れたのと過去の記事のおれに一部丸投げできたため、わりと短めに終わってよかった・・・・。今回めでたくバーチャル・おまえのアクアリウムはたいへんによく稼働を始め、一部とはいえ自然のシステムをその手で再現しおおせた。ほんとうにすばらしい・・・・・アクアリウムがすなわち世界の運営であることをよくわかってもらえたとおもう。わりと言いたいことを言い尽くした感じはするが、生体の種類や混泳の相性、また長期的な維持管理、メンテナンスについて書く機会も設けたいと思ってはいる・・・・。今の所1月うおをほとんど描けなかったため、しばらくそっちを頑張りたい気持ちなどもある・・・・。とにかくこれは最終回ではない、そういうこと・・・・またこんど!

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