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【25卒就活日記】金髪で働けないのはやっぱりおかしいよね。

 「うちは想像されているより、身だしなみの規定がゆるいですよ。まぁ、金髪とかはどうかと思いますけど。お客さまに、信頼されることが重要な
ので。」

 先日、とある企業の説明会に参加したときに聞いた言葉だ。私もこのときは「まぁそうか」と思いながら聞いていたのだが、時間が経つほど、やはり何かおかしいのではないか?と感じるようになった。

 日本の就活、ひいては職場で独特のルールとなっている「見た目」に関するルール。画一的な見た目を強いられることへの批判の声は少しずつ上がっている。しかし一方で、就活生の「他の人と違うことをしたくない」という不安な気持ちは変わらず、結局ほとんど全員が同じようなスタイルを選択している。

 「お客様に信頼されないから」「面接官に評価されないから」とひたすら相手の気持ちを勝手に推測しそれに合わせて髪色を決める。うーん、なんという下から目線。「お客様は神様」「面接官様は神様」のマインドは根強い。

 突拍子もない話だが、私は身長が大きい。おそらく日本に暮らしている女性の中で5%には入る水準の高身長である。身体のバランスもなんというか、「日本人女性」らしくないので、ちょうど合う服や靴を見つけることが難しい。就活の場でいえば、スーツはサイズを調整すればよいのでまだ良いとして、パンプスを見つけることが難しい。結局、ローファーなどを履いて対処している。パンプスの代わりにローファーを履いたことで落とす企業がもしあったとすれば、それはこちらから願い下げ、という気持ちである。

 さて私の場合の身体の特徴は身長であるが、これが髪の色であったら、どうだろうか。日本社会には、いや正確にはごく一部の面倒くさい日本の大人の方々の中には、「明るい髪色=礼が無い」「明るい髪色=勉強に集中できていない」といった偏見があるようである。実際、私は校則のゆるい中高に通っていたため、こうした非合理的な考えの大人にはあまり会ったことがない。しかし、この世の中の「暗黙の了解」として、理想的な髪色が定められていることは、残念ながら学習してしまった。

 中高生時代には「暗髪」「ストレート」が理想とされる私たちの髪型(女子の場合)に関しては、大学、就活、仕事の場になるとさらに複雑な要求がなされるようになる。

 大学に入れば、「垢ぬけをせい」と言われ、黒髪は何となくダサい、といった風潮すらある。これに関しては、本当に意味が分からない。さらには、自然のままの髪ではなく、やれ髪質改善だ縮毛矯正だと、ひたすら「髪をツルツルにする」ことを要求される。ちなみに、体毛は無い方がいいらしい。頭に生えている髪は豊かに綺麗に、それ以外はゼロにしたほうがいいらしい。うーん、やっぱり良く分からない。と、とぼけてみたが私も含めてこれが「当たり前」の「理想」と思っている(思わされている)人は多いだろう。一回言わせてくれ。日本の常識、キモ。

 さて、体毛への多大なる気遣いと課金を要求され始める学生時代を超えると、いよいよ就活である。ここではまだイレギュラーなルールが出てくる。そう、「黒髪」「前髪なし(もしくは薄め)」などである。リクルートスーツ、パンプス、ストッキング、ナチュラルメイク(すっぴんはNG)などと併せてこの髪型が重要な項目として扱われている。誰が決めてるのか知らないけど。

 この、誰が決めているのか知らないけど、というところは結構重要な観点ではないかと思っている。そもそも私たちは、なぜ就活時に画一的な格好をするのだろうか。それを一言でまとめると、「誰かがそう言っているから」である。就活ナビサイトに書いてあるから、友達もそうしているから、人事の人がそう言っているから、親がそう勧めてくるから……などなど。果たして自らの意志で黒髪、リクルートスーツ、パンプス、を選択した人はどれだけいるだろうか。

 私たちは、他者にルールを決めてもらい、それに従うことに慣れすぎてしまった気がする。これは日本社会の良いところでもあり、悪いところでもあると思う。学校教育から始まり、街のいたるところに、「このルールに従え」「秩序を壊すな」「疑問をもつな」というメッセージが潜んでいる。たしかに、決められたルールに従っておけば面倒ごとが起こることは殆どない。利益こそないにすれ、失うことも無いように思える。だからみな、ルールに従うのだろう。しかし私たちは、ルールを変えていく推進力、疑いを持って自らこの世の中を変えていく力をなくしてしまった。こうした力は本来、誰もがいついかなる時も当たり前に行使すべきである大事な力だと思う。

 私たちは独裁国家に生きているわけではない。しかし「自由だ」と言われながら「自由のために」様々なルールを課されている。道路交通法とか、本当に大事なルールもある。しかし、仕事をするときに金髪にしてはいけないことは、本当に守るべきルールか? 地毛が金色の人は、このルールのために髪を染めるべきなのか? 一人一人が疑問を持てば、こうしたルールは自然になくなっていくだろう。

 就活をしていてこうした話を聞いていると、滅私奉公のマインドは未だに無くなっていないなあと感心する。思うに、私が話を伺っている企業の社員の方々も本気で金髪がダメだと思っているわけではないと思う。しかし、「金髪を毛嫌いしている誰か」(総じてお客様)のために己らを合わせていっているのである。とんだドM精神である。というか、自分の髪色のことまでを他人に依存して考えるというのは、それこそめちゃくちゃ子供っぽく、自立心に欠けたことではないかと思ってしまう学生の私である。

 まあそうはいっても、私も結局リクルートスーツを着るんですけどね。自信が無いので。今日の文章は殆ど、こんな自分への嫌悪感の裏返しです。

 なんだか気が滅入ってしまいましたが、最後に、最近好きな名曲の歌詞を。

君と出会った奇跡が この胸にあふれてる
きっと今は自由に空も飛べるはず
ゴミできらめく世界が 僕たちを拒んでも
ずっとそばで笑っていてほしい

スピッツ「空も飛べるはず」(作詞、作曲・草野正宗)

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