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世界2.0~メタバースの歩き方と創り方~①

メタバース

おそらく一度は聞いたことがある言葉かと思います。この言葉が一躍有名になったのは2021年10月にFacebookが社名を「Meta」に変えたあたりからではないでしょうか。

FacebookのCEOマイク・ザッカーバーグは2021年のメタバース事業に約1,3兆円を投資し、以後10年間で総計約13兆円を投資することを宣言しました。

ITに疎い私からすると、「メタバースってそんなに成長分野なの?」といぶかしげに思ったものです。もちろんこの背景にはメタバースの可能性だけではなく、当時Facebookの社員が内部告発をしたことで広告収入が激減したこと、社員のサボタージュなども明らかになり大きな社会的批判にさらされたこと、WhatsAppやInstgramなどの買収が独占禁止法にあたるとして連邦取引委員会から提訴されたこと、そもそもSNSとしてのFacebookの成長が今後期待できなくなったことなど、いろいろな側面がありましたが、メタバースの市場がそれだけ魅力的だったことに変わりはありません。

Facebookだけではなく、Appleやディズニー、中国のテンセントなどもメタバース市場において激しいつばぜり合いを繰り広げています。

今やアメリカや中国の巨大IT企業では「スマホとソーシャルメディアの次の大きなイノベーションはメタバースだ」という認識が共有されているのです。

メタバースとは

それではメタバースとはいったいどんなものなのでしょうか。

メタ(Meta)は「向こう側」を意味する接頭語、バース(verse)は「宇宙(universe)」から来ている造語です。

メタバースとは人間が共有する仮想世界に参加できる空間のことを指します。

https://www.btcc.com/ja-JP/academy/crypto-basics/metaverse

わかりやすく例えると映画『マトリックス』『竜とそばかすの姫』に出てくるような仮想空間になります。

『マトリックス』では主人公ネロが機械にログインして、仮想空間の中で敵と戦うというストーリーでした。一方『竜とそばかすの姫』では主人公のすずがインターネット上の仮想空間の中でベルという大スターになって世界中の人たちから注目を浴びるというお話でした。

『マトリックス』は世界観が壮大すぎて、なかなか理解が及ばないところもあるので、メタバースを考えるときには『竜とそばかすの姫』の世界を思い浮かべる方が理解がしやすいかと思います。

さて、そんなメタバースの世界ですが、実は2003年にアメリカのリンデンラボというベンチャー企業が『セカンドライフ』というメタバースをリリースしました。しかし、彼らは時代を先取りしすぎたせいで、その人気は急速失速していきます。その一つの理由は通信回線の速度です。今のような5Gという高速回線がなかったため、その世界観は上記のような現実の世界観を表現するものではなかったと言われています。

しかし、当時から20年近くが経ち、テクノロジーは恐ろしいスピードで進化をしています。メタバースと聞くと我々の生活からは程遠いところにある気がしますが、実際には身近なところでメタバース(またはメタバース的なもの)は存在しています。それは『あつまれ どうぶつの森』『Minecraft』『Fortnite』などに代表されるオンラインゲームです。

ただ、それらのゲームを通してメタバースの今後の可能性を信じている人がどれだけ多くいるかは疑問です。おそらく多くの人たちは、メタバースの発展について懐疑的な見解を持っているのではないでしょうか。

「バズワード」に対する態度

実際に本書ではメタバースのような「バズワード」(一見、説得力のある言葉のように見えて、実は定義や意味があいまいなキーワードのこと)に対する我々の態度が下記のようにまとめられています。

①シニア層
「チャラチャラしていてけしからん」「そんなことは現実化しない」という否定的な態度。
②若者
「自分にとってプラスになるのであれば、新しい流れに乗っかって活かしてみよう」という態度。
③ミドル層
「メタバース?一応知ってはいるけど、それってくだらないものでしょう」という斜に構えた態度。冷めた目でと遠くから様子を伺う。

私は決して若くはないのですが、③というよりは②です。実際に教育界でメタバースは今後一大ブームになると思っており、Facebookの「教育メタバース研究会」のメンバーにもなっています。

上記のバズワードに対する私たちの態度に関してですが、著者の佐藤さんはビジネスとして考えるならば②の態度以外に得られるものはないと断言しています。それはそうですよね。①は論外ですし、③の人がその新たなムーブメントに目を向けるころは、②の人たちがチャンスを総取りした後なので何も残っていません。

AppleやFacebookのような世界を牛耳るメガ企業が数兆円をかけて投資している分野に対して、我々のようなパンピー(一般ピープル)が「メタバースの時代なんて来るわけねーじゃん」と吐き捨てるには無理があると思われます。

テクノロジーの進化を予測する方法

先ほどテクノロジーが恐ろしいスピードで進化していると書きましたが、テクノロジーの本質的な特徴を筆者は下記のように述べています。

①人間を拡張するものであること
②いずれ人間を教育し始めること
③掌から始まり、宇宙へと広がっていくこと

上記は少し抽象的な表現なので、もう少し具体に落とすと、テクノロジーは人間のもつ機能の拡張で、①最初に「手足の拡張」から始まり、②社会に広がることで今度は人間がテクノロジーに合わせて生活スタイルを変えていく。さらに、③「消費者」から3~5年遅れて「企業」、さらに、3~5年遅れて「行政」へと広がっていきます。

上記のようなテクノロジーの法則性を理解することで、今ある技術が今後どんなものに応用されていき、どんな人たちにどんなタイミングで広まっていくのかということが予測できるようになると本書には書かれています。

堀江貴文の驚異的な先見性と解像度

そして、本書ではホリエモンのメタバースに対する先見性が述べられています。まだメタバースという言葉が世に出回っていない時期に、筆者の佐藤さんは一人で3DCGの技術を学び、バーチャル空間上に現実世界そっくりの都市を生成し、その映像をSNSにアップしていました。その映像に真っ先に興味を持ったのがホリエモンでした。彼は自分の専門外の3DCG やVRを外から見ただけでその本質と将来性を見抜き、他産業への応用可能性まで佐藤さんと議論できるほどでした。

さらにはメタバースの土台を支える3DCG やVRといった技術が、彼がどっぷり浸かっている衛星データや月面開発のような宇宙産業とも結びついていくという予想も佐藤さんと見解が一致していたとのことです。

ここでホリエモンにまつわるあるストーリーを思い出しました。

ホリエモンは2005年にフジテレビを買収しようとしましたが、結局この試みは失敗に終わりました。彼がテレビ局を買収しようとした理由は、インターネットメディアとテレビメディアを融合させて日本にこれまでに存在しなかった最強のメディアグループを作成したかったからでした。

昨年サッカーのワールドカップは民放だけでなく、ネットメディアである「ABEMA」で全試合放送されました。生粋のサッカーファン(サッカー歴30年以上)の私はこの恩恵を大きく受けたのですが、同時にホリエモンのフジテレビ買収劇を思い出したのでした。もし当時ホリエモンがフジテレビ(ニッポン放送)の買収に成功していたら、または証券取引法違反で逮捕されていなかったら、日本のメディアならびにIT産業はもっと早い段階で進化し、今とは違った形になっていたかもしれません。

話がメタバースからだいぶそれてしまいましたが、次回メタバースの可能性、そして日本が持つ可能性などについて書いていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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