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変異株を追え!~新たな迅速判定法の開発~

こんにちは。東京iCDCの事務局です。
最近ニュースでよく聞く新型コロナウイルスの「変異株」って、何が今までのものと違うの?といった疑問を持つ方、多くいらっしゃるかと思います。

そこで、今回は、変異株に関する様々な疑問を、東京iCDC「微生物解析チーム」にも参画いただいている、東京都健康安全研究センターの吉村所長にお伺いしました。

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-吉村所長、よろしくお願いします。早速ですが、今話題の変異株は、感染力が高いという報告もあります。すでに都内で感染が広まっているのでしょうか。

1月20日現在、都内で変異株による感染が広がっているという報告はありません。ただし、1月18日に国内でイギリス由来の変異株の市中感染が疑われる症例が見つかったことからも、今後、海外からの渡航者との接触が全くなかった方が、変異株に感染した事例が多数明らかになる可能性もあります。十分注意が必要です。

―なぜ変異株は感染力が高いと言われているのでしょうか。

ウイルスは、人の体内に侵入して、増殖する際に遺伝情報をコピーします。このタイミングで、コピーミスが起こり変化することがあります。これが「変異」です。

新型コロナウイルスには、3万ほどの遺伝情報がありますが、例えば、今話題となっている変異株は、この3万のうちの1か所にこれまで見られなかった変異が入っています。この変異株は「N501Y」と呼ばれていますが、これは、遺伝情報が変わったことで501番目のアミノ酸がアスパラギン(N)からチロシン(Y)に変わったことを表しています。ウイルスはタンパク質で構成されており、アミノ酸はタンパク質の基になっています。この501番目のアミノ酸は、人間の細胞表面の受容体にウイルスがくっつきやすくなるかどうかを決める主要なタンパク質(スパイクタンパク)を構成するアミノ酸の1つです。現在の変異株(N501Y)のほうが「感染力が高くなっている」と言われているのも、その変異により受容体にくっつきやすくなったためです。

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【遺伝情報:変異株の情報が異なることが分かります】

-3万もの情報のうち、たった1つの情報が異なるだけで、「変異株」になるのですね。違いを見つけるのが難しそうですね。

実は、イギリスでの変異株の報道があってすぐに東京都健康安全研究センターでは、変異株の迅速検査法の開発に着手いたしました。そして、先月末、変異株検査方法の開発に成功し、スクリーニング検査として導入しました。この検査方法は、異なった1つの変異情報を迅速に確認することができます。変異株は、報道されているとおり、様々な国の由来のものがありそれぞれ異なった特徴がありますが、イギリス由来、南アフリカ由来、そしてブラジル由来の変異株も「N501Y」変異が起こっているという点は同じです。そのため、この501番目の情報を中心に、簡易迅速なスクリーニング検査を行っています。

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【検査の様子】

-1日どのくらいの検査を行っているのでしょうか。また、その検査方法で変異株が見つかった場合、どうするのでしょうか。

1月以降、東京都健康安全研究センターでは、保健所から持ち込まれる検体を1日およそ500~700件、多い日では900を超える件数の検査をしています。最近では、1日に50~100件が新型コロナ陽性と判定されています。陽性と判定された検体は、その日のうちに我々の開発した変異株検査を行います。もし、変異株が見つかった場合は、国立感染症研究所に検体を送り、確定検査を行うことになります。

東京都健康安全研究センターで導入したこの変異株スクリーニング検査方法は、迅速かつ多数の検査が可能です。国立感染症研究所でも同様の検査方法を開発しており、今後、全国に広げていく予定であると聞いています。
引き続き、国立感染症研究所とも連携を取りながら、早期に変異株を発見し、迅速な対策につなげるよう頑張っていきたいと思います。

―最後に、変異株が広がった場合、都民の皆様にはどのような点に気を付けていただければよろしいでしょうか。

変異株といっても、感染予防策は変わりません。引き続き、三密を避けていただき、マスクの着用や手洗い、換気、消毒など基本的な感染防止対策の徹底をどうぞよろしくお願いします。

―吉村所長、ありがとうございました。


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