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激戦の帰り道で思い出したのは、大山悠輔の心遣い【5/11 対ベイスターズ戦●】

関東の球場に遠征する際は、実家への帰省も兼ねることにしている。横浜スタジアムまでから自宅までは電車で1時間半くらい。試合のことを振り返る時間は十分すぎるくらいにある。京浜東北線の車内から景色を眺めながら思い浮かんできたのは、大山悠輔だった。

8回表1アウト1塁で迎えたこの日の第5打席。ベイスターズ・山﨑康晃の初球が大山の方へ抜けていった。大山はボールを避けきれず、肩の近くにボールが当たった。あと少しで頭に当たるんじゃないかってくらい、怖い球だった。
怒号が混じったざわつきが聞こえる3塁側の観客席とは対照的に、大山は優しかった。

まず、ボールが当たったことを心配するキャッチャーの山本祐大を軽く手で制した。次に、3塁ベンチから向かおうとしたチームのトレーナーを手で制した。そして、帽子を取って不安そうに見つめるピッチャーの山﨑に視線を向けながら、軽い駆け足で1塁に向かった。決して睨みつけることはしない。「大丈夫だから」という気持ちを伝えるためのアイコンタクトだったと思う。小走りしながら1塁に向かったのも、問題ないことをそれとなく伝えるための所作だったはずだ。

軽くかすった球ではない。頭の近くに飛んできたボールだ。それだというのに大山は表情を変えなかった。
よく「とっさの反応には人柄が出る」なんて言われるけど、この言葉は本当だと思う。なぜなら、大山は最後まで回りへの気遣いを忘れていなかったのだから。

野球の試合は刻一刻と展開が変わる。「今日はいけそうだ」と思う試合でも、ときには信じられないようなひっくり返され方をされることもある。グラウンドの中には揺らぎやすいものが多すぎる。それが面白くもあり、ときにつらい。そんなときに変わらないものが見つかったら、どれだけ頼もしいだろうか。

大山の優しさが変わらなくて、心の底から安心した。だから僕は、この人が4番を打っているチームを誇らしく思うのだ。

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