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Bun

白檀 byakudan

白檀と百合の花が好きだったなあ。どちらも白い。故人に百合の名がつくひとがいた。やわらかい人だった。生きていたら百合の花と白檀のお香か練り香水をプレゼントしたいなと21になってからふと考える。命日になると父は私を連れ出し深夜墓の前で缶ビールと煙草を煽りながら毎回同じ思い出話をする。お線香の匂いがやけに胸に響く。もうあれから10年以上経ってしまった。ひとの適応性は時々怖い。あの人がいない人生にみんなが自然に慣れている。過ごした日々はずっと残っている、わたしは老いても忘れないし、人生で一番尊敬しているんだとおもう。あの人が吸ってたKENTの煙草をわたしも吸って真似てみたけど、わたしには合わなかったや。潔くて強いあの人みたいになれたらいいな。

憶 oku

ある音楽を聴いてここに行った時によく聴いていただとか、誰かと会う時に聴いていたとか情景や人物を思い出すひとは少なくはないんじゃないかな。音楽に記憶が刷り込まれているみたいに。自分の中でこの曲はあの人の曲だという音楽の認識の仕方がある、ラブソングなんかはそうかも。視覚芸術もぼんやりと覚えることができる。モナリザと聞いてほとんどの人が全体が茶暗くて髪の長い女の人が座って微笑んでいるぐらいのイメージは持つんじゃないかな。

気づいたことがあるんだけど、匂いを嗅いで何かを思い出すことはあってもその逆の匂い自体を思い出そうとしても思い出すことは出来ない。視覚や聴覚は絵で描いてみたり、口遊んでみたり表現する術があるけど、嗅覚はどうしても表現する術がないからなのかな。なにかのきっかけで同じ匂いを嗅いだ瞬間思い出してしまうことがあるっていうのはなんだか御まじないにでもかけられているみたいだなあ。

花綵 hanaduna

ある男の友人と戀バナをするのが好き。彼は物心ついたときから心が女性だったみたい。彼の悩みは女の人が好きな男の人しか好きになれないこと。いつも報われないって自虐交じりに嘆いていてそんな明るさがいいなと思ってる。彼が幸せになることを願います。

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