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Mon

檸檬 lemon

梶井基次郎の「檸檬」という作品を皆さんは読んだことがありますか。
高校の頃に読んだけど内容が私にはいまいちわからなくて、間違いなく私に読解力が抜け落ちているからだと思うけれど。いまいち分からないなりに1ページ目から何回も声を出して読んでみてた。
数年経って、檸檬と聞くと一番記憶に残っているのは読んだ時の音だった。文字は覚えていないのに文章を読んだイントネーションや間合いは覚えている。口遊むことができる。

『得体の知れない不吉な塊が私の心を終始圧さえつけていた』

この文章のリズムが好きだった。久しぶりに読み返して、文字が音に当てはまってすっきりした。これはド忘れしたことを頑張って思い出した時のすっきり感と同じ感覚だった。

不意 fui

わたしは煙草を毎回毎回吸うわけではないけどたまーに吸いたくなる時がある。煙草を吸ってからわかったんだけどあの行為って単なる暇つぶしなのかもしれない。住んでいるところの目の前にコンビニがある。少し遠いスーパーで2リットルの水を買うと帰りが重いから2週間に一度のペースで夜2リットルの水を2本決まって買いに行くんだけど、ついでに煙草を1回だけ買ったことがある。ある日の夜、また水を2本買いに行って御会計を済ませてレシートは大丈夫ですと顔を上げたらおなじみの顔と目が合った。「あ、きづいた?今日はKENTの新作あるよ!」と留学生の女の子がはにかみながら言った。買いに来た時には必ずいるからこの人とはもう顔見知りになっていた。顔を上げるまでこの女の子って気付かなかったけど。前に新作ありますかと尋ねたら品切れと返ってきたから仕方なしに違う煙草を買って帰ったのを覚えてくれていたんだ。少しこそばゆくなったけど、今は煙草っていう気分じゃないから「今日は大丈夫」って少し笑い気味で言ったら「そっか!今日は大丈夫か!またね!」と笑顔で手を振ってくれた。
こういう些細な会話ができるのがこの街の良さだと。

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