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スタッフ時代からパートナー時代まで、私が感じた「監査の魅力」

監査の魅力って、言いつくされているのかもしれませんが、私自身の監査法人入社から退職を振り返り、それぞれの時代に感じた魅力をお話しします。


監査法人で30年強、うち17年をパートナーとして勤めた「てりたま」です。
このnoteを開いていただき、ありがとうございます。

一週間以上前、スペースを実施する際に質問を募集したところ、「監査の魅力を教えてほしい」という質問をいただきました。
監査法人からコンサルティング会社への転職を決めたというシニアの方で、転職の決断が自分のキャリアにマッチしていたことを確かめるために、監査の魅力を聞かせてほしい、というちょっとひねりのあるご質問です。

監査の魅力があまりないように書くほうがご希望に沿っているように思いますが、この記事は監査をされている方や会計士を目指しておられる受験生の方にもお読みいただいていますので、そこはフェアに行きます。

上から目線で「これが魅力だよ」と言うよりも、スタッフからパートナーまで、各年代に私自身が感じてきた魅力をお話しします。
それぞれ挙げていくときりがないのですが、2つずつに絞ります。

記事の最後に、転職についての考え方にも少し触れることにします。



スタッフ時代に感じた「監査の魅力」


勉強したことを使って仕事ができる

大学受験のときに、「これが一体、将来何の役に立つんだろう」と思いながら勉強しませんでしたか?

公認会計士試験二次試験(今の論文式試験)を勉強したときには、実務でどう使われるのかイメージがわきづらい科目もありました。
しかし、合格後には、実務経験を重ねることでパズルのピースがかみ合うような楽しさを感じました。

机の上で体系的に勉強したことだけでは監査はできませんが、実務のベースにはなるので、一生懸命勉強したことが報われたように思いました。


合うはずの数字が合わないとき

合うはずの数字が合わないときには、何とも言えない焦燥感を感じます。よほど金額が小さいのでなければ、そのままでは終われないので、何とかしないといけません。

そして、クライアントに質問するなどして、数字のつじつまが合うと、とてもすっきりし、晴れ晴れとしたカタルシスを感じます。
逆に、どうにもつじつまが合わないときは、間違いの可能性が濃厚になるにつれて、血が騒ぎます。

あまり賛同を得られないだろうなと思いながら書いています。変態っぽくてすみません。
そんなスタッフでした。


シニア時代に感じた「監査の魅力」


三次試験で学びなおした理論と実務が結びつく

三次試験(今の修了考査)に合格してシニアになりました。
三次試験や修了考査は、多くの会計士にとって、体系的な勉強を強いられる最後の機会です。
勉強中は、実務で感じた疑問が解消したり、断片的に経験してきたことがつながったりすることの連続でした。

合格して晴れて公認会計士になってからしばらくは、事務所の中で、体系的な最新知識を学んだばかりの貴重な人になります。
上司から現場で「あれ、基準ではどうなってたっけ?」とテクニカルな質問を受けることが増えます。また、上司や先輩が古い知識や勘違いから間違った方向に行きそうになるのを軌道修正する機会も増えました。


クライアントから感謝されることが増える

スタッフのときは、クライアントには質問や資料依頼などお願いすることばかりで、感謝される機会は少なかったように思います。

シニアになると、往査メンバーの中で一番上になることが通常で、クライアントから質問、相談、ときにはクレームを受けることが多くなります。
そんなに重大なことでなくても、ちょっと調べて回答するなど問題を解決すると、クライアントに感謝されます。

「ありがとうございます!」と言われるとうれしいし、このクライアントのためにもっとがんばろうと思いました。


マネジャーやシニアマネジャー時代に感じた「監査の魅力」


監査業務を「仕切る」楽しさ

マネジャーとして、当期の監査をデザインし、パートナーやクライアントと合意し、シニアやスタッフをアサインしてチーム編成し、その部下たちを率いて目標を達成する。
責任は重くなりますが、監査を「仕切る」ことはとても楽しいと感じました。

マネジャー/シニアマネジャー時代の私にとっては、リーダーシップを発揮するパートナーはどちらかというと迷惑な存在で、好きにやらせてくれる上司の方が折り合いがよかったように思います。


得意分野ができて自信がつく

監査を10年もやっていると、得意分野が明確になります。
私の場合は、海外駐在での経験を踏まえてグループ監査の対応や、英文財務諸表の作成などが得意だったように思います。
また、クライアントがM&Aをしたり、長年の不正が発覚したりすると、必要に迫られて勉強しますので、得意になることもありました。

得意分野については、同僚マネジャーから頼られ、直属の上司ではないパートナーから質問を受けることも増えました。
最初は部門内で一番だったのが、事務所で一番になり、全国研修会や外部向け研修の講師を務めるようなこともあります。


パートナーにとっての「監査の魅力」


もっと大きい影響力を持つ

マネジャーでも特定分野で影響力を持つことは可能です。
それがパートナーになると、クライアント、事務所、部下、海外監査チーム、監査以外の専門家チームと連携し、もっと大きなインパクトを与えることができます。

例えば、海外展開を活発にしているクライアントでは、通常は海外に何らかの問題があるものです。クライアント自身が気づいていないこともあれば、気づいているのに対応できていないこともあります。
そんなときに、海外の複数の監査チームと連携し、親会社と子会社に同時に働きかけて改善を促すようなことができます。


定期的に壁にぶつかり、未熟さを痛感する

影響力が大きくなり、思うようなインパクトを与えられることが続くと、「ちょっと俺って、有能なんじゃない?」と勘違いしはじめます。
ところが、ときどきはそんな浅はかな自信が吹き飛ぶような目に遭います。

クライアントとの間で大炎上したり、品質管理部門から手痛いダメ出しをされたり、監査チーム内で衝突したりと言ったことです。

それ自体はネガティブなのですが、目の前の問題をどうにか解決し、少し落ち着いたときに見えてくるのは、これまで気づかなかった自分自身の「のびしろ」なんです。

すっかり打ちのめされてボロボロになると、まだまだ勉強も経験も足りなかったことを自覚します。
そして、明日に向かって努力するモチベーションになるのです。
やはり、変態なのでしょうか? そうかもしれません。

こうやって走り抜けた33年間を振り返ると、毎年のようにできることが増えていたことを実感します。それが自信につながり、自信を持てるとより大きなやりがいを感じるようになりました。

常に上を目指すことを辛い、しんどいと考える人もいるでしょう。
しかし、私の性格には合っていて楽しく挑戦できました。


質問をいただいた方に伝えたいこと

私一人だけの経験をお話ししてきましたが、いかがでしたか?
「監査の魅力」というよいことばかりを取り上げましたが、もちろん苦しいこともあり、途中で辞めようと思ったことも何度もありました。

「監査法人をいつ辞めるのがよいか? 辞めるべきではないのか?」という質問をいただくことがあります。
私は、いつ辞めてもよいし、辞めずに続けてもよいし、よく言われるように選択肢が多いことが会計士という仕事のよいところだと考えています。

自分の人生は一度きりなので、辞めるか辞めないか、いつ辞めるかについて複数の選択肢を試して、正解を見つけることはできません。
大事なことは、それがどんな道であっても、自らの努力で正解にすることです。

これから新しい職場で苦労もあると思います。是非ともそれを乗り越えて活躍してください。応援しています。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この投稿へのご意見を下のコメント欄またはX/Twitter(@teritamadozo)でいただけると幸いです。
これからもおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

てりたま

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