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認知症の母:固定電話と携帯電話の不思議

2021年11月23日。
母が電話に出ない。
家の固定電話に何度かけてもずっと話し中で、携帯電話は鳴ってはいるが全然出ない。

先週、ネット銀行の仕組みがわからないと呼び出されたばかりだ。
固定電話で話し中だとしても長すぎるし、もしかして携帯電話の使い方がわからなくなったのか?
連絡が取れないのは困るし、祭日で時間があったので母の家を訪問した。

すると母は家にいて「あらやだ、どうしたの?」ときょとんとしていた。
犬の散歩と買い物に出かけて戻ったばかりだと言う。
「携帯も聞こえなかったのよ、ごめんなさいね〜」と大笑い。

やれやれと一安心。
家へ入って受話器が外れてるのかと思ったらちゃんと置いてある。変だなと耳に当ててみるとツーっという音がしない。見ると電話線が抜かれていた。さらに不思議なことに1年ほど前にオレオレ詐欺対策用にと買った赤と緑のランプが付くタイプの新しい電話器が別のものに代わっていた。
それに携帯電話もスマホからガラケーになっていた。

??一体どうして?
母に聞いても何も知らないしわからないと言う。

そういえば母はスマホユーザーになったものの1〜2年おきに機種変更を繰り返していた。理由は「機械のせい」だと聞いていたが、今思えば、母はすでにスマホの操作ができなくなっていたのかもしれない。
それを理解したdocomoの窓口の人がガラケーを勧めたのだろう。

でもそのガラケーの使い方がよくわからないという。
かくいう私も「どうだっけな〜」とピッピコピッピコ触ってみたが、すぐには細かい使い方を思い出せない。スマホになって10年以上経つしな…

「じゃあ、使い方をメモに書こうか」
と思い出すための時間稼ぎも兼ねて、母にメモとペンを渡してガラケーのボタンの簡単な図を書きとるように言った。

ペン先が迷う母

すると、母は
「え〜っとえ〜っと。これを書くのよね」
とペンを持った手がウロウロ迷い、しばらくは口だけが動いた。
母は見た図形をうまく描けなくなっていた。

結局私が描いた

その日できたのは使い方を書き残すことだけだったが、ほとんど母の役には立たず、後にガラケー本体に説明の紙を貼って対応した。

固定電話はまた1ヶ月もすると電話線が抜かれた。理由はわからないが、弟と話して固定電話は使わないことにした。数年前には「オレオレ詐欺」電話がかかってきて警察を呼んだことがある。
不審な電話も、銀行からの電話も、営業の電話も全て固定電話にかかってくる。
携帯があれば困らない。

その後、母が使えるかどうかとても心配したガラケーだが、驚くことに2024年3月の今でもちゃんと話せている。かけて取ってくれる確率は5割ほどだが「もしもし〜」と明るい声で答えてくれる。でもかかってくることはほとんどない。

一人暮らしの母と電話で話せないのはとても困ることだった。
ガラケーはとても役に立っている。

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