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多様化して進化する小売業

column vol.1193

久しぶりにマーケターとして専門分野の小売業についてのお話をしたいと思います。

国内の主な食品メーカー195社を対象にした帝国データバンクの調査では、5月に値上げされる食品は417品目

前年同月と比べて50.2%減少したとはいえ、生活者の実感としては、物価高を感じる日々でしょう。

そんな中、注目されているのがプライベート・ブランド(PB)です。

ここ最近、多様化し、進化しています。

そこで、本日はPBにまつわる最新トピックスをお届けしたいと思います。

ぜひ最後までお付き合いくださいませ。


「価格=価値」の従来型PB

消費者の心をしっかりと掴んでいる代表格の1つが、イオンです。

グループの共通PB「トップバリュ」売上高は、間もなく発表される2024年2月通期決算で初めて1兆円に到達する見通しとなっています。

〈DIAMOND online / 2024年3月26日〉

セブン&アイ・ホールディングスも価格訴求型ライン「セブン・ザ・プライス」などで成果がみられており、 24年2月期のPB売上高過去最高の水準まで復調する予想となっております。

そんな中、小売業界の中で熱い視線を集めているのが家電メーカーパナソニックです。

PB向けの受託製造への参入を検討。

具体的な販売チャネルや参入時期は未定としていますが、水面下で複数の小売店などにヒアリングをしているそうです。

〈東洋経済オンライン / 2024年4月19日〉

これは、同社がこれまで苦手としてきた低価格帯で他社ブランドの受託製造を行い、国内市場での実質的なシェアを高めるのが狙い。

…というのも、家電業界は熾烈な価格競争になっているからです…

もともとパナソニックでは、価格競争を避けるため、2020年に「新販売スキーム」を掲げ、その目玉として指定価格制度を導入。

これはメーカーが在庫リスクを負う代わりに、量販店などで販売される際の価格を決められる制度なのですが、値崩れを防ぎ、利益率を上げようと試みたわけです。

一方で、同制度は他社が低価格戦略を仕掛けてきた場合、取り残される可能性が高い…

実際、ドラム式洗濯乾燥機では、パナソニックが最上位モデルを30万円超で展開する中、東芝ブランド美的シャープでは同クラスのモデルを20万円台前半まで値下げ

これにより、パナソニックは売り上げを落とす結果となりました。

さらに、中国メーカーの低価格戦略が市場を席巻しており、同社も生き残りをかけて、PBを重点戦略にしているのです。

安さだけじゃないPBが加速

一方、これまでの「価格=価値」という概念を打ち破る新しいPBも生まれています。

特に重要なテーマになっているのが「健康」「環境」

小売業界におけるこの分野の元祖といえば、イオン「トップバリュグリーンアイ」でしたが、ライフコーポレーションが追い上げを見せています。

20年より自然派PB「BIO-RAL(ビオラル)」より展開。

ターミナル駅などの人口集積エリアに「ビオラル」屋号の店舗を出店すると同時に、既存店へのBIO-RAL コーナーを導入するなどブランド定着に力を入れています。

他にも、23年11月にはヤオコーが健康軸の新ブランド「Happiness(ハピネス)」の販売をスタート。

現時点では、こうした商品群の展開が売上・利益を大きく押し上げる存在にはなっていないのですが、着実なファン拡大と客単価アップにつながっています。

また、ドラッグストアでも健康&環境関連のPBが見られます。

例えば、ウエルシアホールディングス「からだWelcia」「くらしWelcia」です。

〈ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月20日〉

からだWelciaは、総菜スナック類など食品類を扱うブランド。

そして、くらしWelciaトイレットペーパー綿棒脱脂綿といった日用品・雑貨類を揃えています。

そして、この2つのPBは

「とまらないアーモンド小魚」
「自然の恵み99%かつ薬用のハンドクリーム」

といった「健康」「環境(自然)」をコンセプトにした商品が展開されています。

昨年6月に発売した「食塩無添加がやさしい7種のこだわり神ナッツ」は、食塩と油を使用せず、こだわりの焙煎方法でカリッと香ばしく仕上げた商品。

価格は245グラム入りで861円なので、従来のPB商品に比べて価格が高いのですが、品質で勝負する姿勢が窺えます。

くらしWelciaでも、「顔も体もこれ一枚!Ag配合フェイス&ボディシート」では海中生分解性不織布を使用しており、環境にやさしいという付加価値を提供しているのです。

「パーソナル」が次の切り口に

「価格=価値」という視点では、スケールメリットがものを言います。

さらに、そこで勝ち抜いた商品どこでも誰でも手に入る個性のない商品となり、消費者にとって魅力を感じない可能性が高い

しかし、高付加価値商品ならば、物量の競争からは解放されるわけです。

その分、個性が出せる。

最近、その究極だと思ったのが、マツキヨココカラ&カンパニーが昨年4月に発売したパーソナライズヘアケアブランド「MQURE(エムキュア)」のシャンプー・トリートメント「MQURE for U」でしょう。

発売以来、ヒットが続いております。

同商品は、髪質ライフスタイルなど、12項目の診断に答えることで自分に合わせたシャンプーやトリートメントが届くというもの。

診断はネットできます。

(1)髪の太さや質、悩みや理想の髪型について回答
(2)好きな香りを選択

これにより、自分に合ったシャンプーを手にできるというわけです。

価格はシャンプートリートメントのセットで6600円と、従来のPBやNB(ナショナル・ブランド)と比較しても高価格帯ではありますが、多くの方々の支持を集めています

このようにPBブランドは、かつてのイメージからガラリと変わりつつあります。

いずれにせよ、デフレ脱却に向かう経済の中で、今後も「価値の高さ」というのは、ますますカギになっていくでしょう。

本日も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!

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