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急進する「起業促進」の波

column vol.720

政府はスタートアップ企業を支援するため、創業5年未満の経営者の個人保証を免除する施策を検討しています。

〈mi-mollet / 2022年7月16日〉

日本の場合、中小零細企業の経営者は、あらゆる場面において個人保証を求められ、無限責任を負うのが当たり前という環境でした。

こうした商習慣が、日本のベンチャー育成を阻んでいるとの指摘があり、今回の施策はこれを改善しようというわけです。

確かに、この国では銀行から融資を受ける際にはもちろんのこと、オフィスを借りる時や、コピー機をリースする時ですら、全て個人保証が必要になります。

しかし、『感じる経済学』『お金持ちの教科書』の著者であり、経営コンサルタントの加谷珪一さんにとっては、それよりも改善したい日本の商慣習があるというのです。

日本も「投資」で起業できる国へ

それは、この国の投資文化が世界と比べると気薄であること。

投資家による直接出資(返済の義務はなく、失敗した場合には投資家が損失を引き受ける)によって賄われる諸外国に対して、日本では銀行からの融資に頼らざるを得ない状況となります。

銀行にしてみれば、預金者から預かった大切なお金で運用するわけですから、リスクを回避するには、経営者個人に対してもガチガチに責任を負わせるしか無いというわけです。

もちろん、日本においても、技術力を持つ高度なベンチャー企業に対しては、ベンチャーキャピタルと呼ばれる専門の投資ファンド返済不要の株式で資金を提供しています。

また、最近では「ファンディーノ」など株式投資クラウドファンディングも生まれていますが、いずれにせよ、まだ少数派であると言えるでしょう。

さらに、創業間もない企業や、前例がない企業とは取引をしないといった、日本の大企業独特の商習慣も改める必要があると加谷さんは言及しています。

つまり起業を促進するためには、単純に個人保証を無くすといった解決策だけでなく、事業の売買や商習慣なども含めた総合的な環境整備が必要であると仰っています。

とはいえ、もちろん、今回の個人保証免除は間違いなく起業促進の大きな一歩になるはず。

今後に期待したいところですね。

「起業促進」の支援が続々と登場

他にも「起業促進」というテーマにおいて、いくつかのトピックスがありますので、ご紹介したいと思います。

最初は、加谷さんが課題に挙げた「投資」の話題から。

パナソニックは先週15日、SBIホールディングスの100%子会社であるSBIインベストメントと、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ファンド「PC‐SBI投資事業有限責任組合(通称:パナソニックくらしビジョナリーファンド)」を、共同で設立したと発表。

〈CNET / 2022年07月15日〉

くらしに関わる「エネルギー」「食品インフラ」「空間インフラ」「ライフスタイル」といった事業領域に強みを持つ国内外の有望なスタートアップに対して、今後10年間で80億円の投資を行う予定とのこと。

こちらも期待に胸が膨らみます。

それから、「場所」についての耳よりなニュースがあります。

WeWork Japan合同会社は、スタートアップ企業やスタートアップ支援企業・団体、自治体、NPO・NGO団体、教育機関を対象にした支援プログラム「Growth Campus」を開始。

〈INTERNET Watch / 2022年07月15日〉

対象となる条件を満たせば「WeWork 日テレ四谷ビル」最長6ヵ月間最大で75%引きの特別価格で利用できるようになるそうです。

利用できるスペースやサービスは、もちろん一般向けと同じ。

共用エリア電話ブース会議室Wi-Fiによるインターネット接続プリンターシュレッダーなどが用意されており、入居後すぐに仕事ができる環境が整えられています。

これは初期運営において大きな利点になるはずで、条件が合えば、ぜひトライしたいお得な施策です。

「地方」でも広がる起業促進の波

最近では地方でも起業促進への取り組みは熱を帯びてきていると感じます。

まずは熊本市の取り組みから。

同市では今年4月にスタートアップの支援施設「クロスポイント」を開設し、革新的な事業で急成長する企業や起業家の発掘・育成に本腰を入れ始めました

〈熊本日日新聞 / 2022年07月11日〉

スモールオフィスに早速6社が入居し、連日セミナー交流会を開くなど、名称に込めた「人の交わり」を生み出しているそうです。

さらに興味深いのが、入居した1社でウェブマーケティングなどを手がける「BREAK」が、学生や若手起業家たちの相談役を担っているそうです。

今後は地元の高校に対してマーケティングの出前授業も計画しているとのことで、官民が手を取り合って、地元経済の未来を築こうとしています。

他にも、山口市では様々な社会課題をビジネスで解決することを目的に「やまぐち社会起業塾」を創設。

〈日テレNEWS / 2022年07月17日〉

16日、開講式が開かれ、県内での起業を目指す受講生12人が出席しました。

やまぐち社会起業塾の林浩喜塾長はこのように意気込みを語っておられます。

社会的に果たすべき役割・使命を明快にしてもらう。それを実現に向け行動に移す。その人の良いところを引っ張り出して、社会課題解決に繋げていく筋道をつくるお手伝いをさせてもらう。

今日はパーパス・ミッション時代と呼ばれていますが、これは企業だけではなく「個人」にも求められている話だと私は考えています。

起業は置いておいても、自分が社会で果たす役割を明確にしておくと、仕事に対して能動的な気持ち(自立心)が生まれてくるはずです。

100年人生時代は、今まで以上に長く働かざるを得ない社会に移行していると言えます。

起業家精神をもち、個人のミッション・パーパスを設計できることは、心豊かにキャリアを築いていく上での大切なプロセスになる。

そんなことを改めて感じた本日の事例記事でした。



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