マスクって本当に効果あるの? ①

割引あり

マスクの起源と医療への活用

マスクの起源は、紀元前1世紀のローマのガイウス・プリニウス・セクンドゥス(長老プリニウス)が、鉱山で働く労働者を粉塵から守るために、ヤギの膀胱を利用させたのが始まりといわれています(1)。また、ペストが流行していた中世のヨーロッパでは、ペスト患者を診療する医師がカラスのくちばしのような形をしたいわゆる「ペストマスク」を着用し自身への感染を防御していた(当時は微生物という概念がなく“障気”の防御を目的としていた)と伝えられていますが、明確な証拠はないようです(2)。

いずれにせよ、マスクは空気中に浮遊している微粒子の吸入を防御することを目的として使用されていました。余談ですが、このような自身を感染から守るために使うマスクのことを、欧米では「レスピレーター」と呼んでいます。日本でも1870年代にはペスト予防の英国製のマスクを「レスピラートル」として認識していたようです(3)。その後、日本ではレスピレーターというと、多くの医療従事者は「人工呼吸器」を連想するようになり、自身を守る意味でのマスクをレスピレーターと呼称することはあまり一般的になっていません。ちなみに、人工呼吸器は英語ではベンチレーターと呼ばれます。

よって、ペスト予防として使われているマスクは、厳密にはマスクではなくレスピレーターということになります。このレスピレーターが医療の世界では、ある時期からレスピレーターの使い方に変化が起きます。その契機となったのは外科手術の発展です。手術後の患者が手術の原因による感染症になる例が確認されていました。正に細菌の存在が明確化さえ初めたころだったため、人の口の中にも細菌がいることが分かり、ドイツの外科医フリッツ・ケーニッヒは、一部感染リスクの高い患者の手術に「蒸気滅菌された口包帯を着用すべき」と著書に記しています(4)。

つまりこの頃(1900年)から、レスピレーターはいわゆるマスクとして、相手を感染させないために用いることという概念が普及し始めました(5)。このレスピレーターは、本来の使用目的と異なることから、外科(surgery)手術で使かわれるマスクということで、「サージカルマスク(surgical mask)」と呼ばれるようになり、現在でも医療業界ではマスクといえば、サージカルマスクを指します。当時のサージカルマスクは布製のものが一般的で、使用ごとに滅菌して使っていました。その後、科学技術の発展に伴い、現在ではより捕集性の高い不織布で作られるようになっています。

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