清掃業務がClostridium difficile感染症の減少に与える影響

はじめに
Clostridium difficile感染症(CDI)は、一部の抗菌薬の長期使用が原因となって発生します。Clostridium difficileは有芽胞菌であるため、アルコールが無効で、不適切な感染対策によって、しばしば医療関連感染を引き起こします。特に、CDI患者から環境に芽胞が曝露され、清掃を適切に実施しないと、交差感染が起こることが報告されています。
今回ご紹介する論文は、2011年に病院AにおいてTeam STEPPSを活用した清掃の業務モデルが構築され、その結果、CDIが減少したことから、病院Aの清掃業務モデルを病院Bに導入することでCDIの発生率が低下するかを明らかにし、適切な清掃の有効性を議論しています。
 
方法
2013年1月から2017年12月の間に、53床の急性期病院である病院Bで実施しました。毒素A/Bの酵素免疫測定法による検査結果に基づく、すべてのCDIについて、全米医療安全ネットワーク(NHSN)のサーベイランス定義を用いて後ろ向きにデータを収集しています。データの計算は、1,000患者日あたりの発生率、およびNHSNの感染症発生率の標準計算式に基づいています。この期間中、消毒薬や抗菌薬の新たな使用制限、または新たな隔離手法は用いていません。
 
結果
病院BにおけるCDI感染率は、ベースラインとした2013年の1,000患者日あたり0.48から、2017年には0.00となり(P=0.020)、100%減少しました。

図1 2014年の高頻度接触面の清掃遵守率
※高頻度接触面を頻回に清掃することでCDIの減少に繋がっている。


図2 病院Bにおける5年間の1,000患者日あたりのClostridium difficile感染率の傾向

考察
本研究により、医療施設内でのCDIの減少における清掃業務の教育および責任意識の重要性、ならびに清掃業務が果たす役割を認知することの重要性が示唆されました。
 
感想
米国では日本よりもCDIの発生頻度が高いため、CDI対策に関連する論文が多くpublishされています。有効な対策としては接触予防策、手洗い、病室環境の次亜塩素酸ナトリウムによる消毒があります。本研究ではこれらに加えて、Team STEPPSを用いた定期的な清拭による清掃で、物理的に芽胞を除去し続けることの有効性が示唆されました。
問題点としては、Team STEPPSを用いた定期的な清拭が、接触予防策、手洗い、病室環境の次亜塩素酸ナトリウムによる消毒などと比べて、費用対効果が優れているかが不明なことです。次のステップの研究として、費用対効果を明確にし、どの対策が最も効率性があるのかが示されることに期待します。

Environmental services impact on healthcare-associated Clostridium difficile reduction.
Am J Infect Control. 2019 Apr;47(4):400-405.e1. doi: 10.1016/j.ajic.2018.09.016.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?