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未来の建設業を考える:「信頼への挑戦」(2023年12月5日)

2024年から施行される残業規制

 2023年は新型コロナウイルスの影響が薄れ、海外からの訪問者(インバウンド)の増加などで日常が戻りつつあった。しかし、建設業界では2024年から施行される残業規制、それに伴う労働力不足の顕在化建設材料の物価高騰などが問題となり、それらの要因による品質管理の問題が浮き彫りになる年であった。

建設業の就業者

 日本建設業連合会(日建連)の調査によれば、建設業の就業者はピーク時の7割、479万人まで減少した。全産業と比較して、建設業の高齢化は急速に進み、2022年時点で55歳以上が4割も占める。労働力不足によるスケジュール遅延なども生じている。
 労働力不足は職人だけでなく、ゼネコンの現場監督でも問題となっている。大規模現場の一部では、監督の半分が派遣社員で占められる事例も増えている。
 また、物価上昇は円安要因もあり、激しいものがある。大規模ビルの建設工事費が坪200万円を超えるなど、不動産収支が成り立たないほどの建設費の上昇も見られる。一方、物価上昇前の先行契約された物件でも、物価上昇分の転嫁がなかなか進まない状況があり、現場の工夫でコスト削減する余地も少なくなってきている。

労働力不足

 これら労働力不足や資材・人件費の諸物価高騰などを背景に、事故や品質管理の虚偽報告などが要因となり、建設業の品質管理への信頼を失う事態が生じた。国土交通省も5月に「建設工事の品質管理及び施工管理の徹底について」を通達し、発注者への虚偽報告を厳しく戒める通達まで出された。
嘘は信頼を失うものである。

信頼はプライスレスでコストレス

 一方、信頼はプライスレスでコストレスである。
 信頼がなければ、現場の紛争は裁判で解決し、弁護士など関係費用がかさむ。信頼がなければ、監督の検査を行う者、さらに、その検査を監査する者、さらには第三者チェックと果てしない検査、監査が必要となる。しかし、最初に相互信頼があれば、無駄な人を配置する必要もなくなる。
 社員を信頼することも重要である。信頼できる社員がいれば、余計なコストは発生しない。会社も社員を信頼し、社員も会社を信頼できる。そこが品質管理の原点である。

信+者は、漢字どおり「儲け」

 相互信頼は信ずる者を生み、信+者は、漢字どおり「儲け」につながる。企業の儲けの源泉は何か、と考えたとき、モノやカネでなく、どれだけ多くの信頼できる社員・職人を持つことができ、発注者から信頼される産業になるかにかかる。
 そのためには、相互の話し合い、コミュニケーションが必須である。現場を見て、現場で感じ、何が求められているかを経営幹部は知り、社員や職人は信頼される仕事を会社に見せることである。
 信頼は一晩で築かれるものではない。
 ひとつひとつの積み重ねで、来年こそは真に信頼される建設業となることに期待したい。

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