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未来の建設業を考える:「日本版ISOのすすめ」(2023年07月7日)

世界競争力ランキング2023

 スイスの国際経営開発研究所(IMD)の世界競争力ランキング2023で、日本は過去最低の35位、アジア太平洋地域でも14位中11位となった。その主な要因は、経営の効率性、生産性の低さだ。世界デジタル競争力ランキング2022でも、日本は29位

ジャパン・クオリティー

 デジタル分野だけでなく製造業も含め、あらゆる分野で日本の地位が低下している。さらに、これまで品質的には世界一であった「ジャパン・クオリティー」も、いつのまにか、台湾や韓国、中国などにも抜かれつつある。建設業でも、製造業同様、世界と比較して品質の低下が懸念されるところだ。

「ISO9000」

 日本の建設業において、品質管理として定着しているのが「ISO9000」だ。
 ISO9000は、当時の英国サッチャー首相が日本の自動車工場を見て、品質的に劣る英国の自動車産業の品質改善の為に作成したものだ。当然、当時の日本のような現場からの改善活動、TQC活動などという発想は、「資本家」と「労働者」を明確に区分する英国社会では構築を望めない。経営者からの品質管理、いわば上から目線の品質管理体系として、英国標準が構築されていった。そこでは品質基準、品質管理ルールは、経営者、管理者が作成し、それを現場の労働者が守るための規則として始まっている。
 それゆえ、問題が生じると、現代社会はそれをコンプライアンスとか、ガバナンスとか言う言葉で片付け、さらにはISOルールを改正し、さらなる「ルールの縛り(しばり)」を作ることで対応する。
 しかし、これで本当に品質が担保されるのだろうか。
 むしろ、より良い品質を提供したい、より良いモノを製造したいという現場の気持ちが、ホンモノの品質確保につながるはずだ。特に一品生産で「すり合わせ型」の建設業には、もっと職人レベル、現場レベル、社員レベルでの品質確保への不断の努力が必要だ。

現代版の品質管理

 性悪説である人の「管理」ではなく、性善説である人と人の「信頼」をベースに、人工知能(AI)やITを活用した現代版の品質管理がいままさに求められていると思う。
 建設業と同じ残業規制に悩む物流分野では、すでに、人工知能(AI)を活用した抜本的な見直しを導入しようとしている。OKIが物流会社と協力して、AIが、積み下ろし回数、搬入時間、積載効率などを計算し、最小時間、最小コストとなる輸送ルートを提案するものだ。
 建設業でも、現場でタブレット入力や現場写真を管理することは普通になってきているが、さらに、AIを活用することで、工程写真から現場の進捗を正確に把握し「工程管理」につなげたり、ウェアラブルカメラを活用し図面と現場の出来形の照合・検査をAIが行ったり、搬入数量確認・品質検査を自動で行うことなども可能になってきている。ビッグデータの活用でも、IoTセンサーを活用したデータ分析による歩掛(ぶがかり)分析や生成AIを活用した施工計画案自動生成システムの実現も見えてきた。

「日本版ISO」

 そこで、提案したい。AIやITを活用しつつ、日本の良さである「人」や「現場」を中心とした、世界に誇れる生産性と品質を確保した「日本版ISO」の創造だ。
 日本版ISOにより、経営者だけでなく、社員、職人など建設プロジェクト参加者全員の信頼により構築された建設業の品質管理システムが導入されることで、書類に偏った管理ではない、現場に即した高い品質管理が確保でき信頼される「建設業」となることに期待したい。

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