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【参考にならない名古屋旅行】卓球で贅肉を上下左右に揺らし、野菜中心の肴でヘルシーに終えると見せかけて味噌をぬたり

友人の住む名古屋へ。急遽。

彼は名古屋の地を離れる決心をした、と連絡をくれた。もう少ししたら遠くの地へ行ってしまう。つまりは門出である。だから気持ちばかりの祝いに、私というありがた迷惑な大荷物を届けるのだ。

さて長旅になるぞ。5時間はかかる…

【1日目】

「滝見小路」で2夕食

まず、大阪梅田まで電車で出て、梅田スカイビルのバスターミナルに向かう。大阪に出るまでの電車では、おじさん登山集団の一人がムダにとおりの良いバリトンボイスで長芋について話していた。

車内の人間の頭の中はとろろめいたに違いない。粘りが思考の邪魔にならぬよう電車を降りる際にとろろはすべて車内に剥がし置いてきた。

黄色いクマ。雨も気にせず座っている

スカイビル方面に歩を進める。黄色いクマのようなオブジェが強い雨を気にも留めず座っている。口からは細く長い水をやや上向きに吐いている。

しがらみを気にせず、一定の細さの水を愉快に吐き出すことに集中できる黄クマが羨ましい。

レトロ食堂街。私はすぐ地下食堂外に潜ろうとする

バスに乗り込む前にお好みで一杯やりたい。家を出る前からそう思っていた。

スカイビルのレトロ地下街「滝見小路」へ潜り込む。上層階店舗よりも地下に潜りたがる。

昭和の街並みが再現されている

しかし、目当てのお好み屋には並びの列ができていて、バス乗車時間が近い中ではややリスキー。ギリギリ行動が苦手なのだ。今回は諦めた。

頭別盛りのカツ丼。写真が暗くて残念

マスクの下の口をマスクが浮くくらい尖らせて拗ねてしまって、拗ねてしまったから全然仕方ないのだけど、カツ丼と、店を替えてラーメンも食べた。

屋台風ラーメン。こういうラーメンが結局一番好き

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バスに乗り込めば、私はもうただの荷物である。ヤドカリが貝殻に体を格納するように肩を内巻きにして座席に座る。何も考えず新幹線という移動手段を取れるほど裕福な自分に早くなりたいが、今はまだそんな余裕はないのだからやむを得ない。時にはヤドカリ化して、その狭さに呆然とするのも愉快だ。しかし、ヤドカリだって自分で適度な広さの貝をチョイスできるよなぁ。

名古屋に22時30分頃に到着。友人に迎えにきてもらって、コンビニでカヌレを買って帰る。袋を持っていなかったので、カヌレと朝食のOIKOSを両手に持ち、股に春雨ヌードル的なものを挟み、車に揺られる。

こんな体勢では、せっかくの夜の都会ドライブでもsuchmosなどのおしゃれバンドのMUSICは頭を流れない。

カヌレを食べたら、キャンプマットを敷いておとなしくすぐに眠る。

【2日目】

「伊予製麺」うどんをずるっとすすり、テーブルテニス

翌日の午前中。私は仕事、友人も重要な用事があった。なんとか昼に終えて、車に乗り込む。連絡の齟齬があり、急遽やらなければいけない仕事が舞い込み、ばたばたしてしまった。やはり私は仕事があまりできない。

友人がうどんを食べたいというので目的地方面にある「伊予製麺」へ。「昨日夜2食食べて胃もたれ気味なんだよなぁ」とほざきながらもぶっかけうどんにコロッケ、蓮根天、穴子天を躊躇なく取る私。もちろん友人から「胃もたれしてる言うてたのに結構食べるやん」と指摘が入る。

ぶっかけうどん。ツルツルとおいしい
いつからかコロッケを取るようになった私

「俺、太ってる割には食わんのよなぁ」とこぼした私に「いや、いつも結構食べてますよ」と間髪入れずに指摘してきた後輩のふじぴーの顔を思い出す。あの垂れた目をまた見たい。

友人は店に着いてメニューを見るやいなや速攻で「わかめうどん」に決めていた。そんなわかめが好きだとは知らず驚く。さらに深堀ると、時折パセリや大葉をくしゃくしゃに丸めて口にポンと放り込んでそのまま食べていることを白状した。こいつはいつも重要なことを隠蔽する。

大学時代からだからもう15年ほどの付き合いになるのに、観葉植物に「ルビー」という名前をつけていることや、車に「わかめ」という名前をつけていることを白状したのはつい先日のこと。水臭すぎる。いや、わかめ!車もわかめやんか。

バッティングも楽しむ

腹を満たしたあとは、あろうことか卓球に向かう。急な卓球。でも、私は知っている。もやもやとしたときや、ご機嫌になりたいときには卓球が効くと。卓球をしているときは卓球のことしか考えなくて済むんだから。

ららぽーと近くのバッティングセンター内にある卓球場で、1時間大男同士で小球のやりとりをする。友人が私を左右にさばき、私は100kg近い巨体にも関わらず、ちょこまかと動き回る。

大男が大男を左右に振り分けるさまは、チョロQに紙コップを被せて走らせたときのようなアンバランスさが滑稽で、絶対見ていたら面白いはずだ。

だが、残念なことに観客はだれもいない。大男のほっほという息遣いだけがただただ響いていた。

「小料理バル ドメ」 拍子抜けする注文をする大男

一度家に戻り、シャワーを浴びる。それから名古屋駅方面へ。

黄金跨線橋からの景色

今日は軽く祝いなので、私が1軒目のお店をチョイスした。「小料理バル ドメ」。これはちょっと久しぶりに店選びのセンスを爆発させたんじゃないか?大男2人で訪れるにはもったいないモテ店である。

これはモテる店

名古屋駅から歩いて5分ほど。大通りから柳橋中央市場に足を踏み入れてすぐのところにある。17時の開店と同時に、トップで入店する。

一杯目は、はじめて見た「KAGUA」。よくわからず注文したが、卓球からの帰り道、「なんだか今日は薄いワイングラスでビールを飲みたい気分」とこぼした私にミラクルフィットするクラフトビールだった。

私は爽やかなゆずを感じられる白、友人は山椒を使ったどっしり重い赤をチョイス。飲んだ瞬間、今日この店にやってきた、いや名古屋に行くことを決めた私の判断は正しかったことが証明された。いや、友人に会えた時点で正しかったのだが。再証明。

うまく撮れていなかったが、これは特別な一杯だ。

生魚を食べたい気分だったので、まぐろぶつ。そして、新玉とクレソンのおかかサラダに、四季桜の冷奴。肉しか食べなさそうな男からの肉類0のノンオイル注文に店員さんは拍子抜けしただろう。

私たちは、酒を飲みにきたら結構こうなのだ。普段は肉を食べがちなのに、酒を飲みにきたら野菜系の一品に心惹かれる。

まぐろぶつ

ゆっくりと飲みながら、近況や今後の身の振り方についてぽつりぽつりと話す。一人で来ているおばさま、若いカップル、淑女二人組などが思い思いの時間を過ごしている。

新玉とクレソンのおかかサラダ

クレソンの苦味をKAGUAで流し込み、笑顔。笑顔のままリズミカルにまぐろぶつを口に運ぶ。

四季桜の冷や奴

追加注文。ここでも肉類ではなく、煎り酒仕立てのトマト塩昆布サラダとくるみのサワークリーム和えを。「おいおい冗談だろ?」という顔の店員さんは無視だ。

煎り酒は、梅干しとかつお節などを日本酒に入れて煮詰めた調味料。湯むきされたトマトがしっかり冷えていて爽やかだ。

トマトの湯むきなんて必要ないと普段なら思うけど、やっぱりやったらやったで洗練されるなぁ。自家製の煎り酒を今度作ってみようと思う。

煎り酒仕立てのトマト塩昆布サラダ

くるみなどのナッツ類に目がない私にとってくるみのサワークリーム和えはあまりにもおいしすぎた。以前、近くの産直でくるみがたくさん入って100円で売っていた。また買えないかなぁ。自分でドライフルーツを作って、刻み入れて再現したいなぁ。

くるみのサワークリーム和え

KAGUAの次は、富山の日本酒「羽根屋」を二人で。富山出身の友人が、これ親戚が作っている酒だという。また、隠し事だ。

一気に酔いが回りはじめる。

富山の日本酒「羽根屋」。

「八丁ぼり」 一気にギアチェンジし、味噌がちに

その後、伝串を食べに新時代に行こうと思ったのだが、入り口で伝串が一本たりともないことを告げられる。まぁそれくらいでは狼狽えないと思いつつ、狼狽える。ただ、日本酒を飲んだ後の浮遊感が気持ち良く、どこまでもふわふわと歩けそうだったから散歩がてら店を探した。

たどり着いた「八丁ぼり」。先ほどと打って変わって大衆感が漂う。振り幅を楽しもう。

どて煮。食べずに帰れない

どて煮・味噌串カツ・手羽先・けいちゃんなど、もう今度は野菜系は頼みやしない。怒涛の味噌・名古屋メシラッシュを仕掛ける。今度ははっきりした輪郭のうまさだ。口に含んですぐさまうまい。

味噌串カツ

名古屋の夜はこうじゃないと。この時間にこの店で男二人で飲んでいることに腑に落ち感というか納得感があり、それがまた酒を呼ぶ。珍しくウーロンハイなんか頼んで、気取りを削ぎ落として楽しんだ。

回りくどくなく、すぐうまい名古屋メシ。そんな竹割性格になりたいものだ。

手羽先。胡椒効きまくり。
けいちゃん。最高です

「珈琲舎 表参道」 ラム酒入りのチョコケーキで締めくくる

おそらく友人は、ムダに何軒も飲み歩くのがそんなに好きではない。しかし私は、断りはしない性格につけ込み、もう一軒行こうと誘う。とはいえ、飲みではなく、夜カフェである。

ラム酒入り大人ケーキ

「胡椒のかかったアダルティなケーキ屋はどこにある?」と尋ねるも知らないようだ。仕方ないので、胡椒をかけそうな外観の店を探し歩き、もしかしたらと感じた「珈琲舎 表参道」に傾れ込む。

ティラミス。でかい

しかし、やはりなかった。

だが、ラム酒入りのチョコケーキがあった。これとブレンドコーヒーで締めくくる。

もう仕事のことなど重要な話は終えたので、私が最近はじめたハーブ栽培について語る。その話を糸口に「なぜ私たちはおばさんめいたことが好きなのか」という話題について話す。男らしい、女らしいという概念は消滅しつつあるのだろうが、私たちはやはり妙におばさんめいている。ハーブを乾燥させて匂い袋を作ってトイレに置こうとしているのだから。

街の反対側

帰りはビルの中の庭園を散策したり、大学の芝生広場を突っ切ったりしながら友人宅まで歩いて戻る。基本的にすぐに散歩をする。夜風が心地よい。

ビル内ガーデンの廊下?的な
ビル街ガーデンからの別ビル
交差点

帰宅後は、何故かお馴染みになっている肩甲骨を剥がす時間。凝り固まった友人の肩甲骨間にほぐしの知見0の私の手刀が食い込む。

YouTubeやインスタで仕入れた多種多様なストレッチやふくらはぎマッサージを伝授するが、そのほとんどが響かず、しかも友人のふくらはぎは私のとは違ってやわやわだった。

ただただ、股関節が異様に硬いことがわかった。「毎日股関節回しを片側30回」というメニューをあてがった。友人は私が知見0なことを忘れたのか、素直に回している。

【3日目】

「しんぱち食堂」豚バラ目玉焼き

朝はいつもどおり早々に発つ。8時ごろには出発。
昨日は一粒も米を食べなかったので、米が食べたい。今は名古屋モーニングには目もくれない。

駅から少し歩き、「しんぱち食堂」へ。
焼き魚系を食べるぞと決意して訪問したのに、気づいた時には鮮やかな黄身が流れ出す豚バラ鉄板焼き的なものが運ばれてきていた。

豚バラ目玉

米を食べて落ち着きを取り戻した私の目は、先ほどまでフィルタをかけていた「モーニング」の文字を取り込み始める。もう1朝食行こうか。しかし、あえなくバスの時間だ。名古屋メシ欲を引き連れて乗り込む。

帰りはあえて通路側の座席を予約し、肩をやや通路にはみ出して座る。押し込んだつもりでも席に向かう乗客に肩が百発百中で当たるのだからもうやっぱり座席にちゃんと体を納めるのは私には無理なのである。

前の外国人観光客が音もなくリクライニングを倒してくる。がっつりと股の間に前の座席を挟むような姿勢で大阪に帰る。この外国人は太い男とバスの相性の悪さを想像できていない。イマジン。

イラつき始めたが、とはいえ私は何も言えず、受け入れる。ただそんな「股を開いて肩をはみ出させて困り顔の自分」を想像してその滑稽さに嬉しくなるのであった。自己治癒万歳。

「きしめんあまの」名古屋に置き忘れた味噌煮込みうどん

バスを降り、行きに行列で入れなかったお好み屋を覗きに。行列とまではいかないものの、数人の待ちがある。まだ内巻きになった肩が戻りきっていない私に列に並ぶ元気はなかった。

一方で、時間をかけて歩いて自分の形状を元に戻したい欲はある。やや遠いけど、ホワイティうめだに行ってみよう。なぜなら味噌煮込みうどんがあるから。

朝食後に獲得した名古屋メシ欲を家まで持ち帰るには荷物が多すぎる。ここで消化しておく必要があった。

きしめんあまの。土鍋をいくつも並べてうどんを煮込んでいる。女性の一人客が多く、皆しっかりご飯もつけている。やるじゃないか。

名古屋で食べたどのメシよりも濃いメシを最後に食べて、帰路につく。

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