見出し画像

「嫉妬の花の魔法」あとがき

前置き

※この記事は、コミックマーケット102、及びプリティーステークス32Rにて頒布させていただいた同人誌「嫉妬の花の魔法」シリーズのあとがきとなっております。
話の内容に深く踏み込んだお話や、背景となったウマ娘の育成シナリオやストーリーのお話をさせていただきますので、同人誌及びゲーム「ウマ娘」のネタバレを多く含みます。

同人誌は通販にて現在頒布中でございますので、是非手に取って頂けると幸いです。

嫉妬の花の魔法-前編-
嫉妬の花の魔法-後編-

0.概要

この記事は、「嫉妬の花の魔法」を描き終えた私の、企画段階・執筆中に考えていたことや、後になった今だからこそ思う反省点などを記したものです。
いわば備忘録であったり反省文であったり言い訳のようなものです。
長くなるかと思いますので、お菓子でも食べながら眺めていただけますと幸いです。


1.制作の流れ(前編)

1.1 企画・テーマの設定

「嫉妬の花の魔法」の主要なモチベーションとしては、「スイープトウショウの宝塚記念勝利を描きたい」でした。

スイープトウショウを育成した際、面白いなと思った事が一つ在りました。
それが「ティアラ路線と三冠路線の差が強調されている」という点です。

競走馬には雄と雌、「牡馬」と「牝馬」がおりまして、全員が女の子であるウマ娘プロジェクトにおいては、これが「三冠路線」と「ティアラ路線」という名前で組み込まれていることは皆さまご存じだと思います。
ただウマ娘プロジェクトにおいては、その差はあまり厳密には描かれてはおらず、元が牝馬のウマ娘の目標設定シーンや、ウオッカシナリオ以外では特に出てくる用語ではありません。

ただしスイープトウショウのシナリオにおいては、この二つの路線の差が厳密に描かれていることが特徴としてあります。
スイープトウショウ育成イベント「つまんない!」では、トレーナーが「『どちらが上』だとは一概に言えない」と語っている一方、「ティアラ路線のウマ娘より三冠路線のウマ娘の方が地力は強い」とする世間の評価がありありと語られ、それに対して憤慨するスイープの姿が描かれます。
この「ティアラは勝てない」と言った世間の印象を覆そうとする彼女の想いは、育成シナリオにおける大きなモチベーションとなります。
この彼女の意志は、ティアラ3戦で「ティアラの戦いも面白い」と観客の意識を変化させ、宝塚記念の勝利で「ティアラ出身のウマ娘たちが勝つことはあり得ない話じゃない」と観客に思わせ、そしてエンディングでは彼女の”弟子”たちにダービーやグランプリを目指そうとさせています。

様々な媒体において、「思いの継承」が描かれているウマ娘プロジェクトですが、「ティアラ路線の活躍」というテーマで考えたとき、ジンクスを打ち破ろうと奮闘し、次代のウマ娘に影響を与えたスイープトウショウのストーリーもまた、ウマ娘らしい物語ではないかと考え、この物語を同人誌で描けないかと考えるようになりました。

こうした内容の本を描きたいと思うようになった私は、「牝馬の活躍」について調べていく中でこのような記事を見つけました。(一部有料)

この記事においては、「全体の傾向として牝馬が強くなってきたわけではない」「エアグルーヴ号の活躍と育成ノウハウの共有で、牝馬の育成体制が進化した」「技術の進歩によってトレーニングが充実した」といった興味深い内容が記述されております。
私が最も興味を引かれた点は、「エアグルーヴ号の活躍が牝馬の陣営に自信をもたらした」という部分でした。有料部分ですので詳細は省きますが、エアグルーヴ号が天皇賞(秋)を勝利したことで、「牝馬は勝てない」という固定観念が外れ、後のウオッカ号のダービー制覇や華々しい牝馬の活躍につながったのではないか、という説です。

この記事を読んで、私は今作のテーマを、
「過去のティアラウマ娘(エアグルーヴなど)の想いを受け継ぎ、宝塚記念を勝利することで未来のウマ娘に希望を与えるスイープトウショウの物語」
と設定しました。

エアグルーヴが未来のウマ娘たちに勇気を与えたのだとしたら、間違いなくスイープも影響を受けた一人であり、そしてスイープもまた未来のウマ娘たちに影響を与えた一人であることを、この同人誌では描きたいと考え、制作を進めました。

1.2 登場人物の変遷

まず考えたのが、「これまで三冠・ティアラ混合戦に挑戦したウマ娘たちが、一人一人スイープに助言を与えて宝塚記念の勝利につなげる」という物語です。
この時点ではエアグルーヴを代表として、イクノディクタス(宝塚記念2着)、ヒシアマゾン(有馬記念2着)、メジロドーベル(宝塚記念5着)といったウマ娘が登場予定でしたが、全員とスイープの絡みを描こうとすると、一人一人の描写が薄くなってしまう、という問題から、この案はボツになりました。

ここで、スイープに思いを継がせるウマ娘を、エアグルーヴ一人に絞ることになります。これには、3つ理由があります。

①スイープとエアグルーヴは性格が似ている
どちらも牡牝混合戦で結果を残した競走馬がモデルだからか、二人はどちらも男勝りな性格と設定されており、この二人をぶつけることで面白い物語が描けるのではないか、と考えました。

②どちらも花好き
エアグルーヴのシナリオや、1コマ漫画でもよく出てきますが、彼女は花を愛するウマ娘です。詳細については次項で記述しますが、彼女のキャラストーリーでは、黄色いカーネーションにまつわる話が丸ごと1話を占めていたりもします。
一方スイープですが、彼女の魔法はすべて花の名前が使われていたり、育成シナリオ内でエアグルーヴの花壇に居るシーンがあるなど、こちらも花好きであることが伺えます。

以上の内容から、この物語を「スイープトウショウとエアグルーヴの物語」とすることにしました。

1.3 『嫉妬の花』

上述したように、スイープとエアグルーヴには花好きという共通点がありますが、この共通点を活かして私はある演出を思いつきました。
それが「嫉妬の花」です。

エアグルーヴのキャラストーリーでは、母の日に合わせてエアグルーヴがカーネーションを配る話となっており、そこで黄色いカーネーションというアイテムが登場します。
黄色いカーネーションの花言葉は「嫉妬」であり、本来は贈答用には控えられるものですが、「母に対して挑戦する=嫉妬する」という意志を込めて黄色いカーネーションを送る、という物語が描かれています(このストーリー思いついたサイゲームスの人本当に天才だと思います)。

スイープとエアグルーヴの話を描く上で、しかも「エアグルーヴの意志を継ごうとするスイープトウショウ」という物語において、このアイテムを活かさない手はないと考えました。
そこで、物語のタイトルに「嫉妬の花」と入れ、劇中の重要アイテムとすることにしました。
また、母の日にこの内容の漫画を投稿しているので、よければ見てやってください。

ちなみにこのネタは2023年2月頃に思いついたので、サークルカットには反映されています(エアグルーヴが黄色いカーネーションを持っている)。

C102サークルカット

1.4 ストーリーの決定

スイープトウショウとエアグルーヴのストーリーとなることは確定しており、この時点ではある物語が頭に浮かんでおりました。
「宝塚記念で勝利し、皆の希望となろうとするスイープ。しかし、壁は想像以上に厳しく、一時は折れかけてしまう。そんなスイープに対し、エアグルーヴが鼓舞し立ち直り、彼女は宝塚記念を勝利する」
これはこれで一見美しい物語であり、また「エアグルーヴが希望となった」という要素を回収できるため、いい内容だと当時は思っていたので、この内容でネームを進めておりました。

転機となったのは、前述の母の日漫画を投稿した後、様々な感想を頂いたことでした。
「スイープならこういうことを言いそう」などと言った感想をもらう中で、「上記の物語ではきちんとスイープを描けているだろうか」と不安になり、私はスイープの育成シナリオをもう一度見返しました。

結論として、この内容はボツになりました。
理由はスイープの育成ストーリー「スイープと伝説の教え」(おでかけ3回目イベント)を見た際、彼女は絶対に揺らがないことが分かったからです。

こうして、既にネームが中盤に差し掛かっていたにもかかわらず、内容の大幅修正をすることとなりました(一回目の制作遅延)

スイープが揺らがないとなれば、この物語の山場をどこに持ってくるかと考えた時、もう一人の主人公であるエアグルーヴについて考えました。

彼女は自身の育成ストーリーにて、「皆の理想となりたい」と語っており、「後の牝馬に影響与えた名牝」というエアグルーヴ号の要素が組み込まれています。
また、メジロドーベルの育成シナリオにおいて、彼女がエリザベス女王杯にて自身に勝利したことに対し、感謝の意を表明しています。
これらの事から、少なからずエアグルーヴは「自分の行いが正しかったか不安に思っていたのではないか」と考えました。
また、史実においては、スイープトウショウ号が宝塚記念を勝利するまで、牡牝混合GⅠを勝利する牝馬は出てきていません。

こうしたことから、この物語にもう一つテーマを付与しました。
「スイープトウショウの勝利によって、皆の理想となろうとしたエアグルーヴが間違ってなかったことを証明する」

このテーマを付与することで、物語に新たな起伏を生み出すことが出来、深みを増すことが出来ました。
以降、この内容でネームを切りました(ネーム完成は6月末)。
この変更に関しては反省もありますので、「3. キャラクターの描写について」の部分で語らせていただきます。

1.5 表紙の作成(前編)

前編の表紙は、未だに傑作だと感じております。

前編表紙(文字無し)

この表紙には、第一のテーマ「スイープが皆の希望になろうとする」が込められており、前面に魔法を放ちながら飛び出してくるスイープを描いております。

構図の面では、人の目線は左上から右下に流れるという心理に沿って、一番目につく左上にスイープの顔を配置し強調し、右下にエアグルーヴの顔を配置し第二の主人公であることを表しており、さらにこの左上→右下のラインに交差させる形でタイトルを配置することで、流れを止める=目に留まりやすくするといった、様々な視覚的効果を利用した表紙となっております。
他にも花びらと魔法のエフェクトの配置に黄金曲線を利用していたりと、こだわりの表紙となっております。

これらのテクニックは、POO松本先生の同人誌、「表紙は配置が9割」にて学ばせていただいた内容ですので、勝手に宣伝させていただきます

https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=1170762

ちなみにこの前編の表紙があまりに気に入っていたため、後編の表紙の制作に難航したことはまた後述します。

1.6 デジアナハイブリッド作画

ネームが出来上がり始めた6月初頭時点で、同人誌は70ページ越えの見込みとなっており、かなり完成が危ぶまれていました。
というのも、以前描いた艦これの同人誌では、52ページの同人誌の作画に1か月強を費やしており、70ページ(後に80ページに増量)を1か月で完成させることは厳しいことが明らかでした。

ここで思いついたのが、下書きをアナログで行う方法です。
出先でちょっと時間のある時に、今回登場するキャラの特徴をつかむためにアナログで練習をしていたのですが、その時「あれっ、アナログって描くの速いな」って気づきました。
これはアナログの方が余計な線を入れることが出来ず、また修正も自由にできないためスムーズな作画が出来るためです。
後で乱れた線をデジタルで描きなおせば、見た目もきれいになりますし。

そこで、前編では下書きの一部をアナログ(シャーペン)、線画をデジタルで行うハイブリッド作画を採用しました。

デジアナハイブリッド

この体制により、工期が大幅に削減され、40ページの作画を僅か半月で完了することが出来ました。
この時点で7月15日、あと半月何事もなく必死に作画すれば十分80ページの本を仕上げられる算段でした…

1.7 新型コロナウイルス感染

やらかしました。
https://note.com/tanasiso/n/n7665d7d4ca6b

詳細は前編のあとがきにて書いておりますが、このタイミングでコロナウイスに感染し、とても残り40Pの執筆は出来ない状態になりました。

よって2部形式となってしまい、皆様をお待たせしてしまったことは未だに申し訳なく思っております。
せっかくですので、タイトルに「前編」が入る前の表紙デザインを載せて置きます。

コロナ感染前の表紙

この表紙に「前編」を入れた時、ウルトラマンにカラータイマーを付けることになった成田亨先生の気持ちを少し理解できた気になりました。

1.8 コミックマーケット102

そして、コミックマーケット102を迎えました。

C102での様子

今回のコミケは、一般入場に制限がなくなった事も在り非常にたくさんの方にいらしていただきました。
そして、このコミケで前編を手に取ってくださった方々、本当にありがとうございました。
内容が完結していないにも関わらず、後編を信じて買ってくださったこと、本当に嬉しかったです。
さらに感想を送って頂いた方々、さらに「後編も楽しみです」とお声がけいただいた方々、お待たせして大変申し訳ありませんでした。この場を借りて謝罪とお礼を申し上げます。

コミケ前は、前編しか出せなかったことで「半分新刊を落とした」という意識が強く、かなり落ち込んでいましたが、皆様のおかげで元気をもらえました。

無事にコミックマーケットでの頒布を終え、この後後編の制作に取り組むこととなりました。

2. 制作の流れ(後編)

2.1 制作開始まで

どうしても1冊仕上げた後ですので、なかなか重い腰が上がらず、本格的に制作を開始したのは9月初頭となってしまいました。
別に某闘争を求めるゲームにうつつを抜かしていたからではありません、決して。

ただこの間も一応準備は進めておりまして、ウマ娘シンデレラグレイの模写をしてレースシーンの作画の練習をしたりしておりました。
なんかレースシーンがシングレっぽいな?って思われた方も多いと思いますが、これはまさに参考にした図書がシングレだったからです。久住先生すみません。

2.2 ネームの追加・変更

前編において、「宝塚記念の出走まで」はすでに描いており、後編では「レースシーン」「レース後のやり取り」を残していました。
ただこの内容だと、80ページのうち前編52ページ、残った後編が38ページと前後編形式の後編としては少し物足りなくなってしまうため、色々とシーンの追加や、演出の変更を行っています。
具体的には、

  • 冒頭のスイープとグランマのやり取りの追加

  • タップダンスシチー・ゼンノロブロイの描写の強化

  • ゴール前にスイープとエアグルーヴの目が合う演出の追加

このあたりが大きな変更点です。
この追加によって、後編は48ページ(と後日談8ページ)と前編に引けを取らないボリュームとなりました。

ちなみに追加修正前のネームを掲載しようかとも思ったんですが、残っておりませんでした。申し訳ありません。

2.3 表紙の作成(後編)

後編の表紙は本当に難航しました。というのも、前編の表紙は後編を制作することを前提に作っていないのです。
世にある前後編形式の作品は、殆どが前後編形式が前提で作られており、例えば

  • 前編に一人目の主人公、後編に二人目の主人公の正面画を配置する

  • 左右対称の構図とする(そのために文字を中心においておく)

  • まったく同じ構図にする

などです。嫉妬の花の魔法において、このどれもが使えない方法でした。
というのも、

  • 既に前編に二人とも配置している

  • 左右対称とすると文字が読めなくなる

  • まったく同じ構図にすると、エアグルーヴが表面に出すぎるのでスイープ本としての頒布が難しくなる

と、様々な前後編形式の作品のテクニックが使えないことが作り始めて発覚しました。

また、前編の表紙はなんだかんだ構図の選定や色の選定などに3週間ほどかけることが出来たのですが、こちらは本当に余裕がなく、結局1週間ほどで完成させることとなりました。

結局、前編の表紙と左右対称を意識しつつ、「エアグルーヴがスイープの手を引く」という構図とすることにしました。

後編表紙(文字無し)

この表紙には、1.4項で述べた第二のテーマ「エアグルーヴが間違ってなかったことの証明」を込めました。
そのため、手を引こうとするエアグルーヴ(理想となろうとすることの肯定)と、手を引かれて笑顔になるスイープ(エアグルーヴの行いの肯定をしたがるスイープ)を描いております。

結果的にエアグルーヴが前に出てきてしまっているため、これをスイープ島で頒布する事にかなり不安がありましたが、リテイクの時間もなかったためこれで完成としました。

2.4 フルアナログ作画

前編においても、作画に余裕がなかったことを前述しましたが、後編はさらに余裕がありませんでした。表紙を描き上げた時点ですでに10月第2週、残り2週間という状況に陥っておりました。
ここで考えたのが、フルアナログ作画です。
下書きだけでなく、作画もアナログで行うことで、工期を短縮することとしました。

フルアナログ作画

ただGペンや丸ペンなどの漬けペンは使い慣れていなかったため、使い慣れているスクールペンで作画を行っております。

この形式にしたことで、作業が速くなることと、レースシーンで激しい作画が出来るという2つのメリットが生まれました。

気に入っているページ

上の例はいい意味で作画が崩れているページなのですが、当然悪い意味で作画が崩れているページもあるので(特に終盤)、一長一短ある作画方法だと作業していて感じました。

ただこの方式によってギリギリ完成したことも事実ですので、今後はアナログ作画の技術を上げていく方向で行きたいと考えております。

2.5 後日談について

プリティーステークス32Rにて、付録として後日談を頒布いたしましたが、これは後編に収録するつもりでいました。
ただ、後日談を追加するかどうかは最後まで迷っておりました。

というのも、後編自体でスイープの物語としては完成しているので、これに追加するのも野暮ではないかと考えていたためです。
詳細については、最後に載せる後日談の本編の項で記します。

2.6 プリティーステークス32R

そして迎えたプリティーステークス32Rです。

プリティーステークス32Rの様子

今見ても、このポスターでよくスイープ島に殴りこんだなと思います。
だって「スイグル」ってジャンルだとどこに配置すればいいか分からないだろうし……

こちらでもたくさんの方にいらしていただきました。
新刊が「後編」であったため、色々と不安もありましたが、コミケや通販で前編を手に取ってくださった方から「後編だけください」と言ってもらえた時は、もう本当に頑張ってよかったと思えました。

また前編と一緒に持って行ってくださる方も多くいらっしゃって、沢山の人にこの作品を届けられたことを本当に幸福に思えました。

改めまして、この2作を手に取ってくださった皆様、本当にありがとうございました。
一時は完成も危ぶまれましたが、無事にお届けすることが出来てよかったです。
これからもよろしくお願いいたします。

3. キャラクターの描写について

ここからは、各キャラクターの描写について、反省や描き切れなかった部分、演出の理由などを描いていきたいと思います。
御見苦しい点もあるかもしれませんので、飛ばしていただいて結構でございます。

3.1 スイープトウショウ

スイープに関しては、スイープらしさが描けたのではないかと思う反面、本当に描けているだろうかという不安がやはり残っております。

この物語では、とにかくまっすぐで、揺らぐことのない存在として彼女を描くことを重視しており、その点では上手く描けたのではないかと思っておりますが、その分他の”揺らぐ”人物よりも印象に残る描写が出来なかったのではないかという反省があります。

実際問題、後述するエアグルーヴの方が描写しているシーンが多く感じられ、スイープ本と言えるのか怪しい部分が多くあります。
「物語の主軸」は間違いなくスイープなのですが、スイープ本ならもっと彼女の魅力を引き出すべきであったのではないか、と今は反省しています。

なお、後日談では1シーンだけですがかなり可愛らしいスイープを描けたと思っております。

3.2 エアグルーヴ

1.4項で軽く触れましたが、この物語では山場として、エアグルーヴの迷いを描いております。これはスイープは絶対迷わないだろうという判断からですが、じゃあエアグルーヴは迷うのか、山場のためにキャラを曲げてしまったのではないかということは、完成した今もなおずっと心残りです。

それと、ご存じかと思いますが私はエアグルーヴが最推しであり、それ故に描写が多くなってしまったことは、スイープ本を出す上ではあまりよろしくなかったと反省しております。

3.3 ウオッカ・ダイワスカーレット

この二人に関しては、かなり反省が残っております。
というのも、世間に対して怖気づいてしまって、スイープに勇気づけられるという役回りを与えてしまった都合上、普段の二人の勝気な性格が失われてしまっています。
彼女たちの育成シナリオ開始前、ということなら一応考えられなくもないとは思ったのですが、やっぱり違和感が残るなぁと今でも思っております。

3.4 ゼンノロブロイ

ロブロイは、スイープシナリオで主要人物として出てくる都合上、本では省いてしまった部分が多いです。
スイープシナリオ内ではかなり重要なポジションで、スイープのライバルとして深くかかわってくる彼女ですが、ロブロイとの関係を深く描きすぎると要素が増えすぎてややこしくなると思い、やむを得ず省略をしてしまっております。
さらに、ロブロイを入手したのがネーム制作の終盤で、キャラを上手く組み込むことが出来なかった点も、反省点として残っております。

3.5 タップダンスシチー

タップに関しては、むしろ表に出しすぎたのではないかと思っております。
スイープシナリオには登場しないので、せっかくだから同人誌では詳しく描こうと思っておりましたが、その影響でロブロイの要素が薄くなってしまったような気がしております。

なお、「タップが怪我をしたまま出走した」というシーンですが、これは元ネタがあります。

こちらの記事では、タップダンスシチー号が調教中の事故でヒザに外傷を負ってしまい、目立たないよう黒く塗って出走させたこと、この出来事から「心が折れた」状態になってしまったことが書かれております。
このお話は、本編に組み込みました。

同人誌でのタップの怪我

ただ、史実をそのまま取り入れても悲しいだけですので、この作品では、「スイープから喝を入れられる」という脚色を加えることにしました。
タップもまた魔法によって救われてほしいと想いと、スイープの魔法の力の表現の一つとしてこの演出としました。


総じて、物語の都合に合わせてキャラの表現を弄ってしまった部分が大きく、もう少しキャラの解釈を深めて物語を作るべきであったとはずっと感じております。

4. その他反省点

4.1 作画

間に合わせるためとはいえ、アナログ作画を導入したことにより、やはり作画の崩れが多く見られます。レースシーンはむしろいい味になっているのではないかと思っておりますが、ドラマシーンではただ崩れてしまっているので、もう少し絵に関しては練習を重ねたいと思っております。

4.2 コマ割り・ネーム

特に終盤ですが、期限が迫っていたため、ネームをなかなか工夫しきれなかった部分もあります。
これについては漫画の経験が豊富な友人に色々指導を頂きまして、今後改善していきたいと考えております。

4.3 重要なウマ娘の不在

この本で一番の反省点は、登場させるべきウマ娘がまだウマ娘となっていないにも関わらず本を出してしまったことです。

その筆頭が、アドマイヤグルーヴ号です。
エアグルーヴ号の娘であり、ドゥラメンテ号の母である彼女ですが、エリザベス女王杯を連覇するなど、自身も華々しい結果を残している名牝です。

このアドマイヤグルーヴ号ですが、実はスイープトウショウ号が勝利した2005年の宝塚記念に出走しています。
ですので、劇中ではスイープの勝利に喜んでいるエアグルーヴですが、アドマイヤグルーヴ(ウマ娘)の存在に対して何かしらアクションを起こしているのが当然と言えます。
この演出が出来なかった、というより出来る時期に本を出さなかったことが、この本を執筆した上で一番の後悔です。

この過ちに気づいたときには、既にコミケにも申し込んでしまっており、軌道修正が出来ない状況でした。
一応、最後スイープとエアグルーヴの抱擁のシーンではスイープから飛びつかせていたり、テコ入れは行ったのですが、やはり大きく後悔が残っております。

2023年10月に開始したアニメウマ娘3期では、アドマイヤグルーヴ号の産駒であるドゥラメンテ号がウマ娘となっており、アドマイヤグルーヴ号もまたウマ娘となるのではないかと考えております。
彼女が実装された際は、本書を彼女が存在しているバージョンへ書き換えること、「嫉妬の花の魔法+α(仮)」を出すことを、今から宣言しておきます。
その際はまた手に取って頂けるとありがたいです。

5. 嫉妬の花の魔法-後日談-

ここからは、事前に宣言しておりました通り、プリティーステークス32Rにて付録として頒布いたしました「嫉妬の花の魔法-後日談-」を掲載いたします。

1ページ
2ページ
3ページ
4ページ
5ページ
6ページ
7ページ
8ページ

こちらの後日談ですが、「嫉妬の花の魔法」において、エアグルーヴの物語としてまだ書き残したことがあるように思えたので追加いたしました。
蛇足と言えば蛇足かもしれませんが、これにて嫉妬の花の魔法は完結いたしました。

6. 今後

長々とお付き合いいただき、誠にありがとうございます。
最後に、今後の私の活動について述べて、この記事を締めさせていただきます。

現在は、コミックマーケット103に向けた同人誌を執筆しております。
サークルカットはこちらになります。

C103サークルカット

C103では、テイエムオペラオーが現役を引退した後のナリタトップロードの物語を描く予定です。当選した際は何卒宜しくお願い致します。

長くなりましたが、ここまで読んでくださりまことにありがとうございます。
今後とも、私の創作物を見ていただけますと幸いです。
何卒宜しくお願い致します。

2023年11月5日 立之華フルトリ

7. クレジット

7.1 参考文献

7.2 お借りした素材

7.3 印刷所

オンデマンド カラー + ピンク印刷でエアグルーヴのアイシャドウが綺麗に出ています!

コピー本の印刷で利用いたしました


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?