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バギー考

公道から山道へスムーズに移動できて、ある程度の重さの木材などを、山から引っ張ってくる移動手段__

文字にするとたったの50字弱で済んでしまうもの。だけど現実に現すのはとても難しい。
山にはいろんな面白いものが落ちている。木、石、草、花、枯れ木、苔。素材の宝庫だ。だけど人間の力は限られていて、丸太の一本運び出そうとすることすらとても大変な作業だ。
今の林業のトレンドは、道を作って木材を搬出する方法。
道幅などによって1-5tの木材を運搬するキャタピラ式の重機が、山の中を行ったり来たりしている。
道幅は2-3m程度なのだが、正直そこを歩いてもつまらない。山の地形を押し除けながら進んでいるよう。
昔の歩き道や木材を搬出するためのそり道は、幅が1mくらいで、地形に負けている、もしくは地形を利用した道で、獣道の一種のような感じ。歩いていて楽しい。

山の道は、地形に負けた道であるほうが好ましい。そのような道に対応できて、それなりのパワーがあるものを探していてATV、バギーに出会った。

YouTubeを見ていると、海外ではATVでトレーラーを引っ張りながら山に入り、木材を搬出している。わざと泥まみれのところに突っ込んでスタックしたり、遊び半分で楽しそうだ。
残念なことに、日本では50cc以上のバギーは公道を走ることができない。そしてなぜか、3輪だと排気量は関係なく公道で走ることができる。謎ルールだ。
むしろ、バギーの存在に制度がついて来れていない。法をちょっとだけ超越している存在とも言える。ちょっと言い過ぎれば、乗り物のアジールとでも言いたくなるような、はみ出しもの感満載の乗り物。

バギー遍歴

僕はまず、ホンダが出していた3輪バギーであるATC200xのジャンク品を購入してみた。直して乗るぞと息巻いていたんだけれど、自分では手に負えず、お店に任せるも治らないし10万くらいかかったりして自分がガス欠した。バギーはバイク屋さんに好まれない。全く相手をしてくれない。マイノリティの生きる難しさをひしひしと感じたバギー1代目だった。
最終的には格安で販売した。

今でもこのタイプは欲しい。今ならいい修理屋さんにも会ったし、直せるかもしれない。

次に、状態のいい450ccの4輪バギーをゲットした。
軽トラックでギリギリ乗るこいつは、不整地をガンガン進む。下げ荷であれば結構な木材を引っ張ることができる。アラハラスヤッホの搬出手段の一つ。残念ながら公道を走ることができないから、ちょいと山に一緒に行くことは難しい。

50ccバギーを買ってみた

そして今回。愛しのポーターキャブくんが壊れて動かなくなってしまったので、前から気になっていた50ccのバギーを導入してみた。

メーカーはadly。台湾製のバギーだ。
中古で、かつカウルの取っ払われた状態のものを購入したので、どこまでいじられているのかよくわからないほど原型をとどめていない。

最初は正直公道を走ることが大変だった。
サスが硬くてガタガタフラフラ、アクセルを回すと後半は燃料が来てないらしく息継ぎして40キロも出ない。灯火系も配線がぐちゃぐちゃになっていて、ついたりつかなかったり。今思えばよく乗ったなと思う。真冬に。
多分乗っていたのは楽しかったからだ。

2ストでチャンバー、どうやらチャンバーは後付けのようで、思いっきりエアフィルターと干渉していて、走っているうちにフィルターが溶けてしまった。購入した相手は気の良さそうな若者2人組だったが、改造がちょっとよろしくないぜ。
走らなくて焦っていたところ、偶然電話をかけた432FactoryMotorCycleさんがめちゃくちゃいい人かつあるもので上手くやってくれるタイプの人で、お店にあったパワーフィルターに交換してもらって事なきを得た。
ついでにキャブのジェットの調整までしてくれて、帰りは50キロ近く出るようになった。
沼津に行った帰り、電気がつかなくなってヒヤヒヤしながらなんとか家の近くまで来たらアクセルワイヤーまで切れて、泣きそうになりながら押して帰ったりもした。

結果的に、配線の整理、キャブ調整、灯火系の交換、レギュレータ交換、サスペンション交換、タイヤもバルーンは減りやすいので、車用のタイヤに交換、バッテリー交換、トー角の調整など、いろんなことをやってやっと普通に安心して乗れるようになった。

片道20キロ超、バギーで2ヶ月程度往復して感じたことを記しておきたい。

バギー考

・走り、性能
2ストのエンジンはうるさいけど調子が良く、国道でも車の流れに乗ることができる。
最高速度は60キロ程度で、上り坂にはやっぱり弱い。正直ボアアップしたい。ボアアップは違反だけど、ボアアップした方が周りの車にとっても、自分にとっても優しい。
山道でも同じことが言える。林道は坂が多く、上り坂はストレスを感じる。
だけど脇道の砂利や整地しただけの山道に入っていけいるのは結構楽しい。
根っこや枯れ木などの障害も、それなりに超えていけるのは結構心強い。
道幅も1メートルあれば十分で、歩き道程度の幅でも十分入っていける。
70cc程度あれば、もっとアクティブになれるだろうと思うと、よくわからん制度の多い日本に悪態をつきたくなる。
公道に関して、車の轍型の凹みがあると車では気にならないけどバギーは結構傾いたりハンドルを取られたりして走りにくい。おそらく前輪が1輪の3輪バギーであればここまで気にならないかもしれない。
50cc規格だからか、長距離走るように作られたはいない感じがする。田舎で車通りが少ない地域であれば、自由度が高まって結構楽しいと思う。行けなかったところにもズンズン入っていける。
燃費は大体20キロ弱くらい。5リットルの容量なので、一回の給油が1000円を下回る。なんか嬉しい気持ち。

・周囲の目
とにかくおじさんと子供、特にある種のおじさんの目を輝かせる何かを持っている。
乗っていた2ヶ月で、話しかけられたこともあったけど、全員オーバー55歳くらいのおじさまたちだ。コンビニのイートインでのんびりしてたら、見えるところに止めていたバギーをガン見している人もいた。おじさんは構造が気になるのだ。
子供は3人以上の集団になると露骨にみてくる。1人だと音もうるさいし、ちょっと怖いのかもしれない。おじさまたちは社会からの冷たい目を一身に浴びるやるせない立ち位置にいらっしゃるが、バギーを通して子供との相似性を強く感じることがあった。おじさんたちはもしかしたら、受け入れられることに対してめっちゃ不慣れなひねくれた純粋性、言い換えればひねくれた子供と言えるのかもしれない。
本当に失礼だな。これについては別途「オヤジ考」を書きたい。
結構見られるから最初はなんだか居心地が悪かったけど2ヶ月経つと全く気にならない自分がいた。

・バギーの将来性
山仕事としてはやはり50ccだと非力だから、最初に購入した3輪バギーを改めて検討したいと思う。僕はバギーの持つ自由さやアジール感に何かを感じる。バイクのことは全く素人だった自分でも作れるんじゃないか?と思えるくらい構造はシンプル。これからいろんな乗り物が電動になっていく中で、バギーも電動になっていくだろう。そうするとよりシンプルになり、仮想通貨で言う草コインならぬ、草乗り物が発生してくるかもしれない。なんかいじり倒したくなるような草乗り物感が、バギーからはぷんぷん匂っている。

終わりに

山と文化、安宅さんのいう開疎の文化に興味がある自分としては、バギーの存在に文化の芽を感じずにはいられない。これからもバギーとは何かしら縁のある暮らしを送ると思う。

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