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パンを焼く

パンを焼く。朝の儀式の一つとして。
アウトドア用の、折りたためる足のついた網をコンロに置いて、少し高い位置で直火でパンを焼く。いつもは大体着替えたり準備したりなんたりかんたり、同時進行の朝なので若干焼き過ぎてしまう。でも今日は休みなので、水を飲みながら焼けるのを待つでもなく待つ。
ひっくり返した時に美しい焼き目がついていると喜びを感じている自分に気づく。

京都芸大通信の入学資料がテーブルに広がっているのでそれを適当に避けて、パンのもう一面が焼けるまで豆乳を飲みながら外を眺める。
予報的にはもうすぐ上がるはずの雨がしとしとと家々をぬらしている。まだ花見をしていないのに花を散らす雨が少しうらめしい。でも美しい。しとしとした雨をただ眺めていると、自分の周囲100メートルを雨の音だけが包んでいるような気持ちになる。
それはそれでいいものだと思う。

パンが焼けて、皿に乗せる。もう少し資料をテーブルから追いやって、美しいパンにふさわしいように蜂蜜をかける。
かじる。ちぎる。指についたパン粉を払って豆乳を飲む。特に予定もないのに休んだので、特に用事のない1日が広がっている。怠惰な感じが良い。

朝7時に近くなると、世界が目を覚ましたように、人や、他の生き物の活動を感じる。少しずつ、その新しい1日のエネルギーが、自分の中に巡り始めた。
冬にはあまり意識に上がらないこの感じ。暖かい季節はやっぱりいい。

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