ケツ割り箸魔法少女装少年セイントヒップ第2話(ジャンププラス原作大賞応募作)

※線は場面の切り替わり

「「「「いただきます!」」」」
夜の割下家。右膳(うぜん)と姉、そして両親の四人がテーブルを囲む。

「右膳、箸使うでしょ。はい」
「うん」
右膳は割り箸を割ろうとして、ハッと思い出す!
(割り箸を追ってオイラを開放したキミは、割り箸を割ることで魔法少女になれるプリ)

「今日は僕も手で食べるよ!」
「あら?そう?」
(あ、危なかった……。割り箸には気をつけないと)

右膳はピザを食べる前に、サラミに乗った輪切りのオリーブをどかす。
「右膳って、いっつもそれ食べないよね?」
「なんか目玉みたいで怖いし……」

「怖いってフフフ」
姉が笑う。
「笑わないでよ!なんか睨まれてるみたいで怖いじゃん!」
右膳はちょっとプリプリする。

「食べてみるとうまいもんだぞ?なんでも挑戦してみるもんだ」
父はそう言うが、右膳は迷う。
「うーん、また今度にするよ」
右膳は手づかみに慣れておらず、こぼしたりしてちょっと大変な事になったけど、楽しい夕食の時間は無事に終わった。

――――――――――

翌日の土曜日!右膳は佐々木(ささき)と一緒にゲームセンターでガンシューティングゲームを遊んでいた。
「割下!そっち任せたぞ!」
「う、うん!」
元気よく返事する割下だが、焦っていた。

迫りくるゾンビをどうにか撃ち抜いていくが、じわじわと追い詰められる。
「あ、あ、あ……」
割下絶体絶命!だが!その時だ!

「これでも喰らえ!」
佐々木が次々とゾンビを撃ち抜く!
「ありがとう!」
二人はそのままゲームクリア!ハイタッチ!

「佐々木くんはうまいよね」
「よく狙って打てばこんなもんよ!」
佐々木は得意気に語る。
「なあ、腹も減ったし、なんか食ってかねえ?」
「うん」

二人は商店街を歩く。
「何食べっかな……ピザは?」
「ピザは昨日食べたんだ」
「それじゃあ……」

「怪物だーッ!」
遠くから突然の悲鳴!
「オイ!怪物だってよ!見に行こうぜ!」
佐々木はこういうのに目がない。

(プリプリ!悪霊の気配を感じるプリ!セイントヒップに変身だプリ!)
割下の心にプリケッツが直接話しかけてくる!
(でも……)

「おい、早く行こうぜ!」
佐々木も急かす!
「あ、あの……忘れ物!先に行ってて!」
「おう!」
割下は佐々木と反対方向に走り出す!

(逃げるプリ!?)
(逃げるわけじゃないよ!割り箸がないと変身できないから!)

割下はコンビニに駆け込み、カップラーメンを購入!
「割り箸は……」
「ください!!」
支払いを済ませてコンビニの裏手に移動!人がいないことを確認し、割り箸を割る!

パキン。

『パパラパ~チャララパパラパ~♪パッパラ~パパラパッパッパラ~♪』
割下の体が宙に浮いて体が光に包まれ、変身バンクだ!

全身が光のシルエットになり、半ズボンがはじけ飛ぶ!そして代わりに黒いスパッツが装着される!

次は上半身のTシャツがはじけ飛び、フリフリの淡いピンク色ドレスみたいな服が装着される!レースの手袋にニーソックス。ちょっとだけヒールが高い靴。髪の毛はリボンで結ばれる。メガネも魔法で形が変わる。

そして最後に、黒いスパッツの上から白いフンドシが装着される!
『パパラパ~パパパッ♪パッパン♪』
変身完了!
「よし!行くぞ!」

――――――――――

「ウワーッ!」「キャーッ!」
逃げ惑う人々!暴れているのは巨大な一切れのピザモンスターだ!

「ピピーッ!」
ピザモンスターから巨大なマッシュルームがピッチングマシンのように射出される!標的は逃げ遅れた子どもだ!
「う、うわーん!!」

その時だ!
「えーい!」
間一髪!間に合ったセイントピップが割り箸型魔法少女ステッキでマッシュルームをホームラン!
「大丈夫?さあ、早く逃げて!」
「ありがとう!おねえちゃん!」

無事に走っていく子どもを見送り、セイントヒップはステッキを構える。
「アイツも割り箸がどこかに刺さってるはずだプリ」
※ナレーション:悪霊を成仏させるためには、モンスターに刺さった割り箸を引っこ抜き、ケツで折らなければならない。

「うん、割り箸は……うわあっ!」
突然怯えるセイントヒップ!
「どうしたプリ!?」
「あ、あれ……」
セイントヒップがピザモンスターを指差す。

「ピザがどうしたプリ?」
「あれ!真ん中の!」
「プリ?」
ピザモンスターの真ん中には、大きなサラミと輪切りにしたオリーブ!巨大で邪悪な瞳のようだ!

「ピピィー……」
ピザモンスターがセイントヒップを睨む!
「いやーっ!こわい!!」
恐怖でへたり込むセイントヒップ。

「怖がってる場合じゃないプリ!」
「でも、こっちを見てるよー!」
「こうなったら仕方がないプリ!オイラが指示を出すから、目をつぶって戦うプリ!」

「う、うん……」
セイントヒップは目を閉じて立ち上がり、改めてステッキを構える。
「さあ、どこからでもかかってこい!」

「ピザーッ!」
ピザモンスターがマッシュルームで射撃!
「ジャンプだプリ!」
「えい!」
プリケッツの声に合わせてジャンプ!そのままピザモンスターを飛び越え後ろに回る!

「ピザーッ!」
ピザモンスターはすかさず振り返って棒サラミでなぎ払い!
「左からくるプリ!」
セイントヒップはステッキでガード!ピザモンスターは棒サラミで連続攻撃!
「上プリ!」
「右プリ!」
「左プリ!」
連続ガード!

すべての攻撃を耐えるセイントヒップ!
このまま行けるか?そう思った時、チーズの鞭が飛び出してきた!
「ピザーッ!」
「前プリ!」
ガード!だが、ステッキにチーズが巻き付く!

「ふぬぬぬぬ……」
ふんばるセイントピップ!
「がんばるプリ!負けるなプリ!」
プリケッツ必死の応援!だが!
「ぐぬぬぬぬ……あ!」
ステッキが奪われる!

「プ、プリィ~!」
ステッキはそのままチーズに飲み込まれる。
「プリケッツ?プリケッツ!?」

うっすら目を開けるセイントヒップ。目の前には恐ろしく邪悪なオリーブの瞳が!
「うわあ!」
セイントヒップは大きく後ずさり、何かを踏む。
「え?」
セイントヒップの足元に、別のピザモンスター!

「あわわわわ」
慌てて逃げようするが、チーズに足が張り付いて逃げられない!
「ど、どうしよう……」
怯えるセイントヒップに追い打ち!
「「「「ピピー!」」」」

現れたのは四切れのピザモンスター!一斉にチーズを伸ばし、セイントヒップの手足を縛る!
「「「「「「ピッピッピ……」」」」」」
六切れのピザモンスターが不気味に笑う。
「あ、あ、あ……」
セイントヒップ絶体絶命!だが!その時だ!

「これでも喰らえ!」
ピザモンスターのオリーブに輪ゴムが直撃!
「ピィーッ!!」
「佐々木くん!?」

セイントヒップが振り返ると、そこには指輪ゴム鉄砲を構えた佐々木が!
「俺も戦うぞ!」
佐々木は更に輪ゴムを発射!
「くらえ!」

佐々木が放つ輪ゴムがピザモンスターのオリーブを打抜く!
「ピィーッ!!」
ピザモンスターは這いつくばって、落ちたオリーブを手探りで探す。

「佐々木くん、割り箸を探して!」
目を開いたセイントヒップが佐々木に指示!
「割り箸……あ!セイントヒップ、足元だ!」
「足元?」
セイントヒップが足元を見ると、割り箸が刺さっている!

「やった!これを折れば……ふん!」
体を捻ってチーズを引きちぎろうとするが、程よい弾力で引きちぎれず、足元の割り箸を拾えない。
「佐々木くん、お願い!その割り箸を、僕のケツとフンドシの間に入れて!」

「ええ!?そ、そんな恥ずかしいこと……」
「アイツがオリーブを探しているうちに、早く入れて!僕だって恥ずかしいだから!」

「わ、わかったよ!」
佐々木はピザモンスターから割り箸を引っこ抜き、セイントヒップのケツに手を伸ばす。
「し……、失礼します!!」
フンドシをちょっと引っ張る。
「ヒャッ!」
「ご、ごめんなさい!」
セイントヒップの声に、思わず佐々木の手が止まる。

「だ、大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから……」
「お、おう……」
フンドシとケツの間に割り箸を挟む!パンッ!と軽快な音が鳴り、ケツ割り箸準備完了!……そして!

「えいっ!」

バキィ!

割り箸が割れた!
「ピピピピピピ……」
ピザモンスターが中から光りだす!
「ピザーーーーーーーーッ!!!!!!」
ピザモンスターは爆発!キラキラした光の粒子となって空へと登っていった。

散らかった町並みも、キラキラした光の粒子で元通りになる。
「プ、プリ~……」
「プリケッツ!無事だったんだね」

マスコット姿に戻ったプリケッツがセイントヒップと合流。
「もうだめかと思ったプリ」
「僕もそう思ったけど、佐々木くんが助けてくれたんだ」

セイントヒップは佐々木の方を振り返る。
「助けてくれて、ありがとう!」
「い、いやあ、それほどでも。ハハハ……」
照れ隠しで笑う佐々木。

「ところで、なんで俺の名前を?」
「あ!」
セイントヒップの目が泳ぐ。
「えーっと、ここに来る途中で会った男の子が、『佐々木くんを助けてくれ』って……」

「そうだったのか、割下のやつ……。それで、割下はどこいったんだ?」
「えーっと……」
(そろそろ変身が解けるプリよ?)
「えっ!?あわわわわわ!もう行かなきゃ!助けてくれてありがとうね!」
セイントヒップは大ジャンプして姿を消した。

――――――――――

数分後、二人はゲームセンターで合流。
「あ、割下!そのカップラーメンは?」
「えっと、これは景品で……あ!そっちのオバケはどうだったの?」

「それがさ!またセイントヒップが来たんだよ!それで……」
と言いかけたところで、セイントヒップのケツ割り箸アシストを思い出し、佐々木の顔が急に赤くなる。
「それで?」
「あー、いや!まあ、その……とにかく可愛かったんだよ。今回もさ。ハハハ!」
「ふーん……」

「そうだ!せっかくだしカップラーメン食おうぜ。俺も買ってくるからさ」
「うん」
「ついでに割り箸も二人分もらってくるぞ」
「あ!僕の分はフォークにして!」

※ナレーション:ケツ割り箸はこれからも続く!頑張れセイントヒップ!負けるなセイントヒップ!

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