コード進行よりも音圧?令和の音楽理論 【ボカロPを取り巻く環境①】

ボカコレ2022秋、お疲れ様でした。
たくさんの反響をいただけてうれしい限りです。

ボカコレ2022期間中に、筆者すぴぃちゃんはこんなツイートをしてしまいました。

これが、思ったよりも多くリプライいただいてしまったため(0件の予定でした)、おそらく多くの人へ指摘したくなるであろう内容を、ここにまとめることとします。
初noteなのでお見苦しい点もあるかも。


音圧

音圧とは?

昨今の音楽では(筆者はここ半年以上ほぼボカロしか聞いておりませんが)、「音圧が高い」は一般に誉め言葉とされています。
ここでいう音圧とは何なのか、筆者なりの解釈を述べます。

結論から言うと、現状「音圧」には大きく2つの意味があります。
1.原義。波形の音量を平均化(標準化?)する工程を経て、音量の振れ幅が小さくなっている状態を、「音圧が高い」という。
2.1の派生。高音から低音まで、また遠鳴りから近鳴りまで満遍なく同程度の音量で鳴っている状態を、「音圧が高い」という。

誉め言葉である「音圧が高い」は、2の意味で使われることが多いと感じます。
以下それぞれ、1.音圧(原義)、2.音圧と表記することとします。

人間の脳は音というもの自体を、音程の高低・音量の大小・音の鳴る場所の遠近(各音域ごとの音量の減衰度)、の3要素(+音色)で認識します。
脳が認識できる音が同時に多く鳴っている状態が、音圧が高いということになります。
音色は今回は省きますが、簡単に言えば「音とその音が鳴る状況の、脳内データベース上の対応」なので、音圧には(多分)関係ないです。

なぜ音圧が必要なのか?

音圧が低い状態とは、キャンバスをフル活用していない状態です。
音圧の高い音楽が既にこの世に多数存在し、視聴者がそちらを聞かずに、敢えて自分の曲を聴いてもらうのに時間を割いていただくという、音楽という芸術分野のそもそもの構造上、ほかの作品との比較は避けられません。
神々の曲に縛りプレイで挑みたいというのでなければ、音圧は上げるに越したことはありません。(たとえばチップチューンは、縛りプレイそのものがジャンルになった例です。)

また令和で音楽を、特にボカロ曲を聴くとなれば、99%はデータファイルの形式で聞くことになります。
生演奏ならば、コンサートホールやライブハウスの反響音が、音圧に貢献してくれますが、データファイルは書かれている通りにしか再生されません。
よってデータファイルとして出力した際に音圧がなければ、視聴者がそれ以上音圧の高い状態の楽曲を聴くことはありません。
音楽のデータ化という流れが、音圧が高いほうが強いという環境を形成しています、令和は今音圧一強環境です。
どんなに耳に残るメロディでも、音圧がなければスタート時点で不利を背負うことになります。
編曲と音作りの時点で音圧を高めることを意識すべきです。


音楽のジャンル

過去の楽曲はどう音圧を上げてきたか?

音圧を高めるための手段を標準化したものこそが、「ジャンル」だと筆者は思っています。
管弦楽や吹奏楽のフルオーケストラは、高音から低音まで満遍なく様々な楽器で編成されています。
ロック・メタル・ポップスなどの一般的なバンドサウンドは、倍音の多く鳴るギターを使い、更にアンプでブーストすることで、楽器の編成本数の少なさを補っています。
こういった編成を使用することで、自身の楽曲の音圧を高めるための思考過程をオミットし、誰でも比較的簡単に音圧の高い音楽を編曲することが可能になります。
先人の知恵のたまものです。

上記のジャンルは、ジャンルの成り立ち時点で音圧を確保することができていたため、音楽のデータ化の波を生き抜きました。
逆に、音楽がデータ化されたことで生まれたのがEDMです。
シンセサイザーでの音作りの時点で倍音を鳴らしまくるため、(プリセットを使用するなら特に)簡単に音圧を高めることが可能です。

近年に成立したジャンルほど、音圧を高めることや楽曲制作自体も簡単です。
例えばシンセサイザーの音は時間で減衰したりしないため、残響音を意識して作曲する必要もなくなっていたりします。

ジャンルに従うか従わないかという2択

ジャンルに従って編曲することのメリットは音圧について考える必要がないことです。
デメリットは同ジャンルに既に有名な楽曲が必ず存在することです。(noteって表編集機能無いんか・・・)
リファレンスを簡単に得られることはメリットと言えばメリットですが、リファレンス元と比較されることにもなります。
音楽がデータ化される前までは、極論コピーバンドなどでも、「今このライブハウスで聞ける」という一点で完全劣化になることはありませんでしたが、現代ではいつでもどこでも聞ける以上、元ネタとの比較は避けられません。

筆者の結論では、音楽経験の深い人ほど、確立されたジャンルに従う必要はないと感じます。
経験を積んでから型破れ、という月並みな感想ですが。
(あと、型破ること自体が目的になってはいけない。)


コード進行より音圧?

どちらを先に学ぶべきか

作りたいジャンルによります。
EDM系なら確実に、音圧さえ稼いでテンプレコードを使えばサマになります。
バンドサウンド系は、音圧を稼いで有名なコード進行を使っておけば、割となんとかなりますが、そもそも音圧を稼ぐのに少しお勉強が必要なので頑張りましょう。
オーケストラはマジでむずいからやめとけ。

よって、コード進行の理論は、最初はそんなの覚えなくても何とかなります。
音圧が低い状態とは、キャンバスをフル活用していない状態と例えましたが、とするならばメロディラインはラフスケッチで、コード進行は色使いです。
スケッチの上にバケツでインクをぶちまけてもそれはそれで作品になるので、コード理論は粗削りでも良いと個人的には思います。

なぜコード進行は後回しでいいのか

  1. 難しい上に少しずつしか伸びないから。

  2. 音を歪ませた時に特に、どんなコードなのかすら聞きづらくなるから。

  3. オリジナルの理論でも割と何とかなるから。

そこそこ音楽を聴く人なら、あ~このコードは違うなというくらいは最初から分かります。
何となく裏で鳴ってるくらいの音量の歪みギター程度なら、その延長線上の作り方でもかなり何とかなります。

また何も知らない初心者の状態というのは貴重で、理論を知ってしまうことで発想に影響を受けるということも大いにあると思います。
初心者のうちにしか作れない狂った発想というのも存在し(というか、それを持っている人こそ才能のある人だと思う)、それを無下にするのはもったいないです。
最初こそ、いい音源やプリセットを使い、テンプレちょい改変くらいのコード進行を使う方がいいと思います。
なんなら音圧上げもお勉強のためにMIX師に依頼し(AIによるミックスも最近は十分実用的)てみるのもいいかもしれません。

ならコード進行なんて要らないのかと言ったら別の話なので、別記事に書くかもしれません(コード理論クソエアプですが)。
テンプレ進行を使うにしても、ルート音という概念だけは覚えておくべきかも。

以上です。100円払うとクソくだらないダジャレが読めます。

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