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ガレージキット制作のお話

初めまして。ガレージキットディーラー『アヤドリ技研』のデザイナー/原型師のはやさかです。最近、同人イベントやSNSがきっかけでガレージキットに興味を持ち、購入してくださる方が増えており、同時に販売についての質問などを受けることが多くなってきました。

同人イベントと造形イベントでは二次創作物(版権もの)の頒布・販売に関してのルールが少し違っていて、自分もディーラー参加するまで知らないことがたくさんありました。なので、この辺りでちょっとまとめておくと親切かもなと思い記事を書きます。長いけどやっぱり知っておいて頂けるととても助かるので、興味のある方は是非最後までお付き合いください。

二次創作の版権ものを扱う同人イベントと造形イベントの一番の違いは「当日版権」の有無です。同人誌と違い、版権もののガレージキットの多くは、原作者から「イベントの日だけなら売っていいよ!」という許可をもらい、©表記を入れて販売します。同人イベントにこのシステムがあったら、エロ同人誌を世に出すのもなかなか大変な気がしますね。
アヤドリ技研が主に制作している『ウマ娘』のガレージキットも、株式会社Cygamesさまから許諾を頂き販売しております。いつもありがとうございます。

で、このシステムがあるとどうなるかというと、イベントの当落とは別に「許諾を頂けるか否か」もクリアせねばならなくなってきます。公序良俗に反するものであれば当然NGなのですが、それ以外にもメーカーや版権元によって独自に決められたガイドラインがあり、ロイヤリティを取られる場合もあります。
アヤドリ技研のキットも、過去に不許諾になったものが複数ありますが、こればかりは原作に携わっている方の意向なので仕方がありません。なので、「再販ありますか?」と聞かれても、許諾を頂くまでは申し訳ないけれど何とも言えないのです。

次に、時間やコストの問題もあります。最近増えてきていて、当ディーラーでも販売している「3Dプリンタ出力品」に関してはまた別なので後述しますが、ここではいわゆる「レジンキャスト」と呼ばれるキットに関して記述します。
レジンキャストキットは、かいつまんで言うと「シリコンで原型を埋めた型を作って、そこにレジンを流し込んで複製したやつ」です。個人複製の場合、すべての行程を自分でやるため、めちゃくちゃ手間と時間がかかります。こればっかりはお絵描きや造形の作業と違い「めんどくさ!!」となります。当然シリコンやレジンも自分で買わねばならないのですが、最近は原材料の高騰もありなかなかの出費です。時間もお金もかかるので、型作りや複製に失敗したときの精神的ダメージがとんでもないです。実際に何度か心が折れそうになりました。
業者さんに頼んだ場合も、上記の行程を業者の方がやってくれるというだけで、材料代もこちらで出さなければならないので早く終わるとか安くなるということはありません。(自家複製よりキレイになるメリットはあります)「じゃあ型さえできればいっぱい作れるんだね!!」と思ったら大間違いです。型の寿命は早く、同人誌のように一回で数百数千と作るのは物理的に不可能です。型が逝ってしまえばまたゼロから再生産が必要になります。

版権許諾が必要なキットに関しては、当然勝手に通販したり、当日版権のないイベントで販売することはできません。システム上イベント申し込みの段階で「金額」「個数」などを決めなければならず、スケジュール的にも申請結果が来る前に作り始めなければなりません。
実際に原型ができてから複製を始めたらコストがうっかり見積もりの100倍になってしまったり、SNSにアップした写真がバズって欲しがる人が100万人現れても、イベントが始まる頃には値段も個数も変更はできません。
改めて次のイベントに申し込み、再販の準備を進め、価格や個数を調整し、許諾を頂くしかないのです。

同人誌とガレージキットの作り方ではここが大きな違いで、一番大変な部分でした。ガレージキットディーラーの人たち、本当にすごいんだ。

ここまで話して、「はやさかさん同人イベントでブルーアーカイブの立体物頒布してませんでした??」と思った方がいると思いますが、作品によっては二次創作ガイドラインに即したファン活動であれば自由に頒布などを行ってよい…とされているものがあり、同人イベントやBOOTHではそういった作品が取り扱われています。商品説明をよく読み、間違って通報しないように気を付けましょう。(造形イベントでも版権がフリーになっている作品があったりします)

複製の話をしたついでに、3Dプリンタ出力品についても触れておきたいと思います。「出力品をそのまま売れば複製の手間いらないんじゃない?」とか、「型が不要だしいくらでも作れるじゃん」と思った方がいるかもしれません。これも結構難しいんですが、現状ですと、強度や加工のしにくさを考えるとパーツ数の多いキットだと厳しいんじゃないかとか、デカいパーツは出力に何時間もかかるので結局たくさん作るのは現実的ではないなぁという感じです。
この辺りは素材や3Dプリンタがどんどん進歩してるので、しばらくすればまた状況が変わってくるかもしれませんが。

最後に、アヤドリ技研がディーラー参加していて、現状『ウマ娘 プリティダービー』の版権許諾が頂けている当日版権イベントのリンクを貼っておきます。それぞれ販売や入場方法が異なるので、欲しいキットがある方はこちらをチェックしてみてください。
●ワンダーフェスティバル(https://wonfes.jp/)
トレジャーフェスタ・オンライン(https://tfo.hobima.com/)
HOBBY ROUND(https://hobby.volks.co.jp/event/hobbyround/)

長々とお付き合いありがとうございました。これからもアヤドリ技研をよろしくお願いいたします。



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