見出し画像

BtoB SaaSスタートアップからよく頂く、マーケティングに関する「戦略」「戦術」「採用」に関する質問に答えてし...

本記事は「#SaaSLovers 秋のブログ祭り」 のバトンブログ企画記事で、7日目を担当させて頂きます戸栗(とぐり)と申します。株式会社LEAPT(レプト)という会社でBtoB企業、特にBtoB SaaS企業のマーケティング支援を行っています。

前職はHubSpotというマーケティング、営業、サービス支援を行うBtoB SaaS企業の日本支社の立ち上げと、マーケティング責任者をさせて頂きました。詳しくは同企画の発端となった記事で詳細をくださいませ。

今回は上記シリーズから脱線し、BtoB SaaSスタートアップから頂く質問に対しての回答をお伝えできればな、と思っています。

ソーシャル経由にて、”東洋経済すごいベンチャー100”に掲載される複数人のスタートアップの経営者の方(もちろんマーケの方からも)からご相談を頂くなど「いやはや、マーケティング人材って本当にいないのねぇ....」と実感していたところでした。

と同時に、正直にお伝えすると「こんな基本的なことも知られていないんだ(つまり、できるわけがない)という衝撃を受けたことも多かったです。

相談に来てくださる方も「全然知らないため....」と言う姿勢を率直に伝えてくれる方が大変多く、とても好感があり、アドバイスさせていただく甲斐のある方ばかり。私自身も現在はそれとそれに伴うことを生業としているので、「自分のしていることもあながち間違いではないか」と、再確認もさせて頂いております。

そんなわけで、相談の都度私がお伝えしていることを多くの困っている人に届けたいと思い、簡単に口語文的にまとめさせていただきました(実務的なことに関しては明日のnoteを書いてくださる才流の小島さん@yooheykojiにお任せします)。

本記事は、明日から使えるノウハウではなく、考え方のお話です。ノウハウって陳腐化するので、考え方とか業界のこととかの見方をお伝えする方が長い目で見て価値のあること、と思っています。

ノウハウ希望!という方には全くもって関係のない記事です。あらかじめご了承くださいませ。

BtoB SaaSスタートアップ立ち上げ期における、マーケティングあるある話

”さて、プロダクトも売れる状況、徐々にMRRが伸びてきてた。営業採用の目処も立ちそう、サービス部門もいけそうだ....。従業員も二桁超え、そろそろ...スケールさせるためにマーケティングもどうにかしないとなぁ。とりあえず、広告はそれとなくやっている、広告以外にどんな人を雇えばいいんだろう、わかりづらいんだよなぁ。”

こんな流れから事業成長のためにマーケティングを真剣に考え始めるSaaSのスタートアップの経営者が多いのではないかな、と思います。

マーケティングについていまいちわからないので、noteを読み、Markezineを読み、それっぽい人のTwitterをフォローし、ググってみる、VCに相談を持ちかけるetc

”うーん。ソーシャルメディアとはnoteを参考にしても、みんな言うことが全然違ったり、共通項もあったり....やはりいまいちわからないから、マーケティングできそうな人をリファラルで探すか....”

後日、紹介される人は大概このようなプロフィール。

- 20才半ばの若手
- GやYの広告運用を職責としている/してきた(BtoBとは限らない割と大手にて)
- ウェブ関係の仕事もたまーに(ウェブ更新みたいなこと、SNS運用チョロチョロみたいなこと)
- セミナー/ウェビナー手伝い経験あり

「お、なんでもできそうじゃん!」と採用。

採用後3ヶ月が経過。

”うーん、CPAなどの報告はあるけど、広告以外全然動いている気配がないな。ウェブサイトも変わらないし、特段MQL(問い合わせ)も増えない。いやぁ、これはマーケティングオートメーションとかSFDCとか入れて連携させればいいのか.....? ”

といった具合。どこかで聞いた様な話、もしくは、身に覚えがあるのではないかなぁ、と思います。

この状況、もしくは似たような状況の場合、明らかに、1)戦略、2)戦術、3)採用(組織)という重要な要素が欠落している気がするのです。

BtoB SaaSスタートアップに必要な戦略って?

Mark RobergeによるとGTM(Go To Market)戦略は以下のような順番があるとされている。ちなみに、Mark Robergeは、HubSpotをスケールさせる仕組みを作った人。今はHubSpotの社外メンバーでMTIのMBAコースで教鞭を取っていらっしゃいます。日本語の著書もあります。

画像1

The Science of Scaling Framework with quantifiable milestones and aligned GTM strategy

↑ こちらのコンテンツ、本気でおすすめです。
英語が苦手な方のために、全文日本語へ翻訳しました。

https://blog.leapt.co.jp/the-science-of-reestablishing-growth

恐縮ながら弊社ドメインに置いていますがよろしければぜひ、FBで、Twitter、Slackで、ChatWork、界隈の人や自社の方にシェアしまくってください...🙇‍♂️
Mark Roberge本人がコンテンツの翻訳と展開を快諾してくれたものの、、翻訳にそれなりの苦労がかかっているので....多くの方に届いて欲しい(涙...

このnoteはBtoB SaaSマーケティングに焦点を当てているので、多くの皆さんに対して上の図表で該当するのは「Demand Gen」というところでしょうか(ちなみに、Demand Genとは、デマンドジェネレーションのことで、デマジェンと略されることもある。リードジェネレーションは、リードジェン。リードナーチャリングは、ナーチャリング、といった具合)。

上記で想定したSaaSスタートアップの方達が該当するステージはおそらく「#2 Go-to-Market Fit」というところで「Demand Gen」は1. Scalable, Measurable Mediumということになる。

先ほどの話に戻って、この1. Scalable, Measurable Mediumに広告(担当者)を選択するのって正しいのだろうか。

私にとっては結構「」。BtoBマーケティングやニッチのSaaSって、これからマーケットを作っていく必要があったり、そもそも直で訴求できるような(指名検索に近しい)検索クエリがそもそも存在していない。

また、専門媒体も少ないのでいわゆる”露出”機会も少なめ。

少し深掘りするとBtoB SaaS スタートアップのいうオンラインの広告って大概、大きく二通り。検索型ディスプレイ型、これらを指している

検索型はそのままで。

ディスプレイ型は特定の条件のもと広告プラットフォームと関係するインターネット上で目にすることができる広告のこと。例えば、Google広告でディスプレイを出せば、Google Adsenceの契約をしているサイトに表示されたり、ライバルのサイト(ドメイン)を訪れたら自社の広告を表示させる、など。

両者の共通する特徴って、あくまで検索ニーズがあることだったり、該当業界がある程度認知されていることが一般的には前提だったりもする(あとは広告に詳しい人に聞いてください)。

つまり、SaaSスタートアップだと、広告でScalableかつMeasuableか判断できるのかと言われると、非常に疑問が湧く。特に指名検索は当然無理準指名検索(製品やサービスに直結するフレーズ)も可能性が低い、などなど。

ここまでくると、新しいマーケットを作るSaaSスタートアップが広告でスケーラビリティを計測するのは違う可能性があることは予想できる(マーケットを創造するSaaSではなく、ニーズが顕在化している既存市場に突撃するのであればありだとは思う)。

SaaSのスタートアップで新しく市場を開拓するということは、これまでの社会課題をぶっ壊すということなので、広告にせよ、ウェブサイトの改善にせよ、コンテンツ自体が課題に対して気付きを与えるベースになっていないと探されようもないし(気づかれない)、課題が一言で表現できる様に(理想として)ワンフレーズになっていないと、伝えられた受け手にとってはピンとこないしアクションが取れない状態と陥りやすい。

市場がまだない様なBtoB SaaSスタートアップは、あくまで自社のペルソナがどの様に、自らの課題に気づいてもらうのかという視点からアプローチする、という視点が大切、ということ。

余談になるが、HubSpotが伝えていることは「買い手主導の購買活動に寄り添うながら売り手も包括的なマーケティング、営業、サービスをしなくてはいけないよね、そのためには売り手も部門間でサイロ化した業務をやめないといけない。そのためには顧客を中心においたオールインワンのソフトウェアを作って提供しているんです。」ということ(つまりそれがインバウンド)。

非常にコンセプトがうまくできていると思っている。

でも、このコンセプトだけを叫び続けるだけで、ペルソナの課題の重要性に気づくのか?課題は解決するのか?これを考え抜かないといけない。ブログだけでできるのか?eBookだけでできのか?ウェブサイトだけで後押しできるのか?ストーリーも伝えないと”インバウンドマーケティングって結局何?”となるはずですよね。

同社がストーリーを伝えるために、こういった実務的なツール(↓)を持ち合わせ、コンセプトを市場に染み込ませる努力を日々している、そういったアプローチも大切で、BtoB SaaSのスタートアップ企業のみなさんにはも知っておいて欲しい。

(ウェブサイトの健全性を可視化してくれる”HubSpotのウェブサイトグレーダー”)

最近で言えば、この#SaaSLovers の発起人の@ShoheiKomatsuさんのお勤め先RevCommさんが作っているこの様なツールもとてもいいな、と思う。IT系企業やSaaS企業からするとテクノロジーの変化で”ごくごく”当然なんだけど、ということを気づいていない人が世の中の大半であること、課題に気付いてもらうために作っているのでとてもいいなあ、と感じる。

(自身の通信環境の状態を確認してくれる”RevCommのMiiTel Speed Test ”)

Product-OutやFunction-Outな思考でスケーラビリティを測るのではなく、Market-InやCustomer-Inな思考でスケーラビリティを測る、これが大切なのです(それを広告で測れるなら、それはそれでいいということ)。

では、、BtoB SaaSスタートアップの我々の戦術はどうすれば...

これはこれで大変難しい質問。BtoB SaaSスタートアップと言ってもいろいろ細分化されます。

SMB vs Enterprise、Horizontal vs Vertical, ITリテ高い部門向け vs ITリテ高くない部門向け etc。

そのBtoB SaaSスタートアップのビジネスモデルによってマーケティングの打ち手は全くもって異なる。ブランドやコンセプトを固めるべきフェーズの企業もいるし、セールスと直結したマーケティングに注力すべき段階のスタートアップもいたり....

下図の様な一般的なBtoBマーケティングの教科書的な打ち手早見表的なものも世の中に出回っている(以下弊社がたまにイベントとかでお見せするもの下図)。

画像2

(デジタルを活用したBtoBマーケティングと営業の活動の型)

自社で作った資料に対して私が言うのも変なのですが、この類の表を鵜呑みにしてBtoBマーケティングを実行するのは素直すぎると思うのでやめて欲しい(汗)

業界業種において条件が全く違ったり、ユーザー課金や従量課金とモデルが異なるSaaSも多く存在。ここに乗っていないような打ち手があることは往々にしてあるし(上記のウェブサイトグレーダーやスピードテストも)、取り組むべき優先順位は組織構成なども考えると、Betterは存在しても正解は決して存在しない

BtoBマーケティングによっては生産などのサプライチェーンや他の領域を考える必要があったりするモデルもあり、法人向けのアスクルのサービス(1,000円/月)もBtoB(マーケティング)にくくれるが、上記の表が通じるのか、いや、サプライチェーンやリアルチャネルでの配送などが入ってくるので、、上記図の適応は、まぁ無理であろう..、という具合。

少し脱線しましたが、BtoB SaaSスタートアップに話を戻すと、SMB vs Enterpriseであればよくあるインバウンドマーケティング型とABM型。こちらに関してはengate mate編集長の實川さん(@matoho299)の記事であるこちらを見られると良いか、と。

Horizontal vs Verticalにしても取るべき戦術&行動は全く異なる。

Horizontalは、売りやすかったり相性が良かったりする業界業種はある程度の差が存在するものが、課題が潜在的な業界もあれば、顕在化している業界もあり、温度感は様々ながら、総合的なニーズの量は多め(新しい市場でも多くはなる)。

一方で、Vertical、例えば不動産に特化したSales Techの場合、「売上を上げる方法」などではなく「住宅展示会からの個別説明会への来場率を上げる方法」など、往々にして課題が顕在化してしまっているつまり、課題意識が潜在的な人たちが相対的に少なく、顕在層に対するマーケティングを仕掛ける方が、売上を上げるためには直球で早い(ブログの様に潜在層向けコンテンツを作りまくる必要性はあまりない、ということ)。

例えば、私の前職のHubSpotはHorizontalとしてとても良い例。相性の良い業界業種は、IT系だったり、世の中のITリテラシー平均値よりは高めな業界なのですが、そうではない業界業種も購入をすることも多い。エンタープライズ機能を強化しているものの(HubSpotの言うエンタープライズは私の知っている限り数百人と言うイメージ、企業によってエンタープライズの定義が異なるのもミソ)、メインの企業サイズはSMBサイズ(サイズによる収益比率はサイズ別顧客数比率とはもちろん異なるけど)。

つまり、対象となるであろう市場が大きく、課題に対する気付きレベルがまちまちであるため、全ての状態の顧客(潜在、顕在、顧客化状態)に対してコンテンツを数多く作らないといけないモデル、と言うこと(いうてまうと、製品も高価ではないため、数を売らないといけない、という視点もある)。

ということで、価格帯や課金形態などの影響を受け、上図での一般化された図はVertical型にはハマりづらく、Horizontal型には相性がよくなる。といわけです(ということを考慮して欲しい)。

戦術に関してはとにかくその様に考えて欲しく、「メディアやイベントで喋る人たちの事業サービスのポジションをきちんと汲み取って」から自社の戦略や戦術を考える様に欲しいとも思う。

- ABMを押す企業は、当然、ABMと相性の良いビジネスが顧客像
- コンテンツマーケティングを押す企業は、当然、コンテンツマーケティングと相性の良い
ビジネスが顧客像
- SFDCを押す企業は、当然、SFDCとSFDCと相性の良い
ビジネスが顧客像
- HubSpotを押す企業は、当然、HubSpotとHubSpotと相性の良い
ビジネスが顧客像

と言う具合で、ライバルを貶めるコンテンツや、事実を自社の有利に伝える様etcなどの、さもしい姿勢はすべきではないと思いますが、トーク内容が偏るのはビジネスする上ではある程度起こり得ること。

(きついことを言えば)自社ビジネスモデルとの相性を考慮せずに話を間に受けてしまう側にもある程度責任あったりもする、なんて(冷たいけども)思うこともあります。

メディアやイベント登壇者の言っていることが気になったら、必ずバックグラウンドチェックを自分なりにするのもおすすめ。その方の職歴や考え方、周辺人物との相関関係、企業のサービスの相手とその周辺企業との相関関係 etc

これをするだけで、ある程度のビジネス感覚がある方であれば、自社の取るべき戦術との相性はだいたいわかります。

私がなんでこんなことを伝えるかと言うと、冒頭と関係しますが、ご相談を受けた際に”御社はこの方の言っていることを間に受けてもマターク関係ないのですが...”と感じることも大変多い。

私は大変悲しい。それは、、結果出ないって。

このnoteを読む人がSaaS BtoB関係者であり、私自身がSaaS BtoBの元インハウスマーケターとして狂った様にマーケティングをしてきました。現在もBtoB SaaSの支援を行っているからこんなことをお伝えしています。つまり、私の言っていることを想定読者の方にそのまま解釈してもらっても大きな問題は起きないからです(多分)。

BtoB SaaSが陥るマーケティング採用の罠

”ううぅん。3ヶ月経ったけど報告がCPAの話ばかりだな...”

この様に感じておるBtoB SaaSスタートアップの経営者や幹部の方も多いのではないかな、と。私からするとマーケティング職種の複雑性を理解する機会が少ないのだなぁ、と思う。

マーケティング業務はものすごい複雑で、利用するチャネル(オンラインとオフラインの場)も数が多く、テクノロジーの進化もびっくりするくらい早い(マーケティングテクノロジー企業がマーケティングしているので変化がとにかく早い)。

という背景があり、一概にマーケティング担当者と言っても、一定領域の職人技(深化すると職人芸)を磨く必要が多いのというのがマーケティング担当者の職務特徴

画像3

(マーケティング業務の分断化)

こちらも汎用的に表現したため、全ての業界業種に当てはまるわけではないですが、おおよそこれくらいの業務がマーケティングには内包されており(ブランドやコミュニケーションなどは除外)、見ての通り双方向間で接点がない活動も数多く存在(接点が作れていない....スキルセットが違いすぎる....というべきか...マーケターが自己研鑽を怠っているともいえますが....)

そのため、雇われた広告経験者が、広告以上のことを求められるのは意外や意外と酷なことなんです。レベルが職人芸まで到達してしまっている広告運用者であれば、もはや別職種をやってくれ、と言われているレベルくらい。

職人芸のマーケターに対して、上役が何でもできるマーケターという期待値を設定してしまい、、上役がオラオラ経営者だった場合、、、結構無残、。

その様な場にいたことはありますが、私からすると、無勉強でいきなり広告運用者を雇った経営者が悪くないか、と担当者の肩を持ちたくなることもたまにあります。

私の考える、最初に雇うべきマーケターというのは、ウェブを触れるウェブマスター的な人。多少のHTMLとCSSを理解しており、社内、社外の受発注のレベルでプロジェクトを進行させることができる程度が理想と思っています(それができれば大体のデジタル関係のことは習得可能、マーケティング思考があれば活躍はほぼ確実)。

これまた米国でのお話で恐縮なのですが、米国のアジャイル型マーケティング組織で重要視されているスキルで、フロントラインでマーケティングをする人たちにいずれも必要とされているスキルの一つが、HTML/CSS。JSが多少わかればなおよしという感じです。

画像4

(アジャイル型マーケティング組織に必要な職種とスキル、テクノロジー)

こちらのスライドは2020年6月に行われた才流さんのイベント「デジタルシフト2020」にて私が喋らせて頂いた際のスライドの一部。実際に私自身もインハウスのマーケターとしてHubSpotで働いていたときに、足りていないと痛感したのもスキルの一つでした。

脱線しますが、そんなこともあり昨年はセブ島に住んで(日焼けしながら)HTML/CSSとJSの基本を勉強しておりました。詳しくは↓

(「IT × 英語」をモットーにするセブにあるKredoの事例動画)

ウェブデザイナーやエンジニアと対等に話せるようになる必要はないのですが、彼らの痛みや苦労を理解し共感をすることは、マーケティング担当者やマーケティング責任者として、事業責任者として非常に大切

同じ言語を多少でも理解してくれる人がいるだけで、ウェブデザイナーやエンジニアがどれだけ安心して動きやすくなるか。安心が生むスピード感はチームに良い結果を必ずもたらします

広告運用は、戦略や戦術が定まっていれば、インターンやフリーランサーでも運用可能で、インハウスのフルタイムで採用する必要性は全くないかな、と、特に初期段階。

年収500万円のインハウスマーケターを採用して月50万円の広告費を走らせます。年間コストが、1,100万円。人件費を考慮したROMIで5を取りに行くとすると、5,500万円の売上を出さないといけない計算。

先ほど言ったように、広告担当者の職人技は運用であり(クリエイティブ制作はない、基本ディレクション)、マジカルなコンテンツ制作、ウェブを運用してLPOしてCVRを高速で爆上げするPDCAを回す職責を持っているわけでもない(一般的に)。

つまり、広告運用以外の前後が塞がれた状態で「売り上げにつながる問い合わせを増やせ」と言われても相当な無理ゲー状態...です。

もしくは、月50万円の広告費用で広告運用会社に運用発注をするとして...。広告運用会社の運用費用は広告費用に対して高くて20%程度。つまり、10万円程度の売り上げにしかならない。ということは、運用に月当たり3時間程度しかかけてくれないでしょう。残念ながらこちらも当然結果は期待できない...という具合。

同様に、広告運用担当と同じくらい初期で採用しがちなのが、オフラインイベントを職責にもつフィールドマーケター。繰り返しになる様に、デマジェンのフェーズでは「スケーラブル」である必要があり、展示会やセミナーはスケーラブルなオプションでは全くもってありません

また、フィールドマーケターにオンライン業務を兼任させるのも私の経験上、相性が大変悪いです。マーケティング業務に関わったことがない人であれば覚えておいて欲しいのですが、デジタルに対してフィールドマーケターが持っているスキルは一般的には水と油の様な関係、と私は認識しています。

これは少し考えてもらえればわかるのですが、セミナーや展示会をする方は、基本的には会社の中での立ち位置は営業販促支援に近い立ち位置であり、自社を知ってもらう機会(展示会)がある前提で、職責の範囲がスタートする役割。

つまり、ど新規に対して新しい接点を作ることをそもそもしてこなかった人であり、かつ職責上、取得後の見込み客情報に対して責任をほとんど持っていない(名刺数を集めて、あつければ営業に渡し、あつくなければ社内の別マーケター(主にメルマガ担当)に渡す)。

展示会やイベントでは、殺人的な量のタスクと業者と営業部門との調整が発生する、その捌き方に職人技を持っているのが一般的なフィールドマーケター(超雑ですいません)。

ニューノーマルというかまだコロナ禍の真っ最中ですが、BtoB SaaSのスタートアップが最初に雇うべきマーケティング担当者はウェブを触れたり、仕組みや動き、周辺の人と折衝して動くことができる、ウェブマスター的な人、というわけです。

広告運用も、フィールドマーケターも、広報も、もう少し後でいいのです。ウェブマスター的な人であれば、大概のことは、薄く広くできます。

人が見つからないのはわかります。VCからも株主からも資金使ってリード増やせ!って言われますよね、気持ちはわかります。

”なーんでこんなに何も変わらないんだ?”

と思ったら立ち止まって考えてみて欲しいです。

彼らが悪いのではなくて、彼らにできる仕事ではないのです。

間違ったタイミングで雇ってしまうと、これってかなり残酷なことですよね。会社のカルチャーや人を破壊しかねません。

まとめ

前回の記事と異なり、かなり砕けた散文的な感じなってしまいました。

カクカクな文章、ビジネスブログ的な文章よりも、臨場感があるかな、と思い合えてこのスタイルでお伝えした次第です。

BtoBマーケティングのツワモノ経験者が、アーリーステージのBtoB SaaSスタートアップの経営者だったり、幹部にいるところを見たことがありません。

それはミスしてしまうよね、と思いますので何かの足しになればと思っています。少しでも、ズッコケポイントを回避できるスタートアップが増えて欲しいな、もちろんベンチャーや中小企業さんも。

この様なことをズバズバ言ってしまうので敵をつくりがちかもしれません。ただ、刺さる人に刺さってくれれば良いかな、というスタンスなので、もしこのnoteが、そしてMark Robergeの翻訳記事が刺さりましたら、ぜひFacebookで、Twitterで、slackdで、Charworkで、共有のほどお願いします。

また、よろしければ最近サボり気味なTwitterのフォローもお願いします。

ちなみに私は犬派です。

追記:2021/10/12に関連性の高い記事「The Science of ReEstablishing Growth :成長戦略に再び舵を切るタイミングは? 科学的アプローチから考える」を自社ブログにて公開しました(↓)。

かなりバズらせて頂いたので、この領域にいる方であれば役に立つコンテンツだったのではないかと思います。そちらも良ければご覧くださいませ。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?