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エキノコックスというちょっと変わったサナダムシ

サメの寄生虫をブログで立て続けに紹介したら頭の中が寄生虫でいっぱいになったので、この本の感想を。手を震わせながら一気読みしたオススメの一冊です。


エキノコックスという寄生虫をご存知でしょうか。人畜共通寄生虫で今もなお、粛々と本州に拡大をしている条虫類です。

大学院時代、私はサメの条虫類(いわゆるサナダムシ)を調べるため、とある研究施設に外研(所属する研究室ではない研究室で研究をすること)に出ていました。

それは目黒寄生虫館。私がお世話になっていたのはM2(マスターコース2年生の意味)の頃。まさにエキノコックス感染拡大を北海道で食い止められるかどうかのひりついていた2004年でした。

当時の館長内田先生をはじめ、エキノコックス研究にご尽力されていた先生方がいらっしゃり、贅沢にも休憩時間もランチタイムも定時後も会話はエキノコックス一色。
23歳だった当時の私は、サメの条虫類だけでなく、エキノコックスという一風変わった条虫類にも夢中になっていきました。

清浄島  川﨑秋子著
戦後の日本でエキノコックスが初めて報告されてから、北大をはじめ多くの研究者たちが人生をかけてエキノコックス感染症と戦うさまが、リアルに描写されています。


清浄島 (川﨑秋子著)を読みながら、本を支える私の手がプルプルした原因はなんだったのか。

2004年に何が起きていたのかという答え合わせと、寄生虫の研究がいかに時間と労力と神経をすり減らした歴史を有しているかをまざまざと見せつけられたこと、主人公のように剖検して虫を探し出したい欲求がまた大きく膨らんでしまったこと、そしてそれを見事に書き上げた著書川﨑秋子さんへの嫉妬が入り混じったからに他なりません。


本書によれば、エキノコックスは礼文島からはじまり、1990年代には北海道全土へ感染、2005年に埼玉県で本州初のエキノコックスの虫卵が見つかったとあります。

現代のCovid-19感染に通づるものだったり、はたまた昭和の動物倫理だったり、なんだかずっと胸が締め付けられっぱなしだったな。

よろシャーク。



清浄島  川﨑秋子著

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