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「なぜ、資産形成が必要なのか?」~「貯め方」ではなく「手放し方」から考える資産形成~


資産形成とは、お金を丁寧に手放すことである

 資産形成は実はそもそも誰にとっても人生の一部ですので、必要かどうかではなくどう意識しているのかが大切です。世の中では資産形成というと、“預貯金の残高”を増やすイメージと直結していますが、自分にとっての資産とは通帳に記される数字だけなのでしょうか。

 少し極端な例えを出してみると、老後に2,000万円の貯蓄はできたもののそれを取り崩すだけの生活になってしまうAさんと、貯蓄は必要最低限しかないものの他人に指導できるほどの突き詰めた趣味の知識を持ちそれを通じた仲間とも沢山繋がりがあるBさんでは、どちらが“資産”形成に成功した人生なのかを決めることは難しいでしょう。

 このように整理してみると、資産形成というのは改めて「やるぞ!」と重い腰を上げるようなハードルの高い行動ではなく、既に毎日(消費も含めて)手放しているお金の行方にもう少し丁寧に気を遣うということに他なりません。そしてその手放した結果として時間とともに自身の人生が豊かになっている実感を得られれば、それこそが資産形成できている証であり、この質問の芯にある不安を解消する答えになるのではないでしょうか。

4つのお金の手放し方とそのバランス

 ではここでお金の手放し方を整理してみましょう。

4つのお金の手放し方

 今回はその切り口として、自分‐他人、消費-投資、というような二軸を用意して4象限で考えてみることにします。この4象限ごとでは自身にとってどのような豊かさをもたらすのかに時間や経路の違いはありますが、どの象限においても経済活動の中で丁寧にお金を手放せば、いずれまた自身の元へ戻ってくることが期待できます。先述の内容を引き継げば、この循環に感じる豊かさや時間と共に循環そのものが大きく育っている実感が、資産形成が上手くいっている証となるわけです。

 このように丁寧にお金を手放していけば、真の資産形成に成功していることは時間とともに実感できるようになりますが、4象限が繋がっていることを忘れずにバランスを取ることも意識しておく必要があります。経済というのは結局人と人との繋がりですので、自身が築いた資産を使う時にその社会全体が疲弊していては意味が無くなってしまうからです。
 したがって資産形成を進めていく際にはこの繋がりの中の「他人・社会」という象限にも意識してお金を手放すことで、その成長と共にリターンを得るという考え方も重要になります。

4つ目の手放し方「他人・社会への投資」について

 私は今「さわかみ投信」という4象限の④に位置し一般生活者の資産形成において好循環を生み出すためのファンドを世の中に提供していますが、日本人は未だにこの領域へお金を手放すことを苦手にして、循環の円が欠けている人が多くいると感じています。
 例えば、携帯電話や保険などの過剰な契約で毎月5,000円削減できる出費が続く事実よりも、投資した10,000円の時価が9,500円になって500円評価が下がることの方を「損している」として嫌うような方が多いと現場で感じてきました。

 このように感じてしまう要因は様々あると思いますが、それは「変動」という不確定なものに対して必要以上に怖さを感じているのではないかと分析しています。
 ではこの「変動」について少し別の確度から考えてみましょう。

 経済はさながら大河のように色々な価値(実態)の移動が起こり、それに対する価額(金額)により取引が行われて、今この瞬間も留まることなく水の量や質、その位置さえも変えながら流れています。「変動」を嫌う人は、この大河から自分のバケツで汲み取った水はあたかも永久に安心できる財産のように捉えてしまいますが、実はバケツの中の水も大河の水に合わせて変化しています。この時金額は変動しませんが、実態は変動を続けているからです。
 河のほとりに立って水を都合よく利用しているつもりで、実は自分自身も河の一部であることを忘れてしまっているともいえます。この事実を昨今スーパーマーケットのレジで実感するインフレからも否定できる人はいないでしょう。今すでに通帳に記されている預貯金の価値が目減りしているわけです。

 このようにそもそも私達の生活は経済的に常に全て変動しながら繋がっている事実を思い出してみると、「変動」を嫌った人が一番「変動」から影響を受けてしまっているという皮肉が見えてきます。

自分も経済の一部だと認識し、未来を見据えてお金を手放すことが大事

 ここでお金の手放し方に話を戻してみると、4つの象限を一つの繋がった円として捉え資産形成を実現することが重要でありました。これを自分自身も大河の一部であることも合わせて考えてみると、実は④にも「よりよい未来を」という意志を乗せたお金の手放し方をすることが、経済の大きな流れに対して良い影響を及ぼす力になっていることに気付きます。

 このように考えていくと、④に位置する「投資」というお金の手放し方そのものが、私達生活者が真の資産形成をしていく上でとても利用価値の高い行動であるという本来の姿が浮き上がってきます。

 資産形成についてお答えする中で、まだまだ本格的な利用が進んでいない「投資」の話になってしまいましたが、すでに資産形成が必要かどうかで立ち止まっている時ではなく、その先の意識を持って行動するべき待ったなしの状況になっていると思います。

私の人生を豊かにしてくれるのは、世の中への当事者意識と感謝です。
運用調査部 斉藤 真 Makoto Saito

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