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言葉のことばかり【失礼します】

前を横切る

CMの編集作業ってちょっと異様で、
大のおとながテレビモニタの前に
ずらっとならんで、ソファに座って、
みんなでひとつのテレビを
真剣に見ているわけです。

いまどきご家庭でも見られなくなった
風景がそこにあります。

そのときよくあるのが
「失礼しまーす」と言って
モニタの前を横切るという行為。

あれってなぜだか必ず、腰をかがめて
「すいませんのポーズ」で通るんですよね。

映画館で始まってから入ってきた人が、
スクリーンをさえぎらないように
やるじゃないですか。あれと同じ。

ところがテレビのモニタは
そんな高いところにはないので、
かならずそのすいませんのポーズが
じゃまになって、
かえってモニタが見えないんですよね。

不思議なんですが、
かならずみんなそうしますよね。
ボクもやります。

やっぱり背筋を伸ばして口で
「失礼しまーす」と言っても
キモチが伝わらないからですかね。
体が勝手にそう動いちゃうような気がします。

もひとつおまけに手も出すんですよね。
手刀を切るポーズで。
これで唯一空いているスキマも
しっかりふさぐという…。はははは

わかってるけど失礼する

「失礼します」ってこれから「します」だ。
失礼は礼を失することだから
やっちゃいけないことだと思うけど、
それでもやんなきゃいけないときに使う。

これってなかなか優れ技だと思う。

普通に考えると、失礼ってわかってるのに
失礼なことするなよ。ってなるけど、
そういうときに使える言葉。
これ言っとけばやってもいいという、
免罪符的な技だな。

やった後でも使える。
「失礼しました」。

あらやっちゃった。
だけどこれ言っとけばとりあえずOK。
便利である。

言い換えてるだけ説

よく使うのが、欠席する、早退するとき。
「所用がありそろそろ失礼します」とか
「披露宴の二次会は失礼した」とか…。

便利になんで、ズルく使うことも多い。

おんなじことやってても
これを「失礼」ではない言葉にすると
失礼なことがよくわかる。

「とんずら」とか。

「所用がありそろそろとんずらします」
「披露宴の二次会はとんずらした」…。

古いか。「ブッチした」とか?
これも古いよな…。
「ドロンした」…いやいや古すぎ。

まあおんなじことやってても、
申し訳ないと思ってるかどうかの違いか。
「たいへん失礼いたしました」まで行くと
そういう気分は伝わるんだが、

「失礼しや〜す」くらいだと全く思ってない。
挨拶レベルになってるもんな。

昔から植木等の「こりゃまた失礼」とか、
加藤茶の「すんずれいいたしました〜」とか
ギャグにされてるくらいだ。

しかし例をあげようとすると全部古い。
失礼いたしましたと言わざるを得ない。

「こりゃまた失礼いたしました〜」

次回の言葉は「ごきげん」です。

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