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Tokyo散歩 恵比寿
ビールの最初の1口目のぷはーっという爽快感が好きだ。実はお酒に弱いので缶ビール1本飲み干せないくらいなのだが、あの爽快感が好きなのでたまにミニ缶を買う。子どもたちの前でぷはーっとすると「おいしいの?ちょっとなめていい?」と聞かれ、ミニ缶をぐいっと近づけ恐る恐る舐めたこどもは「おえー!にがー!」よくこんなの飲めるね、え、これが本当においしいの信じられないと言われて「まあ、大人になったらわかるよ」と大人ぶって答える。こういう時にああ自分は大人なんだなと思う。そうか大人になるということは、堂々と大人ぶれるということなんだ。
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そんなことを思いだしていた時、ちょうど乗っていた山手線の路線図で恵比寿を見つけた。ビールと言ったら恵比寿だよなあ。そして恵比寿と言ったら写真美術館とワニブックスだよなあ。と思う。こうなると三段論法でビールと言ったら写真美術館とワニブックスになってしまうかと思いきや、そうはならないところが僕らしいなと思う。
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写真美術館の企画展を調べたら、ちょうど木村伊兵衛さんの展示をやっていた。前から一度木村さんの写真を観たいと思っていたので行ってきた。
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最初に木村さんのことを知ったのは木村伊兵衛写真賞を藤岡亜弥さんが写真集「川はゆく」で受賞した時だった。当時、確か2017年か2018年くらいにそのことをアサヒカメラで知り、そこに掲載されていた広島の写真のパワーに圧倒されたことを覚えている。
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その写真は原爆ドーム前の道で膝立ちした学生が両手からパワーを放出して周りにいる学生たちを同心円状に吹き飛ばしている写真。吹き飛ばされた学生は海老のように体をくの字に曲げて吹き飛んでいる。その『く』の形がすごく綺麗に『く』だった。100点の『く』だった。もしかしたら前世は海老だったのかもしれない。
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きっとこの学生も岩根さんもスタンド使いで、僕には見えないスタンドが見えていたんだろう。背景にある原爆ドームという現実と、スタンド使いの戦闘シーンという非現実が混ざった、そういう美しい写真だった。(こんな面白くてきれいな写真を撮る人がいるのかよ。。。やば。)と思った。
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その写真賞の名前になっている『木村伊兵衛』という名前が読めなかったことも同時にはっきりと覚えている。きむらいへいえい?きむらいべいえい?とその時は適当に流していたが、その読めない名前は僕の記憶にはっきり残った。
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それ以来、雑誌やweb上でたまに木村伊兵衛さんの名前を見かけるようになった。その度に(お、またこの人だ)と思った。ライカを使っていたことや、白黒写真が多いこと、秋田県でたくさん写真を撮っていたことなど、既にご本人は他界されて50年経つが、今でもいろいろな媒体でその名前や作品が出てくる。
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他界されてからもこんなに強い影響力をもっているのはピカソやゴッホみたいだなと思い、これはすごい人に違いないと思うようになった。その頃には『きむらいへい』という正しい読み方も把握していた。
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そんな有名な木村伊兵衛さんの印刷された写真を、一度観てみたいと思っていた。そんな時に見つけた今回の展示会。最近の展示にしては珍しく写真撮影禁止だった。その分しっかり目に焼き付けてやると思い、普段より長めに滞在していたような気がする。美術館は静かで、自分の靴音がやたら目立った。
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展示は1900年台初頭の那覇周辺の様子を写した白黒写真から始まる。わずか100年前だが、今とは全く異なる世界だった。市場、未舗装の道、その両側にある出店。浴衣のような服を来ている人たち(洋服を着ている人は一人もいない)、当時の看板や家、石垣、子どもが子どもをおんぶしている様子。僕は沖縄の中部出身なので那覇周辺はあまり知らない。それでも今の那覇とは全く異なることはよくわかった。
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他にも、東京、秋田。福島で全裸の漁師たちが船を出している写真(驚くことにみんな本当に全裸で、当たり前のように船を出していた。海水で濡れるからだろうか)。千葉の田んぼや畑で子どもたちが働いている様子。全てがカルチャーショックの連続だった。パリの写真はカラーフィルムだからか、場所が中心部の街中だからか、そこまで今と変わらないように見えた。(パリは今も昔もパリなんだな)と思った。
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帰りに新宿に用があったので寄っていくと、西口の小田急百貨店本館が解体されて東口側まで見通すことができた。視界が広がり新宿じゃないような感じがして、一気に過去にタイムスリップしたような感じがした。
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小田急百貨店ができる前の景色はこんなに空が広かったんだろうか。ここには高層ビルの建設が予定されているらしいけど、僕は今の空が見える景色の方が好きだと思った。どうしても建設するなら、出来るだけゆっくり建設して欲しいと思う。それこそサグラダファミリアみたいに140年くらいかけて。
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