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内密出産ガイドラインに見る課題

これまでも幾度となく『こうのとりゆりかご』や『内密出産』の話題を取り上げてきましたが、その内密出産のガイドラインに関して、松野博一官房長官が
「関係団体などから強い要望があり、可能な限り速やかに発出したい」
「(作成にあたっては)出自を知る権利、診療録や戸籍の扱いなど、さまざまな論点の検討や、関係団体などとの丁寧な調整が必要だ」と、8月29日に開いた記者会見で語ったそうです。

ガイドラインを策定する方針は、既に首相や担当大臣等から国会で言及されていたことではあるものの、その後に内閣改造もあり、作業の遅れや、場合によっては白紙に戻ることもありはしないかと心配していましたが、それは取り越し苦労だったようです。

ただ、気になる点もあります。
現時点で報じられているガイドラインの内容については
①病院が内密出産を希望する親に対し、生まれてくる子の出自を知る権利についてきちんと説明すること
②親の氏名などの身元情報を院内で適切に管理することを求める
③戸籍法で義務づけられる出生届を親や医師が出さなくても、市区町村長の職権で戸籍をつくれるといった解釈を明確にする方向
とありました。

②では、「身元情報を院内で適切に管理を求める」とありますが、重要な身元情報を市や県、国、裁判所といった公の機関が関与せずに医療機関に委ねるということは、いくら医師や看護士にも守秘義務があるとはいえ、あまりにも乱暴なやり方のように思えました。この3点を読む限り、結局は慈恵病院が行ってきたことの追認で、母親や産まれてくる赤ちゃんの命や健康、権利を誰が守るのか曖昧ですし、国が守るという姿勢は残念ながら全く感じられません。民間病院だけに責任を負わせるのではなく、産まれてくる命を、公が責任を持って守り続ける姿勢を示す、そんなガイドラインであることを期待しています。

ただ、まだ正式に公表された内容ではないので、断定は避けた方がいいのかもしれません。
官房長官の「さまざまな論点の検討や、関係団体などとの丁寧な調整が必要だ」この部分に期待したいと思います。慈恵病院では、内密出産が4例目、5例目と続いています。丁寧かつ迅速な対応が求められています。

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