【考察】高橋周平のサード専念はチーム力の底上げに繋がったか?
みなさん、こんにちは。今日は「高橋周平のサード専念はチーム力の底上げに繋がったか」について考えてみたいと思います。
今季与田監督は前年セカンドのレギュラーとして初めて規定打席に到達した高橋周平を、プロ入り後の本職であるサードへ「再転向」させました。春季キャンプの段階から一度もセカンド練習すらさせず、サードに専念させたのはその方針がブレずに明確だったことを物語っています。
実際に打撃面では怪我で離脱するまで首位打者を狙える成績を維持し続け、守備ではリーグトップクラスの貢献で初のゴールデングラブ賞も獲得。与田監督の起用に見事応えた形になりました。
また今季高橋の代わりにセカンドで定着した阿部の活躍を見るにこの配置転換が効果的だったのは既に火を見るより明らかだと思いますが、今年3月に以下の考察記事を書いていたので、その答え合わせをちょろっとやらせて頂きたく、お付き合い頂ければと思います。
1. 2018年のセカンドおよびサード起用を振り返る
まずは昨季ドラゴンズのセカンドとサードが、どのように起用されていたかを振り返ります。各ポジションにおける出場イニング数は下記の通りです:
▼2018 選手別セカンド出場イニング数
784 高橋周平
289 亀澤恭平
132.2 荒木雅博
35 阿部寿樹
22 堂上直倫
▼2018 選手別サード出場イニング数
963.2 福田永将
224.2 高橋周平
68 堂上直倫
6.1 亀澤恭平
前述の通りセカンドは高橋周平がサードからコンバート。サードには福田が入り、それぞれプロ入り初の規定打席に到達しています。チーム内トッププロスペクトと言っていい高橋が遂に規定到達を果たし、将来的には「強打のセカンド」としての期待感を抱かせた点でこのコンバートは大成功のように思えます。センターラインに打てる選手を配置することは、他球団に対して強みになり得るからです。
一方で、2018年時点における他球団選手との比較は下記の通りとなりました。
▼2018 二塁手 攻守貢献度 (200イニング以上、21選手)
▼2018 三塁手 攻守貢献度 (200イニング以上、21選手)
いずれもチーム内においては確固たる「レギュラー選手」でしたが、他球団のセカンド&サードと比較すると平均レベルの貢献しか果たせていなかったことがわかります。ただ「レギュラー1年目としてはまずまず、来季以降のレベルアップに期待」と言う見方も当然できますし、かく言う私も「セカンド周平・サード福田派」でした。
一方で現実では与田監督は開幕前からブレずに高橋のサード再転向を断行し、空いたセカンドで阿部を見出すなどファンの予想の遥か上を行く結果を今回の配置転換で実現させました。
以下では改めて両ポジションにおける今季の起用と、他球団と比較した結果を振り返ります。
2. 2019年のセカンド: 遅咲きのダークホース阿部が台頭
まずはセカンドについて振り返ります。今季の与田中日におけるセカンドでプレーした選手は下記の通りです:
▼2019 選手別セカンド出場イニング数
977.2 阿部寿樹
166.2 堂上直倫
67.2 亀澤恭平
33 三ツ俣大樹
24 溝脇隼人
今季開幕前の高橋周平サード再転向に伴い、空いたセカンドは阿部、堂上、亀澤の3者で争う形になりました。個人的には前年に高橋周平に次ぐ289イニングを守り、打撃での貢献は限定的も安定した守備・走塁を誇る亀澤がその最右翼かなと思っていました。ただ、オープン戦から猛アピールを続けたのが阿部でした。
阿部は前年は主にファームを主戦場とし、内野全ポジションを守るユーティリティープレーヤーとして二軍待機。一軍でもわずか18試合、26打席の出場に留まり、数字だけ見るとお世辞にも今季のレギュラー候補として名前を挙げるのが憚られるような選手でした。
ただ蓋を開けてみれば開幕スタメンに抜擢されるなどシーズン序盤からまさかの大活躍を見せ、自身初の規定打席に到達。攻守に欠かせない戦力として空いたセカンドを埋めて余りある働きを見せました。
▼2019 阿部寿樹 成績
129試合 打率.291 7本塁打 59打点 OPS.742
セカンドUZR: 10.7 (両リーグトップ)
今季の阿部は他球団と比較しても出色の活躍を見せました。他球団のセカンドと攻守両面で比較した表が以下になります。
2019 二塁手 攻守貢献度調査
▼今季200イニング以上セカンドを守った17選手が対象
▼縦軸はwRAAにPF補正を掛けたもの
▼横軸はセカンドUZR
阿部は攻守でプラスの数値を叩き出した「打てるし守れる」エリア内の5選手の一角を担いました。守備指標では12球団トップの数値をマークし、打撃面でも山田哲人、浅村、ソト、外崎に次ぐレベルのパフォーマンスを見せた点は特筆に値するかと思います。
高橋周平のサード再転向により空いたセカンドを阿部が埋めたことで、チーム力が格段にアップしたことは間違いありません。
3. 2019年のサード: 「キャプテン」高橋周平が一皮剝ける
次はサードについて振り返ります。今季の与田中日におけるサードでプレーした選手は下記の通りです:
▼2019 選手別サード出場イニング数
1,007.1 高橋周平
133.2 堂上直倫
100 福田永将
19 亀澤恭平
8 三ツ俣大樹
1 阿部寿樹
怪我による約ひと月の離脱を除けば、ほとんど全ての試合で高橋周平がサードのポジションを守りました。サードへ専念しより打撃に集中できるようになったのか、5月は月間8度の猛打賞を記録するなど打率.417で自身初の月間MVPを獲得。さらに7月には選手間投票でオールスターゲームにも初選出されると、敢闘賞も受賞しました。また守っては幾度となく見せたスーパープレーの連続でサードのゴールデングラブ賞を初受賞するなど、レギュラー2年目にして攻守に大活躍、正に一流選手への第一歩を踏み出した感があります。
▼2019 高橋周平 成績
117試合 打率.293 7本塁打 59打点 OPS.776
サードUZR: 6.0
上記成績だけ見るとやや物足りなさはありますが、他球団のサードと比較してみるとどうでしょう。攻守両面で比較した表が以下になります。
2019 三塁手 攻守貢献度調査
▼今季200イニング以上サードを守った23選手が対象
▼縦軸はwRAAにPF補正を掛けたもの
▼横軸はサードUZR
こちらは「打てるし守れる」エリアにはUZR=0の鈴木大地、ウィーラーを加えると5選手がランクイン。その中でも高橋周平は攻守両面でアドバンテージが取れる貴重な選手として、他球団に大きな差をつけられたように思います。他球団のサードは全体的に守備が課題、もしくは打撃型ポリバレントプレーヤーが多いため、圧倒的な守備力と打撃力を両立させた高橋周平の存在は、来季以降も他球団の脅威となりそうです。
ただ今季の高橋周平に一点文句をつけるとするなら、やはりあの怪我での離脱。インプレー中の怪我は避けられない部分もありますが、初回一死一二塁の一塁走者としての帰塁時の怪我は、流石にケアレスミスとしか言いようがありません。さらに怪我から復帰し強行出場を続ける中でも、「小指は曲がりきらない」などファンを不安にさせるようなコメントをメディアに発信してしまうなど、個人的にはプロ選手としての姿勢に疑問を感じざるを得ませんでした(この辺は球団の広報の責任でもあるかもしれませんが)。
キャプテンとして例年以上に好調なチームを引っ張るに当たって離脱は避けたかったその「責任感」は重々理解できますが、それならそもそも注意不足と言っていいあの怪我は避けて欲しかったですし、また強行出場するなら骨折を隠し通した大島のように黙って出場して欲しかったと思いました。来季以降この怪我の影響がどう出るかは分かりませんが、何事もなくまたさらに成長してもらうのを願うばかりです。
4. 2019年のセカンド&サード起用: 攻守ともに他球団と比較して強みになる
以上、両ポジションにおける今季成績について見ていきました。最後に今季の「高橋周平サード再転向」がチームのセカンド・サード起用にどれだけプラスをもたらしたかについて見ていきます。昨季のセカンド周平・サード福田は12球団の平均値の周辺にマッピングされる形になりましたが、今年はどうなるでしょうか。
2019 二塁手+三塁手 攻守貢献度合算
▼今季200イニング以上セカンド、サードを守った選手の数値を球団ごとに合算したもの
▼縦軸はwRAAにPF補正を掛けたもの
▼横軸はサードUZR
中日は主に阿部&周平の高い守備力を武器に「打てるし守れる」ゾーンの中でももっとも右側に位置する結果となりました。昨季と比較すると今回の「高橋周平サード再転向」が成功だったことは間違いないですが、高橋周平が攻守に一皮剥けたこと以上に阿部の覚醒が大きかったように思います。阿部の台頭についてはまた別記事で触れたいと思いますが、レフト福田がハマったことも合わせて、今回の配置転換は大成功と言っていいのではないでしょうか。与田監督は就任一年目の昨オフ、即戦力野手の補強はゼロと言っても過言ではない中で、現有戦力でチーム力を底上げしたのは流石だと思います (詳細は下記記事参照)。
以上、今季の「高橋周平サード再転向」について、改めて答え合わせをしてみました。リーグの異なる選手のUZRを一つの表にまとめる、異なるポジションの選手の評価を合算するなど見せ方としてかなり乱暴な点は否めないですが、分かりやすさを重視した点はご容赦頂ければと思います。
以上、ロバートさんでした。
ありがとうございました!
*データ参考: 1.02 Essence of Baseball, nf3 - Baseball Data House -
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