見出し画像

15年ぶり新人開幕ローテ入り濃厚!即戦力ルーキー・岡野祐一郎の投球を分析する

皆さん、こんにちは。今回は

「即戦力ルーキー・岡野祐一郎の投球を分析する」

をテーマに考えていきたいと思います。

先日、広島ファン・ブロガーとしていつも参考にさせて頂いている、Yumaさん (@yumambcp)が下記の分析記事をnoteしているのを見つけました。

今年のセ・新人王候補最有力との呼び声高い、広島のドラフト1位ルーキー・森下暢仁投手のオープン戦での投球を徹底分析したものです。内容はいつも通りのクオリティでとても素晴らしく、森下投手が大卒ルーキーながら如何にハイレベルな投球をしているかが、分かりやすく説明されていました。

私も同様の記事が書けないものか・・と大変インスパイアされたので今回、我らが中日ドラゴンズの誇る即戦力ルーキー・岡野祐一郎投手について、Yumaさんのnoteを参考に取り上げることにしました。

オープン戦2登板での投球データをもとに、今季の「私のイチオシ」選手である岡野投手の投球についてnoteしていきたいと思います。

1. 基本投球成績: 少ない登板機会ながら無失点&無四球の安定した投球

まずは岡野投手のオープン戦における基本成績を振り返ります。

スクリーンショット 2020-03-19 17.53.23

わずか2登板、6イニング投げただけの成績のためここから今季成績の予測まで行うのはかなり無理がありますが、参考程度に見て頂ければと思います。

岡野投手はオープン戦6イニングで自責点ゼロ、防御率0.00と素晴らしい成績を残しました。特筆すべきは制球の良さで、対戦打者は23人と限られていながらも無四球で切り抜け、テレビ中継を見ていてもキャッチャーの構えたミットに吸い込まれるようなコマンドの良さを披露しました。また被打率、三振割合も昨季のリーグ平均を上回る成績を残しており、今のところは即戦力ルーキーの看板に偽りなし、と言えます。

さらに岡野投手の投球成績を打球傾向の面から考えてみると、リーグ平均と比べるとかなりフライ打球が多いことが分かります。これは後述するストレートの球質によるものと思われます。投球数が限定的なため断定はできませんが、ボールの球質や持ち球から考えると、シーズンで長いイニングを投げてもこの「フライボーラー」としての傾向は変わらないのかなと予測しています。

通常フライ打球を多く打たれることは、被本塁打のリスクが増すためネガティブに捉えられがちです。ただ岡野投手の場合は内野フライの打球も多く「フライを打たせている」ことができているため、広いナゴヤドームを本拠地とすることも相まって、むしろ好成績を挙げられる要因になり得ると考えています。

2. 左右別・コース別投球成績

続いてオープン戦成績を、打者の左右で分けて見ていきます。

スクリーンショット 2020-03-20 1.28.29

まず右打者に対しては、11人の打者と対戦し3本のヒットを打たれています。いずれも変化球を打たれており、高めに甘く入ったスライダーと、低めボールゾーンに落ちるフォークを上手く捉えられてしまいました。攻め方としてはストレートを多く使っており、特にインハイと外角へ制球良く投げ込み打者を詰まらせていたのが印象的です。

被打率.273はやや高いかなとも思いますが、投球データを見る限りだとストレートと比べて変化球がイマイチ制球できていなかったことが多く、打者11人の成績だけで「右打者が不得意だ」と判断するのは早計でしょう。

スクリーンショット 2020-03-20 1.40.17

次に左打者に対しては、12人と対戦し2安打を許しています。高めのストレートと外寄り低めのフォークで高低を使う攻め方をしており、打たれた2本のヒットはそのうちコースの甘いボールを捉えられたものでした。

こちらも被打率.167に抑えているからと言っても対戦打者数が少なすぎて「対左は得意!」とは言い切れないですが、岡野投手の武器であるノビのあるストレートと同じ軌道から内へ食い込むカットボール、落差のあるフォークのコンビネーションがあれば、今後登板を重ねても左打者を苦にする可能性は低いだろうと予測しています。

3. 球種別投球成績

続いては岡野投手の投球を球種別に見ていくことで、よりその特徴を詳しく確認していきたいと思います。

①ストレート

スクリーンショット 2020-03-20 1.54.12

まずは全体の約5割~6割前後を占めるいわゆる「投球の軸」となるストレートについてです。右の先発投手としては平均球速142.5キロは遅めの部類に入りますが、被打率.083とかなり優秀な数値をマークしています。空振り率こそ1.8%とイマイチですが、ゾーン内に投げ込まれたストレートで多くのファウルを奪っており、制球の良さもあってカウントを整えるボールとしては岡野投手の強みになるボールと言えるでしょう。

岡野投手の特別速くないストレートがこれほどまでに効果的な理由は、その「ホップ成分の高い、ノビのある球質」が要因だと考えられます。以下はBaseball Geeks (@baseballgeeksnb)さんの特集で昨年のドラフト指名投手のストレートを分析したものになりますが、岡野投手のストレートはプロの平均的な投手と比較して縦の変化量が大きく、シュート方向の変化量が小さい変化をしていることが分かります。

スクリーンショット 2020-03-20 2.07.16

これは元巨人・上原浩治投手や、阪神・藤川球児投手と近い性質を持っていると言えば分かりやすいでしょうか。岡野投手のストレートは球速こそないものの、打者からすれば想定以上にノビのあるボールのため思った以上に差し込むことができる、また高めへ投じたボールでは多くの空振りを奪えるポテンシャルがあります。

前述した通りストレートの制球に関してはコースの投げ分けは高い精度で実現できていると思いますので、「投球の軸」としては現時点で申し分ないように思います。即戦力ルーキーとして安定した投球を続ける上で、ノビのあるボールを再現性高く投げ続けられるかは調子のバロメーターになってきそうです。

②カットボール

スクリーンショット 2020-03-20 2.26.44

続いてカットボールですが、こちらはストレートに次いで多い16.3%の割合で投じられました。このボールではヒットを一本も打たれませんでしたが、その要因は球質云々より制球のバラつきによるところが大きそうです。対左打者へはインコースに食い込むボールとアウトローから入れてくるバックドア気味の軌道の使い分けの意図が見られますが、対右打者へは1球もストライクゾーンへ制球できませんでした。

岡野は右打者から逃げる軌道のボールを後述するスライダー、カーブとこのカットボールの3種類を投げ分けることで球速・変化量のバリエーションを付けていますが、その中でカットボールはもっともスピードが速く、かつ変化量が小さいためストライクゾーン内で勝負する必要性が高いボールです。

上記の記事にもあるようにプロ入り後にマイナーチェンジを施したボールでもあるため、まだ上手く使いこなせていないのかもしれません。ただ球質的にはスラッターのようにストレートと同じ軌道から鋭く変化するボールのため、今後上手く制球できるようになれば、ノビのあるストレートと共に「投球の軸」になり得るポテンシャルは高いように思います。

③フォーク

スクリーンショット 2020-03-20 2.41.17

続いてフォークです。この球種は投球全体の11.2%を占めましたが、対右打者への投球は限定的で、左打者の方に多く投げられました。比較的安定した制球で低めに集められており、ゾーン内に落としてカウント球として使うケースと、ゾーンの外へ落とし空振りを奪うケースと使い分けもできています。ストレートと同じ軌道からスッと落ちていく変化量の多さが武器で、少ない投球数ながら空振り率は60%を超えています。同じ軌道から逆方向へ変化するカットボールと対にして、特に決め球として機能するボールになるでしょう。

また岡野投手のフォークについては、ピッチャーマニアでありあのお股ニキさんの新著・ピッチングデザインにも携わっているばーぼんさん (@bourbon429)によると、握り的にはスプリットチェンジではないかとの指摘もあります。スプリットチェンジは最近、松坂投手が習得したことで話題になりました。

以下は上記記事より引用:
"あるメジャー関係者は「最近流行っている球種の1つですよ。特に村上のような左打者に対して有効です。球速はフォークとチェンジアップの中間くらいで、フォークが直角に落ちるのに対し、スプリットチェンジは左打者の外角方向へ逃げながら落ちます」と説明"

アマチュア時代からフォークとチェンジアップも両方投げ分けていた岡野投手なので、プロに入り持ち球を精査する段階で辿り着いたボールなのかもしれません。いずれにせよ落ちるボールは対左打者相手にはカギになるので、今後も注目していきたいと思っています。

④スライダー

スクリーンショット 2020-03-21 0.37.43

続いてスライダーです。こちらは先の球種と比較して投球割合が少なく、全体で9.2%に留まりました。対左打者へは内外角を効果的に使い分けられている一方で、対右打者相手にはゾーン内高めに浮いたボールをいずれもヒットにされています。

*上記の動画でロドリゲス、中川に打たれているボールがいずれも高めに浮いたスライダーです (2:11~2:35)

岡野投手のスライダーは先の3球種と比較してリリースしてからの軌道の膨らみが大きく、また球速も遅い「緩い」ボールのため、制球を間違えると痛打を浴びるリスクがついて回ります。基本的には大きく横滑りする変化で右打者からは多く空振りを取れるボールになり得ると思いますので、外角へ正確に制球することが課題になってきそうです。カットボールと同様に曲がる系のボールの制球には苦しんでいる印象ですが、開幕までには修正することを期待したいです。

⑤カーブ

スクリーンショット 2020-03-21 1.05.32

最後にカーブですが、こちらはわずか7球しか投げておらず、そのうち5球がボールになるなどここまでは殆ど機能していない球種です。7球中6球が初球に投じられていることからもわかるように、基本的には打者の意表を突いてファーストストライクを取りにいくためのボールのため、今後は限られた機会でも確実にゾーン内に投じる制球力が求められるでしょうか。

ストレートの軌道から大きく外れるカーブは投球のアクセントとして緩急を付けられるだけでなく、スライダー・カットボール系のボールを多投することで投球フォームが横振りになるのを修正する意味でも必要なボールです。岡野投手の場合は特にオーバースローから投げ下ろされるノビるストレートと落差の大きいフォークが武器なので、腕を振り下ろすフォームを維持するためにも重要なボールになるでしょう。

4. まとめと今後の課題

以上、岡野投手のオープン戦成績および投球データから、即戦力ルーキーの特徴について考えてみました。まとめると下記の通りとなります↓

・制球力抜群の投球で打者を牛耳る、即戦力先発投手。打球傾向、球質からフライボーラーの傾向あり
・対右へはインハイとアウトローの対角線、対左へは高低を使って抑えるのが基本パターン
・ストレートはホップ成分が高く、シュート成分が少ない「ノビる」ストレート。打者を差し込ませ空振りが多く取れる岡野投手最大の武器
・改良したカットボールは制球がイマイチだったが、スラットしておりゾーン内に制球できれば高い威力が期待できそう
・フォーク (もしくはスプリットチェンジ)は低めに制球されており、多くの空振りを奪える「決め球」として機能する
・スライダー、カーブは投球割合こそ少ないが、コントロールの精度を高めて投球のアクセントとしたい

また今後の課題としては、武器であるストレートの球威が落ちてきたときにどう対処するか?が挙げられます。素晴らしいノビのあるストレートを持つ岡野投手ですが、球数が嵩むにつれ徐々に球速・回転数が落ちこむことで持ち味のノビが失われ、中盤以降に打者に捕まる可能性が高くなるように思います。実際に先日行われた広島二軍との練習試合では、6回まで無失点に抑えながら7回に対戦した中村奨成選手に初球のストレートをレフトスタンドに運ばれています。

直近の対策としてはこの試合でバッテリーを組んだ郡司と試した通り、序盤は力のあるストレートを中心に組み立て、中盤以降は積極的に変化球を使うなど配球で凌ぐ方法がメインになりそうです。球速増やスタミナ面での向上と行った根本的な解決策は一朝一夕ではまず難しいので、少なくとも今季に関しては制球力と多彩な変化球を活用する「投球術」でカバーすることを期待しています。

以上、岡野投手についてnoteしてみました。

Yumaさんが分析した広島・森下投手のようなスケールの大きさ、華やかさと比べると見劣りするのも正直否めませんが、安定感ある投球で着実に実績を積み重ねる「職人タイプ」の選手として、中日の先発ローテーションを長く支えてくれる投手になることでしょう。

15年ぶりの新人開幕ローテーションもほぼ手中に収めた岡野投手の投球から、今後も目が離せませんね!

以上、ロバートさんでした。
ありがとうございました!

*データ参考:
> スポーツナビ (https://baseball.yahoo.co.jp/npb/player/1900039/top)
> 1.02 Essence of Baseball (https://1point02.jp/op/index.aspx)


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?