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「ロボット掃除機は便利である」という共同幻想

「ロボット掃除機によって家事の負担を下げられる」
「ロボット掃除機は時間の節約になる」
「ロボット掃除機は投資だ」

これらはすべて、嘘である。
メーカーのマーケティングによる詭弁であり、それに騙されたインフルエンサー達の妄言である。
実際に使ってみて「おお、これは便利だ」と思ったのも束の間、結局自分で掃除機をかけるに至っている私がその共同幻想に一石を投じようと思う。

ロボット掃除機の言い分

改めてロボット掃除機のメーカーとその取り巻きの言い分はこのようなものだ。

・自動で掃除機をかけてくれるので掃除の手間が省ける
・家にいない間に掃除しておいてくれる
・ごみも収集してくれるから捨てる手間もない

繰り返しになるが、これらはすべて詭弁である。
「ロボット掃除機の性能による」とか「家の大きさや間取りによる」とか「ライフスタイルによる」などといったこともない。
無条件でロボット掃除機には存在価値がない。

以降、その理屈を展開していこうと思うが、もちろん私はダイソンの人間でもなければロボット掃除機産業が廃れて何か利益がある人間ではない。
あくまでも消費者としての使用レビューだ。

ロボット掃除機の圧倒的な欠点

ロボット掃除機は「手で掃除機をかけていた時間」を「ロボットが代わりに行う」ことでその分の時間が節約できるという論法でメリットを謳っているわけだが、まずこれが最初のトリックだ。
「手で掃除機をかけていた」の中には厳密には次の作業が含まれている
・掃除機をかける
・障害物をよける(持ち上げて下を掃除する)
・気になったところは繰り返しかける
・ごみを捨てる
・部屋を移動する
このうち明確に代替できているのは
・掃除機をかける
のみである。
このトリックこそ、ロボット掃除機メーカーの最大の嘘なのである。

障害物を避けるという罠

ロボット掃除機の課題として大きいのは家具をどう避けるかという問題だ。
これについて
傷つけられたくないからあらかじめ掃除の前に片づける
という人も多い。高級な家具であればガンガンぶつけられたくないのはもっともだろう
まずこの時点で本末転倒だ。
家具だけではない。人間が生活すると床にはいろいろなものが置きっぱなしになるから、それらを掃除前に片づけるとなると相当な時間がかかる。

例えば私の場合、リビングにあるカフェテーブルは掃除機をかけようと思った時点でその上にはモノが散乱している。

出しっぱなしのモノを片づけてからテーブルをどかす必要がある

この「あらかじめ家具やモノを避けておく」という作業時間で掃除機がかけられてしまうほどだ。

そしてこれに対してロボット掃除機側からは「上位機種であればセンサーでぶつかるまえに避けられる(なのでどかさなくてよい)」というロジックで対抗してくるが、そんなもんなんの屁理屈にもなっていない。
家具以外にも床にモノが落ちているというのは先述の通りだし、
そもそも家具の下も含めて掃除したいから、避けてはいけないのだ。
結局後で椅子の下とかを別途掃除機をかけさせられる羽目になる。

家にいない間に掃除してくれるという罠

これは嘘ではないが、重要なことを隠している。
「じゃあ、家にいる時はどうすんのか」
ということである。

ロボット掃除機にかかわらず、掃除機というのは(たとえ静音設計の上位機種であっても)相当うるさい。
まともな人間であれば、作業や仕事をしているときに横の部屋でも掃除機をかけられるとめちゃくちゃストレスを感じる。
そして、ロボット掃除機の大きな欠点として
掃除時間が長い
というものがある。
これは、人間のように「この辺はもうちょいやっとこう、この辺はもういいや」といった感覚での判断が難しいために掃除残しがないように同じところも繰り返し掃除せざるを得ないからであるが、家にいるときに1時間も横で掃除機をかけられてはたまったものではないのだ。
よってこれまでの理屈を組み合わせると
・家にいるときはうるさいから自分で掃除をする
・家にいない時も事前準備と終わった後の仕上げを自分でする
→結局ほとんど自分でやっている
ということになる。

「ごみを捨てなくてよい」の罠

最新の上位機種になると、ゴミを自動で吸い上げてステーションにとどめておくので頻繁にゴミ捨てが不要という機種も多く出てきている。
ここで、よく考えてほしい。

「ごみ捨ての面倒くささ」は「ロボット掃除機が作り上げた面倒くささ」である。

例えば私の家は手動掃除用にコードレスのダイソンを使っているのだが、この掃除機は、ゴミ捨てが全く面倒ではない。「ポチっとな」で終わるからである。

ロボット掃除機はその特有の背の低さ(かがまないといけない)とごみ溜めの構造(取り外してごみを捨てた後に取り付けなおさないといけない)がゆえにゴミ捨てが面倒になっているのだ。
そう、ロボット掃除機でなければそもそもゴミ捨てはワンタッチで出来ている。
つまり「ごみ捨てが楽」とはマッチポンプもいいところ、自分で作り上げた面倒くささを自分で解消しただけである。

「ロボット掃除機は便利である」っぽいだけ

最終的にはそれぞれのパターンで時間を計って比較してやろうかとも思ったが、面倒くさくてやめた。
その時によって部屋の状況は違うし、人によっても環境が違うからあまり役に立たないと思ったからである。

ただ私が言いたいのは、現時点のテクノロジーにおいては先述の理由で
ロボット掃除機は別に便利ではない
という真実である。

ロボット掃除機が
①事前に片づけて家具を掃除用に配置
②長時間の非効率な自動掃除開始
③避けていた家具を再配置

という手順であるとするなら、手動掃除は
①家具やモノを避けながら掃除
で完了である。
この大原則を忘れてはいけない。

メーカーのマーケティングや意識高い系の妄言に騙されてはいけない。
キチンと自分の頭で、自分の家の場合は便利なのかを考えたほうがいい。
インターネットとSNS時代の共同幻想というのは、恐ろしいものである。

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