見出し画像

インフルエンサーが動かした時価総額60億香港ドル「中国、新東方エッセイ事件」

年末は、約3年ぶりに中国と香港出張に来ています。
今回、一人のインフルエンサーが企業の時価総額に、およそ60億香港ドルもの影響を与えた、最近中国で話題になっている事件について現地スタッフと話が盛り上がりました。(日本円に換算すると、な、なんと、約1100億円!)


「中国、新東方エッセイ事件」の経緯

中国の教育大手、新東方の子会社である「東方選抜」は、ライブコマースを通じた売り上げで大成功を収めていました。しかし、その成功を支える裏で、一つの投稿が大きな波紋を呼び起こすことになります。
TikTokで1,400万のフォロワーを誇るインフルエンサーの董宇辉さんは、新東方のライブコマースのキャスターのひとりで、その魅力的な表現で人気を博していました。(下の画像で左に写っているのが董宇辉さん。右側が新東方のCEO)

YouTube"王局拍案20231221"より

米国タイムズ紙も報じるほど、董宇辉さんはそのカリスマと影響力で東方選抜のブランド価値の大部分を占めています。

一連の騒動は、2023年12月にはじまります。
中国吉林省で行われた「東方選抜」のライブコマースで、3日間の生放送を成功させ、売り上げは2.67億人民元(約534億円)に達しました。

(董宇辉さんの活躍に内部のスタッフがやきもちを焼いたのか)
12月6日東方選抜のスタッフが、彼がライブコマースで話す内容(エッセイ)は、彼個人ではなく、チームの努力によるものであると投稿したコメントが火種となります。
このコメントは瞬く間に拡散し、SNS上で激しい議論が巻き起こりました。その結果、多くのフォロワーが東方選抜から離れ、競合他社へと流れるという事態に。そして、12月10日には董宇辉さんが生放送をキャンセルする事態に至ります。

さらに、董宇辉さんが休暇中だった12月13日、CEOの孫東旭さん(上↑の写真の右側の男性)がライブで対応を試みましたが、これがさらに状況を悪化させました。孫さんはイライラして様子で携帯をテーブルに投げるなど、消費者心理を見誤った対応をしてしまいます。

この一連の出来事は、新東方の株価に深刻な影響を及ぼし、論争の発端からわずか数日で、株価は19.6%も下落(時価総額約60億香港ドル)。事態を受けて、孫さんは改めて自身のSNSでこの事件がもともとは社内の小さな問題であったものの、適切な対応がなされなかったために世論の波紋を呼んだと述べました。編集長のやり方はプロ意識を欠いたもので、会社の経営に抜け穴があることを露呈しました。

この結果株価がようやく回復しました。

中国が警戒する「饭圈文化」

この桁違いの炎上事例の背景には、中国特有の「饭圈文化」の存在があります。これはファンサークルのことで、ファンがアイドルやインフルエンサーを支えるためにさまざまな役割を果たします。中国では今「饭圈文化」がもたらす非合理的なファン行動や、現実のルールからの逸脱に対する懸念が高まっています。

「饭圈文化」のような強力なファンベースが存在する現代では、たった一つの投稿が瞬時に大きな影響を及ぼす可能性があります。企業や個人は、このような文化の流れを理解し、適切な戦略を立てる必要があります。もちろん危機を好転させ、より透明で信頼性の高い企業として再出発することも可能です。


最後にこの記事を読んでいただいている読者の皆様、今年も大変お世話になりました!note読んでるよーと声をかけてもらうのがとても励みになりました。新年が皆さんにとって成功と幸せに満ちたものになることを心から願っています。良いお年をお迎えください!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?