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ガンジスのチーズナンで飛ぼう

以前よく訪れていたインドカレー屋が閉店してしまいました。

基本的に1200~1500円が相場の中、最安値のチキンカレーなどはサラダ付き800円という破格で提供されており、その他のメニューも概ね1000円前後という良心的な価格。

多くのインドカレー屋と同じく、ナンは無制限おかわり自由。ただ、多くのインドカレー屋と同じく、無制限と言われても、2枚も頼めば腹が破裂しそうになるので、結局は一度しかおかわりはしない。

例のアレの時期あたりから営業時間が短縮され、とうとうディナーの営業がなくなり、職場の休憩時間とも合わなくなっていたため、自分もあまり行かなくなっていたのですが、少し前に久しぶりに顔を出そうと思いきや、まさかのシャッター全おろし。しかも貼り紙によると、もう2ヶ月ほど前に店を畳んだとのこと。

あの、昼間から厨房の後ろでビールをかっ喰らっているインドから来た皆様(ネパールから来たのかもしれんが)は、どこに去ってしまわれたのか。

思えば、最初にインドカレー屋というものの独特な雰囲気にハマったきっかけは、この店だったはず。ただただ寂しい。

インドカレー屋の雰囲気とはどのようなものかというと、意外にも、わりと静かです。

なんとなくインドの民謡っぽい店内BGMをかけているところもあるにはありますが、そういうところでも音量は小さめだし、自分が今まで入ったところを振り返ってみれば、無音のことのほうが多いです。

テレビが点いていても、音声はミュートだったりする。そこで流れているのも別にインド映画とかではなくふつうの地上波の番組で、ただダラダラと垂れ流しているだけという感じ。

個人経営の店なんかだと、店主がふつうにテレビに視入っていたりしますが、インド人さんは日本の番組に全く興味がなさそうで、ただひたすらにスマホを弄っている。

スマホで何を見ているのかはわからんが、とにかく熱心に弄っている。モンストでもやっているのだろうか?テレビ離れは日本人だけの話ではない。インド人(ネパール人かもしれんが)の間にも起きている。

で、これは昼の3~4時に飲食店に入るとよくあることですが、だいたいサスペンスドラマが流れているため、監察が死後硬直の時間を調べている映像を見ながらごはんを食べる羽目になってしまう。

少し前に訪れた某店がまさにそれで、これはガラガラの店内で、スマホに夢中の店主とスクリーンに映し出される死体を肴にカレーを食べさせられるなあ、と。せっかくのインドカレーを楽しむのに、それはいかがかものか。

チャンネルを替えてもらえばいいことですが、どうせこの時間帯ではワイドショーばかりだろうし、たぶんジャ○ーズ事務所に関する報道ばかりで、それはそれでうんざりしそうだなあ……。

などと逡巡するも、いざナンを食べ始めると、そんなことはどうでもよくなってしまいました。たとえ目の前の景色がどんなものであろうが、インドの窯でグツグツ煮られたものが自分の体内に取り入れられた瞬間から、心はもうインドなのです。

飛行機に乗らずとも、インドへと飛べる。食を通した海外旅行。ただスマホを弄っているだけの店主が一気に神々しく見えてきて、平伏したくなる。うちは浄土真宗なのだが。

この感覚は、慣れ親しんだ日本の料理の店ではなかなか得られないもの。日本にインドカレー屋がたくさんあって良かったと心から思う。

しかしながら、インドカレー屋というのは、最初はどこか入りづらい雰囲気があります。

店の前で店員さんが熱心にビラ撒きをしているのはよく見かけるし、今やどの地域を歩いても見かけますが、正直なところ、みんな次々に店に入っていって、すごく繁盛して賑やかなインドカレー屋というものを一度も見たことがない。

イオンなどの大型商業施設に入っているようなところであっても、どういうわけかいつも空いている。同じフードコート内のマクドナルドや丸亀製麺には行列ができているのに、インドカレー屋にだけ人がいないなんてこともざらにある。

最初に述べた店も、駅から近い複合施設の中にあって、立地条件は申し分なかったはずなのに、あえなく閉店してしまった。インドカレー屋が減るのはつらい。

というわけで、最後に、我がテリトリーである北大阪地域の、もっと繁盛してほしいインドカレーの名店をここでひとつだけ紹介します。箕面市にある商業施設「みのおキューズモール」内にある「ガンジス」という店。

最初に訪れた時になにげなくチーズナンを注文したのですが、このチーズナンがすごい。やばい。ガンジス川の匂いを感じる。ガンジス川がインドのどこにあるのかよく知らんが、なんかガンジス川を感じる。

大抵のインドカレー屋は、ナンが皿をはみ出してまるごと1つ乗っかっているものですが、ここのチーズナンは、3~4枚にスライスされた状態で出てきます。ちなみに、一般的にはチーズナンは通常のナンの価格より数十円の上乗せがありますが、ここはチーズナンにしても通常のナンと同じ値段。

そして、とにかくチーズがめっちゃとろける。うっかり指に付いちゃうとくっついて離れなくなってしまうくらい、めっちゃとろける。

最初からこんなに飛ばしまくっているので、口に運べば舌の上でさらにとろけまくる。もうこれルゥいらねえんじゃね?とまで思うが、それだとインドカレー屋に来た意味がない。

そして、ルゥを付けてさらにナンをとろけさせると、空から頭上に煌びやかなターバンが降り注ぎ、気づけばインドを超えて宇宙空間に飛び出している。嘘ではない。試しに行ってみてくれ。

店主は日本の飲食チェーン店の基準からすればぶっきらぼうに見えてしまうかもしれませんが(まあぶっちゃけ、大抵のインドカレー屋の人はそういう感じだけど)、めっちゃ水をくれるし、たまにおまけのオニオンスープとかを作ってくれる親切な人です。

みのおキューズモールは現在は車でないとアクセスしづらい立地にありますが、来年には北大阪急行電鉄が延伸され、モールに直通の箕面萱野駅が開業し、行きやすくなります。

その際には是非とも「ガンジス」でチーズナンを注文してみてくれ。飛ぶぞ。長く頑張ってほしい店である。

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