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あなたの知らない「完封サウナポーズ」の世界

「完封サウナポーズ」をご存知だろうか。
先日、とあるきっかけから、「尊きことは残さねば」との思いを強くし、衝動のままにこの投稿を書いている。

俺たちには、未来(あした)に遺すべき記憶がある。


「完封サウナポーズ」とは

「完封サウナポーズ」とは、関西ローカル局「サンテレビ」の情報番組「キャッチ+(プラス)」でかつて放送されていたコーナー「完封サウナ」の決めポーズである。「完封ポーズ」とも呼ばれる。
「完封サウナ」第1回放送(2022年10月6日)において、スタジオからVTRへの前振りで、当コーナーのメイン出演者であり阪神タイガースの元エース投手である井川慶により披露された。

「完封サウナポーズ」のやり方

これが「完封サウナポーズ」だ!

・「完封~…」と唱えながら、胸の前あたりで両拳を前方向にぐるぐると回す
・「サウナ!」の掛け声とともに、両手を胸の前でクロスさせてポーズを作る
 このとき、手の形は左右とも親指と人差し指のみを立ててL字にする(メタルポーズとは異なる)
 右手側が前(相手側)にくるようにするのが正式と言われている

このポーズは放送内で、同じく当時木曜レギュラーとして共演していた元宝塚歌劇団の壱条あずさが考案し、コーナー直前のCM中に井川に指南したものと説明されている。

はにかみながらポーズを決める井川がサウナーの心を射止め、温浴施設では完封サウナポーズでの写真撮影がコアなファンを中心に流行。「ととのう」という表現に飽きたサウナーが「完封する」に乗り換えるなど、局所的ながらブームを巻き起こした。

なお井川本人は、第1回放送以降、番組で完封サウナポーズを披露していない。


【おまけ】ここからは補足情報

「サンテレビ」とは

「サンテレビ」とは、兵庫県神戸市に本社を置くローカル地上波テレビ局である。

サンテレビは、井川慶が所属していた地元球団、阪神タイガースとの関係性が強い。「サンテレビボックス席」という野球中継は局の看板番組のひとつで、「全試合・試合開始から終了まで、完全生中継」「スコアブックの書ける中継」をうたい、ホーム・ビジター問わず、多くの阪神戦で生中継を見ることができる。試合が長引いた場合は、何時間もつれこんだとしても、後の番組は容赦なく後ろにずらされる。中継を優先するため、CMも短いという特徴がある。

筆者は、関西人に阪神ファンが多い理由のひとつに、「サンテレビがずっと阪神戦を中継してるから」という要素があると考えている。

「キャッチ+(プラス)」とは

「キャッチ+」とは、サンテレビの夕方情報番組。正式名称は「NEWS × 情報 キャッチ+」。2021年4月から放送中。2024年4月現在の放送時間は、月曜から金曜の17:05から18:00。地域密着色の強い番組作りで、地元神戸を中心に支持されている。

「完封サウナ」とは

「完封サウナ」とは、かつて放送されていた「キャッチ+」内の小コーナー。「完封サウナポーズ」はこのコーナーで生まれた。

コーナーの内容は、当時番組の木曜レギュラーであった元阪神タイガース投手の井川慶が、自身の趣味であるサウナをテーマに、神戸市内の銭湯サウナを訪ね紹介するというもの。サウナ→水風呂→休憩の後に訪れるととのいを、完封勝利したときの爽快感に重ねて「完封サウナ」と名付けられた。初回放送は2022年10月6日。放送回数は17回。

ロケでは、「サウナ・スパ プロフェッショナル」の資格を持つタレントの中上恭子がナビゲーターとして同行し、訪問先の銭湯の魅力を解説する。
中上の的確な施設紹介と色っぽい入浴シーンに対する井川のぎこちない表情と棒演技のコントラストが、瞬く間にファンを虜にした。

銭湯1軒の紹介は3~4回の放送回に分けて行われる。サウナ、水風呂に入るプロセスを紹介する中で「完封メーター」が徐々に上昇し、メーターが頂点に達すると、最終的に井川が「完封…」とつぶやきながらととのう、というのがお約束となっている。

なおVTRは1分程度と非常に短いコーナーで、たいてい前後のスタジオトークの方が長い。

これまで17回の放送で訪れたのは、森温泉、萬歳湯、つかさ湯、二宮温泉、東湯の5軒。2023年3月以降、新しい放送は確認されていない。
過去の放送リストは、YouTubeで視聴可能となっている。

「井川慶」とは

井川 慶(いがわ けい)は、茨城県東茨城郡大洗町出身の元プロ野球選手。1979年生まれ。左投げ左打ち。ポジションは投手。愛称は「だっぺ」。

水戸商業高校から1997年ドラフト2位で阪神タイガースに入団。背番号は29。当時タイガースの二軍監督であった岡田彰布の指導を受け頭角を表すと、2年目の1999年に一軍で初勝利。2001年からは一軍先発ローテーションの一角を担う存在となった。

ダイナミックなフォームから繰り出される最速150km/h超のストレートと落差の大きいチェンジアップ、スライダーを武器に、左の本格派として活躍。

全盛期には奪三振の山を築き、三度の最多奪三振を獲得。「虎のドクターK」の異名を馳せた。2003年にはキャリアハイの20勝を挙げ、最多勝、最優秀防御率のタイトルに輝く。チーム18年ぶりのリーグ優勝の立役者となり、名実ともに絶対的エースとして君臨した。同年、MVP(最優秀選手賞)と沢村賞を受賞。(なおこれ以降、2023年シーズン終了に至るまで、セリーグでは20年に渡り20勝投手は出ていない。)

投球技術だけでなく、ロングイニングにも耐えるスタミナを備え、タイガース在籍時代は35度の完投、15度の完封を記録。さらに、2004年にはノーヒットノーランも達成している。

完投:
先発投手が試合終了まで1人で投げ切ること

完封:
先発投手が完投し、かつ無失点で勝利すること

ノーヒットノーラン:
先発投手が完封し、かつ被安打なしで勝利すること

2006年オフに、ポスティングシステムを活用しMLB(メジャーリーグ)挑戦を表明。名門、ニューヨーク・ヤンキースに5年契約で移籍した。しかしヤンキースでは成績が振るわず、後半3年間はマイナー生活を余儀なくされた。

その後2012年シーズンに日本球界に復帰。オリックスバファローズに入団。タイガース時代の恩師である岡田彰布監督のもと、先発要員としてプレー。その後2015年に戦力外通告を受けバファローズを退団するも、井川本人は現役を指向しトレーニングを続けた。

2017年に独立リーグの兵庫ブルーサンダーズ(現: 兵庫ブレイバーズ)へ入団。2年ぶりにプロ復帰を果たすと、最多勝・最優秀防御率・最多奪三振のタイトルを総なめにし、元メジャーリーガーの片鱗を見せつけた。シーズン終了後、契約満了により退団。

井川はブルーサンダーズ退団後、主に野球解説者として活動しているが、2022年時点ではプロ復帰を諦めていないという主旨のコメントを残すなど、現在に至るまで公式には「引退」を表明していない。

2024年現在、完封サウナの新規収録は確認されていないが、キャッチ+には引き続き、金曜レギュラーコメンテーターとして出演中。2024年3月までは、「完封サウナポーズ」の生みの親である壱城あずさと共に、「兵庫★スター食材図鑑」のコーナーを担当していた。

なお井川は、逸話から都市伝説まで、場外のエピソードにも枚挙にいとまがない選手として有名である。本稿では取り扱わないが、詳しくは「井川慶伝説」で検索されたい。

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