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「未来の音が聴こえる」という曲がなぜラブライブで優勝できたか考察してみる

はじめに

 ちょっと前に『未来の音が聴こえる』という曲がなぜ優勝できたのか、という考察ポストを勢いで書き、沢山の人に読んで頂き大変ありがたかったのですが、個人的にはあまりにも殴り書きのような内容でテンポや転調の部分の説明が間違っていたところもあったので清書も兼ねてのリライトです。
 そもそもなんで今更そんな考察をしようと思ったのかというと、X上で「なんでこんな弱い曲が勝ったのかわからない」っていう疑問というか不満(実際はもっと攻撃的だったけど)を見かけたのと、
 自分でもおとなしめのSing!Shine!Smile!の次にあえてこの曲、っていう所が意外に思っていたので「Liella!が優勝した理由」を改めて考えようと思った次第です。
(音楽知識の部分は素人に毛が生えた程度なんで間違ってたらごめんね)



まず「勝てないと思われた理由」を考察する

一番大事なのはなぜこう思われたのか、を考えること。
 ラブライブ優勝には具体的な基準があるわけではないので、音楽としての優劣を決める基準はせいぜい過去の曲と比較するくらいしかできません。その人の中では恐らく「過去に優勝した楽曲と比べて違う」という点からこの疑問が生まれたと考えられます。
 また、この人が勝ち負けの基準にしていたのはこのアニソン界隈でよく使われる「強い曲」かどうか、というところがあるかなと推測できます(そういうのが好きそうな人が言ってた)
 ぼく個人としては「強い曲」というのは定義もあいまいで、ごく個人的な感覚、ごく限られた観点のみで音楽を比較し、自分が盛り上がれるかどうかだけで音楽の序列を決めているに過ぎないワード、という認識です(好きな人がいたらすまん)
 一応、「強い曲」でググっても該当する内容が出てきませんでしたので、この後から出てくる「強い曲」の定義をしておきましょう。『強い』と言われている楽曲を調べていくと、おおむね以下のポイントで「強い」か「弱い」が決められると思っています。

①テンポが速い
②ビートが効いている(低音が効いててノリやすい)
③コーレスがある
④セリフがある
⑤エモい(切なく聞こえるパートが用意されている)

こんなところでしょうか。もっとも大事なのは①、②、③で、残りはあればよしって感じだと思います。
まとめますと、「今までのラブライブ優勝曲と比べて、『弱い曲』だと思ったから優勝できないと思った」というのが、具体的な先方の言い分ということで設定しましょう。

改めて『未来の音が聴こえる』聞いてみよう

 曲を聞き、特徴を把握するところから始めるのが肝要
※(本項はおまけ感強いので読み飛ばしてもらってかまいません)

 リズムはごく普通の4拍子、S!S!S!みたいな途中でのリズムチェンジもないので王道といえますね。というより当たり前のようにチェンジしちゃうLiella!楽曲がおかしい。普通はしないんですよ。難易度上がるから。
 BPM(テンポ)は少し特殊で、全体としては168くらいでLiella!楽曲の中では実は早めなほう(数字が高ければ早い曲と考えてもらって大丈夫です)ただ、イントロ~サビ前までは半分の84、サビから倍(本来)の168になるって少し複雑な曲。サビに爆発感が出る感じかな。ただ僕もこのあたり詳しくないからちょっと変わった曲という認識にしておいてください。有識者助けてくれ。
 ちなみにグループ全体曲(μ's、Aqours、ニジガク、Liella!、蓮ノ空)のうち、平均的に速さをざっくり聞いてみたところLiella!が全体的にミドルテンポ多めな感じです。
 楽曲アレンジはストリングス(弦楽)がメインに据えられていて、ギター、ベース、ドラム、ピアノ他諸々。イントロのマンドリン(多分)が入るだけでなぜか民族音楽感が出てて伝統的というか、すごくクラシカルに聞こえるのが面白い。そのくせ間奏はエレキギターのソロが爆発するんだから何でもありって感じですね。でも全体的に優しいつくりですごく上品な曲。 
 Aqours(幻ヨハ)もストリングスを使っているけど全楽曲における使用頻度は体感、Liella!が一番多い気がします。また、やや分かりづらいですがサビで転調しています。騙されました。テンポチェンジもそうですが、本来なら「どうだ!」とやる所をあえて隠しているように見える。派手なつくりではないですが、かなり手の込んだ楽曲という認識です。

過去の優勝曲と比べてみる

さて、未来の音が聴こえる、って曲がどういう曲かは把握したとして、
次に今までの優勝曲と比較していきます。

①今までの優勝曲ーキラセン&WBNWとの比較ー歌詞について


一つ目はこれ。歌詞を読むと分かるんですけど、キラセンは今(決勝)という舞台に立っていることが奇跡であり、その感謝を歌う曲。WBNWも未来へ向かうために「イマ」を刻む曲
一方で未来の音が聴こえるはその名の通り、未来(はるか遠く)を目指す曲。留学で悩んでいたかのんへのエールの側面もあるかな。前2曲と表現しているものが違います。

②今までの優勝曲ーキラセン&WBNWとの比較ー楽曲について


 二つ目の違い。2曲との比較で一番最初に出てくる違いはテンポでしょう。
 キラセンはBPM195くらいでかなり早めだし、WBNWは175くらい。未来の音が聴こえるは168なので、WBNWとは数値が近いじゃん、って一瞬思いますが、ドラムの存在感が全然違う(主張が強い)ので、楽曲としての疾走感がだいぶ違います。キラセンは言わずもがな。つまりこの2曲はノれる曲、といったところでしょうか。相対して未来の音が聴こえるはどちらかというとしっとり聴かせる曲、になるかと思います。
 前項で説明した転調についても触れておきます。キラセンは転調なしで素直なイメージ。WBNWは10回以上転調するかなり特殊な曲で、転調することで楽曲が展開していく、転調そのものが鍵となっているような曲でテクニカル。
 一方、未来の音が聴こえるは意識しないと見逃すような鮮やかな転調。ことさらに「変わった」ことを主張しないので違和感なくメロディーに集中できます。こちらも方向性は違えどテクいな、という感じ。仕上がり方は先の二曲と比べて劣っていません。

比較を踏まえて優勝できた理由を考察してみる

 上記の情報を踏まえて、優勝できた理由を考察していきたいと思います。
ここからは作中にある情報だけでなく、メタ的な視点(我々の世界から見えるラブライブシリーズの情報や、現時点でのアニソンシーンの流行り)も取り入れて進めていきます。あと、音楽の評価者=アニメ世界のラブライブファンとし、特定の審査員はいない前提で進めています。実際のコンテストだとファン投票しちゃうと正当な評価が下されずに崩壊しますが、この世界のファンは良識と音楽の基礎的な知識があるのでなんとかなる。

①作中の世界は「強いか弱いか」で音楽の良し悪しを判断する世界ではなかった

 これは優勝した理由、というより、そもそもの音楽の良し悪しを決める前提条件ですね。でも、これを理解していない人は結構いるんじゃないかな。
 作中の世界に限らず現実世界でもそうですが、強い曲=良曲、弱い曲=駄曲だったらローテンポの曲は軒並み駄曲扱いです。でもそうじゃない。ラブライブは音楽ジャンルを定めている大会ではないので、勝つための絶対条件ではないのでしょう。
 今までは一部のオタクの言う「強い曲」が、結果として勝っていましたし、他シリーズで勝ってきた曲をみると「強い曲」が勝ちやすい、と推測はできますが、「強い曲」じゃないと勝てない、ということではなさそう(キラセンなんかはいわゆる強い曲から少し定義はずれてる気がするし)
 もっとも、ラブライブワールドには「強い曲」であれば勝ちやすいのだから、大会にはそういった曲で溢れていることも予想できます。我々がいる現実世界でも、オタクの界隈では「強い曲」は好まれていて、そういう楽曲が増えている傾向はあると体感で感じています。
 音楽の評価においては、オリジナリティというのは非常に大事です。
 似たような『強い曲』が溢れかえっている中、「未来の音が聴こえる」という曲でLiella!が殴りこんできたら?どういう反応が出るか、想像に難くないと思います。往々にして、何事も「いままでにない」ものは目を引くので。

②「未来の音が聴こえる」はLiella!にしかできない音楽だった

 二つ目。Liella!楽曲の特徴として、「瞬きの先へ」「名前呼びあうように」「リエラのうた」そして「未来の音が聴こえる」各楽曲のように『ロー~ミドルテンポ、ストリングスで編曲した優しく歌い上げる楽曲』が多い、という点が挙げられます。他シリーズでは、グループ単位ではほぼないです(現時点では)メタ的な視点でいうと、現実世界のアイドルものの作品ですらほぼ聞きません。
 他シリーズがなぜやらないのか、という所は主題から外れるので書きませんが、こういった楽曲ができるということは9人のLiella!の、この時点での強みであることは間違いありません。そもそもこういう楽曲が全シリーズ通してほとんどないわけですから。
 流行りの「強い曲」で皆がシノギを削っている中、そこに合わせず悠々と流行りガン無視の、自分たちの得意武器で大会のステージに上がってくるわけですから、衝撃は計り知れません。楽曲のクオリティの高さは先に説明した通り。この楽曲の存在そのものが、「強い曲」の溢れてかえっている音楽シーン(我々現実世界のアニソンシーンさえも)へのアンチテーゼ、強烈なカウンターになっている気がします。この世界の人たちはそこに気づいたんじゃないかな。

③今までの優勝曲との歌詞の違いー「今」と「未来」

 最後におまけですが歌詞の違いを。①、②で音楽として、今までの流行りものとは全く違うものが出てきていた、という考察をしてきましたが、歌詞も同様です。
 キラセン・WBNWは「今」を歌う曲。一方、「未来の音が聴こえる」は「未来」を歌う曲。μ'sとAqoursは三年生の卒業や廃校問題もあるので「今」を刻む楽曲は説得力のある表現、といえますが、Liella!は留学という別れはるけど、それをバネにして聞いている人にエールを送ってる。ものすごく前向きなんですよね。
 今まで優勝してきた楽曲とは詞の部分でも大きく違うことが見比べると分かると思います。楽曲を通して伝えたいことが全然違う。
 また、これは僕のおまけのメタ視点での考察ですが、コロナ禍真っ只中の暗い世の中で、Liella!らしい、やさしさに溢れた応援歌をメッセージとして送り出したい、という気持ちが制作陣にはあったと思います。

結論

 いくつか理由を述べてきましたが、「今までと違う、オリジナリティのある楽曲」で、評価者が音楽を強い・弱いで判断する人じゃないから当然大会で「勝てる」よねってことです。もっとも、今まで勝ってたきた楽曲も「そのグループらしさを表現した」結果、テンポが速くなったりやビートが強くなってただけで、そういう曲じゃないと勝てない、ってわけではないと思います。というより、そんな特定のテンポやビートのオリジナル曲でないと勝てない・勝ち方の決まっている大会は、大会としてクソです。
 楽曲の良し悪しを強い・弱いだけで判断する人には「未来の音が聴こえる」の良さは理解しがたいかもしれませんが、聞く人が違えば評価点は沢山あります。音楽って色んな種類があって、それぞれ良さがあるので色々な音楽を聴くことをお勧めします。アニソン以外で楽曲を強いとか弱いって評価しているのを聞いたことがありません。
 なんにせよ、Liella!らしさに溢れた曲は実はみんなが想像以上の武器で、勝負をしに行って勝った。そして、評価者はオタクが好きな曲を評価したのではなく、オリジナリティを評価したのでは?って考察でした。

おわりに

 なんか相変わらず長いな。本当はもうちょっと「強い曲」信仰みたいなのを批判してたんだけど、あんまり攻撃的になるのも良くないと思って変えました。なんとなくで使っている人もいるだろうし。アニソン界隈独特の表現ですよね。他で聞いたことない。でもこういう「強い」と言われる曲がコロナ禍中~コロナ後からすごくもてはやされるようになった気はします。みんな声出し我慢してたしな。
 ただ、あくまでもアニソン界隈の音楽シーンの流行り、って気がしてるので気づいたらブーム終わってるかもしれないですね。シーンの行く末は誰にも分りませんが、もっとLiella!の楽曲は評価されてもいいよね。
 ちなみに「未来の音が聴こえる」のような楽曲がウリ、っていうのははあくまでも9人のLiella!で、2期最終話時点での話。今は人数も増えたし、楽曲の方向性も広がったので、次の大会では全然違う曲で優勝しに来る可能性は十分あります。その時は許してくれ。以上。


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