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VIVA!『プラダを着た悪魔』

Amazon primeで『プラダを着た悪魔』を観た。
メリル・ストリープが一流ファッション雑誌『ランウェイ』の編集長ミランダを、アン・ハサウェイがそのアシスタント、アンディを務めるという映画。上映された当時はかなり話題になったから、タイトルを知っているひとも多いと思う。
アメリカン・ヴォーグ誌の名編集長、アナ・ウィンターがモデルとなった作品だが、公開が2006年と知って驚いた。そんなに経っていたのね。

これを観ようと思ったきっかけは、ニューヨークのメトロポリタン美術館の衣服に関するキュレーターのドキュメンタリーを観たから。彼は、子供の頃からこの職に就きたいと願っていて、今もこのポジションを得たことを信じられないと話す。天職だと思っているそうだ。
そのドキュメンタリーの中に、メット・ガラに関してアナ・ウィンターと打ち合わせをするシーンがあって、これがあの『プラダを着た悪魔』のモデルだ!と興味津々で観た。

メット・ガラとはメトロポリタン美術館が5月の第一月曜日(メットガラマンデーというそう)に主催するファッションイベント。数年前に、大坂なおみ選手も参加していたことがある。
私はこのイベントの趣旨を知らず、奇抜なファッションを纏ったセレブの集まりくらいに思っていたのだが、実はそうではなかった。

1995年からこのイベントのチェアパーソンを務めるのがアナ・ウィンターそのひとで、このイベントはメトロポリタン美術館服飾研究所への活動資金を集めるチャリティ・ガラだったのだ。
メトロポリタン美術館といえども絵画や彫刻といった美術品に比すると、服飾への扱いや関心は低く、その一方で被服には維持管理に多額の費用がかかる。繊細な生地やビーズをあしらったものなど、取り扱いに非常に注意を要するものも多い。
この費用を捻出するためのイベントがメット・ガラで、招待チケットは現在5万ドルだという!しかも、アナ・ウィンターが招待客リストに首を縦に振らないと参加できないのだとか。

要はアナ・ウィンターの美意識に叶った、かつその高額のチケットを買えて、毎年のテーマに添う相応のドレスを用意できるセレブリティのみが参加できるイベント。
なんともゴージャスなこと!
しかも、レッドカーペットを歩くシーン以外の内容は非公開だそう。

そこまで知ると、俄然『プラダを着た悪魔』に興味が湧いてきて、Amazon primeで観たというわけ。
元々かなり過酷な業界であり、しかも鬼編集長(メリル・ストリープ)にこき使われるファッションにまったく興味がない新人アシスタント(アン・ハサウェイ)がダサい服装から一転して華麗に変身していくところは見物。しかも衣装が本当に素敵なのだ。
美意識の高さ、体型を維持する弛まぬ努力、仕事に対する情熱、どれをとってもトップレベルで、今どきのワークライフバランス重視の生き方とは正反対ながら、これぞトップレベルを維持する原動力なのだと思わせる。

この業界の片隅にほんの数年片足を突っ込んでいたことがある私には、少しだけそのクレイジーさがわかる。
若かったからできる働き方で、それを70代になっても続けているアナは、文字通り超人なのだろう。1988年から現在まで編集長を続けていることからも明らかだと思う。2008年には母国英国からDAMEの称号を授けられている。

今はワークライフバランス大賛成!と思っている私も、やはり情熱を傾けて成し遂げる仕事は、ワークライフバランス重視では生まれないのだろうな…と思う。
日本がジリ貧になっている原因は、コスパとかタイパとか言ってるその辺りにあるような気がするのよね。うん。

『プラダを着た悪魔』は純粋に面白かったです。
ちなみに、この映画が公開されたときにアナ・ウィンターは娘と共にプラダのお洋服を身に纏って観たそうで、そのあたりのユーモアはさすが!
娘のビー・シェイファーは「ママはみんなに理解されているのね!」と感想を述べ、本人は「このアシスタントのモデルに心当たりがない」言ったのだとか。
ヴォーグの次期編集長は育っているのかな・・・ちょっと心配になりました。(笑)

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