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英国の医師賃上げストライキは他人事ではない

株式会社OX3代表の真田です。医療に関するニュースを取り上げ、日本の医療について考えてみようという企画をやってみたいと思います。

前回は「医師の過労死」について取り上げましたが、今回はイングランドの若手医師が賃上げのために長期ストライキを行ったというニュースについて取り上げていきます。


イングランドの医療制度について

イングランドでは日本でいう自由診療にあたる「プライベート医療サービス」と保険診療にあたる「公的医療サービス」の二軸で運営されています。

国民保険サービスのNHSでは、原則無料で診察を受けることができます。日本の国民皆保険制度と近いように感じますが、
かかりつけ医の診断を受けて、必要に応じて専門医を紹介してもらうという手順を踏むため、自由に病院・クリニックを選べる日本の保険診療とは少しばかり異なります。

しかし原則自己負担なしで受けられることもあり、非常に混雑しているという情報も拝見されました。

一方プライベート医療に関しては、高額な費用がかかる代わりに、
「短い待ち時間」「高品質な医療」「自由な選択」のような医療体験を得ることができます。

若手医師のストライキの背景

これまでもイギリスでは度々賃上げのためにストライキが起こっているそうですが、今回はその中でも最長となる6日間のストライキ。
若手医師がストライキをしたことで、数万人の手術や診療がキャンセルとなるなど大きな被害が出ています。

今回のストライキの背景となっているのは、「物価高による相対的な賃下げ」と「人手不足に起因する長時間労働」大きく二つだと言われています。
特にこちらの写真にもあるように、時給が低いことが大きな原因であることがわかります。

引用:https://classicnews.jp/%E8%8B%B1%E5%9B%BD%E3%81%A7%E6%95%B0%E5%8D%83%E4%BA%BA%E3%81%AE%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E3%81%8C%E6%9C%80%E9%95%B7%E3%81%AE%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%AD%E3%81%A7%E8%81%B7%E3%82%92%E8%BE%9E/

実際に若手医師の給料は、大手コーヒーチェーンの店舗定員の時給よりも少ないというデータもあり、その深刻さを物語っています。

医療と給与について考えてみた

なぜ医療従事者の給料は上がらないのか

日本でも現在賃上げと物価高の問題は根強く叫ばれています。今現在も起こっていますが、医師や薬剤師、看護師の相対的な賃下げは日本でも深刻な問題になる可能性は大きくあります。

ではなぜ物価が上がっているにもかかわらず、医療従事者の給料は上がらないのでしょうか?
理由は二つあると思っています。「① 給与構造の問題」「② 提供価値の問題」です。

①給与構造の問題

まず大前提、医師含め医療従事者の賃金は「保険料」をベースに、一部「自己負担」から構成される医療費(診療・調剤報酬)によって支えられています。そして医療費は高齢化によって増大の一途を辿っています。

今現在、医療費に関する各所の意向は下記のようになっているはずです。

国民:社会保険料や税負担を減らしてほしい
国 :医療費を下げたい
(なぜなら増えれば増えるほど、国民に負担をかけないといけないから)

その意向を実現するために、診療・調剤報酬は下げられる方向にあります。

では、医療従事者の給料を上げるにはどうすればよいか。それは「長時間労働」もしくは「点数の上方修正(つまり医療費の増加)」です。

長時間労働は言うまでもなく今の世の中で厳しいですが、点数の上方修正に関しては、先ほど書いた「国」および「国民」の意向と相反する関係にあります。そのため、容易に上げることは難しいということになります。

②提供価値の問題

基本的に一人当たりの価値提供の量とその単価(値付け)に応じて上がるものと言っても過言ではないと思います。そのため、稼げる業界では稼げるし、稼げない業界ではどれだけ頑張っても稼げないということになります。

医療業界が特殊なのは、価格決定権がないことです。
「人が足りない × 需要増」であれば、本来はサービス単価を上げればいいのです。しかし診療報酬や調剤報酬を決めているのは国であり、前述の通りそちら側の意向として報酬を上げられないという事情があるので難しいでしょう。

では、価格決定権を持った価値提供を自社でサービスとして行えばいいのではと思いますが、医療法人の仕組みや現状の医療体験の動線上では難しいのも事実です。(追加業務に関しても、基本的に国の点数の範囲でやるようになっている)

つまり価格決定権を抑えられている部分に関しては「下げられる」、そのほかの提供価値に関しては「制限されている」ため、売り上げを大きく上げる(つまり大幅に賃上げする)ことが難しいのでしょう。

医療従事者の給料が相対的に下がるとどうなるか

医療従事者の給料が下がると、単純に医療従事者が不足し、医療と医療従事者の質が下がります。医療従事者が稼げない(かつ負担の大きい)職になってしまうと、人材の流出が起こるのと同時に、なりたいと思う人が減る可能性があります。

これまで幾度となく書いていますが、一度このスパイラルに入ってしまうとそこから抜け出すのは本当に困難だと思います。

そのため少なくとも「賃金水準」もしくは「働きやすさ」のどちらか(できればその両方を選択できる状態)は作らないといけないのかなと。
OX3はそこにメスを入れるために、事業を進めております。

給料を上げるための鍵

国の医療費や医療制度に依存するのはなかなか難しいのかなと思います。つまり「提供価値の幅を拡大する」ことが大切だと思っています。

そして広げた価値を、
国の点数で管理するのではなく、適切に値付けして競争を促す
ことが重要です。

直近で一番気になるのは、
「求める役割(提供価値の幅)は広げているのに、それに応じた十分な報酬がついてきていないこと」
です。

そのため、個人的には医師や薬剤師、看護師は、

患者が、自身の抱える疾患に対して、病気を治療するために、最適な最小限の薬剤を、正しく服用する

ことに関しては業務を国の点数の範囲で全うする。それ以上の価値提供に関しては、国民がしっかり健康にコミットするようになるためにも「有料サービス」として、各機関工夫しながらサービスを展開していくべきだと思っています。

これはあくまで自論ですが、医療はやはり国民の権利であるのと同時に、「サービス」であるべきだと考えています。それを国が全て管理するのは
不可能ですし、質の向上やイノベーションも生まれないでしょう。

下記がすごく参考になるので、ぜひ読んでみてください。


最後に

OX3は「医療体験を、3歩未来へ」進めるために、医療従事者の働き方と提供価値の拡大を目指して事業を行っていきます。

簡単なことではないですが、この難しい問題に当事者として挑戦したいという方、医療体験を1から一緒に創っていきたいという方がいましたら、ぜひお話をしましょう!
お気軽にDMお待ちしております。https://twitter.com/OX3sanada

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