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推し事と熱量の関係について



はじめに

 
 最近、哲学者の千葉雅也さんの「センスの哲学」を読みましてね。
 ドゥールズ哲学を専門にされている千葉さんの最新作で、芸術を鑑賞する時に、意味や目的を読み取ることから僕らは始めてしまいがちですが、その意味や目的よりももっと小さな要素に分解してみるアプローチを提案するんですね。様々な要素が重なり合って、大きな意味や目的を生んでいる。著作の中では、その重なり方をリズムやビートとも呼んでいて、ないからあるへの変化(たとえば、『いないいないばあ』の遊びなど)、対立の関係(『熱い』と『冷たい』の間にある距離)など様々なリズムやビートが提示されていきます。
 これを受け手( 芸術を鑑賞する人としましょう )のレベルで考えると、物語のあらすじなどに感動する喜怒哀楽を中心とした大まかな感動と、いろいろな部分のデティールに感動する構造的感動があてはまるそうです。
 ちなみに上記の内容は、まだ前半部分で後半はより解像度が高まる内容になっていきます。

 なんでこんな話を持ってきたかというと、今回の記事を考えていく上で助けになりそうな考え方だな、と思ったからです。
 SKE48という大きな集合体があって、そこにメンバーというSKE48を構成する方々( もしかすると公演やシングル曲などもこれに入るかも知れません。それをもっと広げていくとファンの方々も入るかも知れません )がいる。

 今の僕はSKE48というグループに対して、心を動かすのが非常に難しい状態にあります。だからといって、嫌いになったというわけではありません。SKE48にはもう一花咲かせて欲しいと思っていますし、SKE48が好きな人が増えた方が、自分の毎日も楽しいなあ、と思っています。また、メンバーひとりひとりに新しい仕事が決まると「やったね!」と喜べますし、卒業発表があると「どうか、これからの人生が幸せなものであってほしい」と思うんですけどね。
 ものすごく雑に書くと「飽きた」んだと思いますし、丁寧に書くと「SKE48の鑑賞に対しておおまかな感動を失い、SKE48を構成するメンバーに対する構造的な感動は得られる状態」なんだと思います。

 で、このままSKE48から離れていくというのも一つの手だと思うんですが、やっぱり好きなんですね。プロデビュー予定作の原稿チェックのために、昔の携帯電話のダウンロード履歴を確認すると、SKE48を好きになる前から「青空片想い」はダウンロードしていて、この時の選抜に入っていた短髪の子(ゆっこさんですね)が気になってダウンロードしたんだよなあ、とか、初めて推しになった中西優香さんの総選挙ランクインを期待して、日産スタジアムいった時の写真が残ってたとか、色々なことを思い出してきましてね。あの頃は、推しはもちろん、一人一人のメンバーの活躍に喜び、SKE48という集合体にも心を動かされていたことを思い出しました。
 そうか、自分の推し事の情熱のリズムは、「ある」という状態から「ない」という状態に変わっていったのか。じゃあ、次は「ない」から「ある」に変化させられるのではないか、そう思いました。
 ただ、自分一人のやり方だけでは、もう難しいぞ、と「かける人 創刊直前号」の「推し事のキャリアデザイン」の終盤で書きました。
 そこで、みなさんのコンディションをうかがうこと、様々なヒントをいただこうと思いました。  



 こんな感じで書くと、こちらの予想を超える投票とコメントをいただきました。348票のうち、36.5%が「熱く推し続けている」が一番多くて、僕のフォロワーさんや関連する方々の多くは、熱くSKE48を推し続けていると思うと、安心感を抱きました(お前は何のポジションなんだ)。
 そして、「燃えたり冷めたり」と「平常心」が接戦で、僕が選択した「遠い日の花火」が一番少なかったですね。
 で、一旦、選択肢の固まりで皆さんのコメントを配置しようかと思ったのですが、後半にいけばいくほど、「遠い日の花火」が増えて行くのと、この方はどちらの選択肢にも取れそうだなあ、と感じる方もいらっしゃったので、あえて、ランダムに並べております。そこから生まれるリズムを楽しみながら、読んでいただければ幸いです。
 それではいってみましょう。

あな@札幌市民さん



 北海道の方からのコメント、ありがとうございます。
 僕も四国の過疎地域に住んでいるので、このラジオやモバメに返信していくという推し事の楽しみ方は、距離が関係ないのでいいですね!
 そして、コンサートでSKEが来るのは羨ましいですね。
 「ハレの日」があるのがいいですね。
 なるほど、投稿と読んでもらうことの往復って面白いですね。

のりさん


 のりさんのコメントって、SKE48を長く推していると多くの方が感じることだと思いますし、千葉雅也さんの本でいうところのビートとかリズムに近いと思うんですよね。推しが卒業してまた出会ってというこの反復。僕は五十嵐早香さん推しだったのですが、そこからまだ推しが新しくできていないので、ここから新しい推しと出会うとまたモードが変わってくるのかな、と思いました。


らぶる★ハチマキ日本代表さん


 水野愛理さん推しの方からすれば、卒業発表した時の配信を観ていると燃えますよね。どんなことを残していくのか、これからがまさに熱く推し続けるフェイズが来ているとコメントからも感じました。
 10月1日以降も気になりますね。

Takuya ikemotoさん


 1推しのキャリアが長くなってくると、燃えたり冷めたりのリズムが生まれますよね。でも、責任感で貫くというのは、付き合いの長さから生まれるものだな、と感じました。

ジャスティンさん


 日常に欠かせない距離感というのは、凄く分かる気がします。僕も一日一回はSKE48の情報をSNSでチェックしますしね。推しが新しく現れるループがあるのもいいですね。ただ、コンサートの箱が小さくなっていくというご指摘は、気になるところですよね。10年代前半の箱の規模と比較するとコロナ禍の影響もあったとは思うのですが、この箱が小さくなっていく状態を縮小としていくか、リスタートとしていくかは、SKE48の運営さんに頑張って欲しいと期待しています。

mizzさん



 「勝負どころ」という表現が、まさに推し事のリズムを感じて素敵だと思いました。SKE48というグループ内でDDをしていたところから、単推しになることで①から③に変化していったところとか、結構、今の③を選択した方の中にはいらっしゃるのでは、と思いました。今は、個人レベルで「ここが勝負どころ」というところがやってくるイメージです。

一匹狼さん


 ここまではSKE48内での熱の行き来を書いてくださっている方が多かったですが、他の趣味との熱の行き来というのもありますね。何に時間やお金を使うのか。岐阜メンやラジオ番組がSKE48との関係をつなげてくれているのもいいですね、やっぱりレギュラー番組があると、「楽しさの更新」があるのでは、と僕は思っています。新しい楽しさが反復されていく。テレビや配信、ラジオ番組でレギュラーを持っていることの強みを感じます。


じょーじさん

 

 長い視点でみると、ひょっとすると「SKE48」が終わってしまう可能性もあるかも知れませんよね。これも大事な視点だと思います。
 かつて、前田敦子さんが卒業発表をした後、憑き物が落ちたように爽やかな笑顔でパフォーマンスをするようになりましたが、卒業するまでの期間の輝きってあると思います。そこに立ち会いたいという熱も凄く分かるんですよね。今、この時間だからこそを大事にしたいという熱も素敵だと思います。

シヴァ(直江 兼次)さん


 11期生弱者としては、とても参考になるコメントでした。
 さらに、楽しむメディアを広げていくことで、毎日、なんらかのメディアで「楽しさの更新」が行われていくんでしょうね。そう考えると、SKE48は情報過多なぐらい溢れている中でどれをチョイスしていくかも大事になってくる気がしました。自分がチョイスしているものは何だろう、と意識させられました。

武士(推しアカ)さん


 熱くさせてくれる推しのメンバーの存在は大きいですよね。
 そして、卒業後の展望もすごく分かります。
 そして、今の僕はひょっとすると、その卒業後にSKE48というグループ自体をもっと好きになれるものを待っているのかも知れません。

最北のAgent^._.^さん


 現場と熱量の関係って、わりと重要だと思っていて、現場にいくことで「楽しさの更新」が生まれるような気がしています。
 僕自身も見守っているというスタンスに非常に近いと思っています。

ゆづふく@はっちゃん


 やっぱり推しが卒業すると、足が遠のきますよね。
 推しがいない公演や握手会は、自分だとひょっとすると、推しが居た時の姿を投射して少し寂しくなるかも知れません。
 でも、公演に通い続けることで、新しい火がつく可能性もあるのかな、と読ませていただきながら思いました。推しというと、また特別な何かだと思うんですけどね。


Becauseどっちつかずchamy3(本人。インスタは別の名前で出ています?)さん

 


 大変なタイミングでコメントをいただき、ありがとうございます。
 個人の集客力だけでは、ドームまで辿り着くのは難しいというコメント、凄く分かります。SKE48というグループ自体が、魅力的にアイドルファン以外の方々にどう映るかが重要な気がしています。
 推しの方々の関連イベント、是非、やって欲しいですね。

shigeさん



 SKE48はもちろん、北川愛乃さんの応援に集中したいという想い、ここ数年の彼女の活躍を見ていると凄く思います。舞台のお仕事が多いよこにゃんですが、これからお仕事を依頼したい方のために、ポリオグラフィーに映像関係の仕事が増えて行くと嬉しいなあ、と思っております。たとえば、「大富豪は終わらない」などで映像関係のお仕事があったら、今、期待して投票するのは、僕は彼女だと思っています。
 去年は150本以上映画を観ましたが、よこにゃんとこの監督、相性いいだろうなあ、とか、この照明さんの影の作り方ってよこにゃんに合いそうと何度か思いました。そういう風に観客に思わせる時点で彼女はやはり才能のある方だと僕は思います。

新さん@すだぷす123さん


 「はみ出していくことを恐れない」という表現、凄く興味深いです。
 冒頭に挙げた「センスの哲学」の中で「差異」と「予測誤差」の関係が出てきます。現実のモデルとそっくりに描くことで「美的」な絵は完成します。それに対して、予測できる誤差である「予測誤差」を超えてきた作品はどうなるか分からないという偶然性を帯びて「崇高」さを持つそうです。
 高柳さんとか、まさに総選挙の時に「予測誤差」を超えてきましたよね。
 僕の推している五十嵐早香さんもこの「予測誤差」を超える作品を書いてきたと思っております。
 次はどうなるんだろう、と期待できるメンバーの登場が熱を生む何かを作っていくのかも知れませんね。

Dita Earlgrey 45nyanさん


 人だけでなく、SKE48の中心に公演を持ってくるという見方、素敵だと思います。「継承」と「進化」という視点はずっと見ているからこそのものだと思います。ふと「ずぶ濡れSKE48TeamE,ver」でのインタビューにも通じるのではと感じました。
 

かなさん


 実は、このアンケートで「平常心」という選択肢を作ったのは、かなさんのGW企画での記事を読んだからなんですね。それまでは、自分がSKE48に対して「平常心」な心境になることへマイナスというか後ろめたい気持ちになっていたんですよね。
 しかし、かなさんの記事を読んで、いや、むしろそれはそれで良い状態なのでは、と考えるようになりました。
 この記事の最後にリンクを貼っておきましたので、読み終わったら皆さんも是非、チェックしてみてください。

こうだひろゆきさん

 全体的にSKE48を観る視点、スポーツチームを応援する視点にも近い気が最近しています。
 メンバーひとりひとりの個性とお仕事のチャンスに関してもその通りで、たとえば、ひめたんとかは、これから花開いていきそうだな、と最近、思っています。
 鎌田菜月さんの単独ラジオ番組が続いていることも本当に素晴らしいですが、更にその番組からお仕事が広がっていきそうな予感もしています。

ゆゥじさん




 僕も8期生の推しメンだった岡田美紅さんが卒業された後、推しメンがいないけれど、握手会やコンサートに行っていた時期がありましてね。ゆゥじさんの「ヲタである為?」というコメントも凄く分かる気がします。今は田舎に住んでいるのでなかなか難しいですが、今も関西に住んでいたら、絶対に大箱は行っていたと思います。

みつくんさん


 大変なことが重なってしまうと、熱を持続させるのも大変ですよね。
 無理なく平常心で推し続けることが大事だと感じました。
 他のアイドルの現場も体験することで、もともと推してきたアイドルを観る時の視点も増えて行くんだろうな、と考えました。
 

BJ-STARFIELD(BJ スターフィールド(ナウルと同い年)さん


 ううむ、「惰性」という言葉は、「習慣」という言葉で言い換えられそうな気もしますが、「惰性」というニュアンスも凄くわかる気がします。推しがいなくなった後、箱推しで続けていくというのも。
 熱がある時は、日帰り遠征も苦では無いんですが、いなくなった時に時間や体力を投資できるか、という視点も興味深いです。

なかグーさん


 


 個人個人の才能を伸ばしていく方針は運営に携わっていない我々ファンの目線から見ても実感できるものに変わってきてますよね。ただ、ご指摘の通り、それがグループ内に置いてどんな化学変化を推しているかがまだ見えにくいところですよね。ひょっとすると、それは、個人とグループの中間点に位置する「チーム」というレベルからまずは、浸透できるかになってきそうだな、と読んでいて思いました。

おわりに


 皆さん、コメントをいただき、ありがとうございました。
 もしかすると、過去最大のコメント数になったかも知れません。
 それだけ、皆さん、今のSKE48に対する熱量について考えて意識されたのかな、と感じました。
 僕自身は、皆さんのコメントを読ませていただいて感じたのは、やはり、個人レベルでは熱くなれるけれど、グループではなかなか熱くなれる方針というか目標が見えにくいこと。
 しかし、メディアは増えているので個人レベルでもグループレベルでも「楽しさの更新」は可能だということ。
 最後にそれぞれがそれぞれの熱量を持ちながら、これからもSKE48を見守っていること。
 それが分かっただけで非常に勉強になりました。
 ふと、自分が最後にSKE48に対して、喜怒哀楽のようなおおまかな感動を覚えた日はいつだったのか、を考えてみました。
 多分、2018年の6月18日の夜、あるいは、12周年公演の発表の夜だったと思います。あのあたりが最後だったかと。共通しているのは、グループが何か大きなものに向かっていくというストーリーでした。
 そして、そこには締め切りといいますか、決められた日付がありました。
 今、自分が求めているのは、約束された日付に向かって走っていくSKE48のメンバーの姿かも知れません。もしかすると、チームによる夏のツアーが今はそれにあたるのかな、とも思っています。ユニット単位でのツアーにもあるのかも知れません。小さな物語でも大きな物語でもない、中間の物語を育てているフェイズかも知れません(新公演もありましたしね)。

 SKE48という集団芸術を鑑賞する際に、やはり、細かいデティールにも感動しますが、僕は大きな物語にも注目しています。そこでもやはり感動したいんです。その筋道が少しだけ見えてきました。また、推しが出ていってもSKE箱推しでいるには、次の才能と出会える場所だという期待も重要だと思います。
 みなさんはどうでしょう?

 ご協力いただき、ありがとうございました。
 また、機会があれば一緒に考えましょう。
 全部に答えが出るかは分かりませんが、考える時間が重要だと僕は思います。


※記事の中で出てきたかなさんの記事はこちら!


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