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ザ・クロージングマン98

クロージングには欠かせない。最終回のスコアボードに京田の名前があれば、勝ちゲームだと思っている。

その日はときおり、小雨がパラつく梅雨空の横浜スタジアム。観客席のファンはスマホで雨雲の行方を気にしている。
4回裏一三塁、バッターは8番京田陽太。その日初登板のドラゴンズ松木平投手のカーブに、半呼吸して反応した。
トップスピンのかかったテニスのレシーブのような打球はセンターの前で弾んだ。三塁走者が還り、スコアは3-0。

雨が気になるゲームで、ベイスターズの先発は東。短い中断を挟んだものの、京田は9回はショートフライを処理し、3-0のままゲームセット。ヒーローインタビューは東と山本、盤石のバッテリー。2年連続の最優秀バッテリーの受賞も十分に可能性がある。


京田はその日はお立ち台にこそ呼ばれなかったが、オースティンのホームランのあと、8番打者としてタイムリーヒットの追加点は打点1以上のダメ押しの価値があった。そして翌日は、おさらいのようなセンター前へのプロ入り初のサヨナラヒットでお立ち台に立った。98年のショート石井琢朗が京田#98を迎える光景はオールドファンにも堪らない。

今シーズンの京田はちょっと違う。先発のときの打順は8番か7番だが、「かゆいところに手が届く」。
7/19の試合終了時点で打点19はリーグ26位とはいえ、すでに昨シーズンの倍以上。打席数あたりにすると、19/127と打点トップの岡本和真(54/365)よりも高い。得点圏打率は0.314とクリーンアップのそれだ。蛇足ながら犠打はゼロ。

移籍1年目の昨シーズンは、リードオフマンのミッションを期待されるも、2番で出塁率が上がらず、下位に打順が落ちれば、結果を求め過ぎて強い打球が打てなかった。特に対左投手では0.108、結局、クライマックスのベンチには入れなかった。

今シーズンは、4月は度会のメンターみたいな役割分担もあり、プレッシャーの小さいところから始まったように見えた。
語弊あるかもしれないが、リードオフマンのプレッシャーから解放されて、しっかりプレーで結果を出している。対左投手の打率も0.250と大きな進化だ。

守備はいうに及ばず。捕球から送球までスムーズな動きは、言葉で表現しがたい。スターナイトの初戦は、11回表にショートで途中入ると山本祐大とのコンビで、無死2塁のピンチを牽制タッチアウトと、そのあとの盗塁阻止で切り抜けた。

華麗なリードオフマンとしてプロデビューを果たした京田は、今は、あえて言えばクロージングマンとして、最終回はショートやファースト、そしてサードを守っている。彼の代わりは誰もできない。

FAを取得した今季、京田はプロ入り8年目にして初めてのポストシーズンゲーム出場のチャンスが広がっている。出場叶えば、シーズンを通しても僕が命名したクロージングマンにふさわしい活躍に期待したい。

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