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装着型サーボーグHAL®を体験。障がいを個性に変える未来がやってくる!①

サイバーダイン社が開発した「HAL®」という装着型サイボーグのことを知っていますか?

ロボットやサイボーグは映画やアニメの中に登場するだけで、それはまだ先の未来の話。今の時代では縁がないように思っていたのですが、「HAL®」は医療や福祉の分野ですでに活躍し、身近な存在になりつつあることを知りました。身体機能を改善するために開発された「HAL®」のことを、改善の必要がない人は知らなくて当たり前ですが、それでも高齢になれば皆同じ。歩くことや、動くことが難しくなってくるのだから、こうした人の支えになるテクノロジーにもっと早くから関心を持ってもらいたいと思うのです。多くの人が関心を持てば、さらに進んだ開発を利用しやすいように環境が整備されるなど、可能性が拡がります。
人を支えるテクノロジーが当たり前のように生活の一部になっていけば、障がいは個性というとらえ方がもっと浸透していくはず。これまで難しかった「できない」が「できる」に変わる未来の訪れを期待しつつ、サイバーダイン社が開発した「装着型サイボーグHAL®」の体験と、興味深々の最新治療技術について伺ってきました。

HAL®体験
『つくばロボケアセンター』で
HAL®装着!

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サイバーダイン社はHAL®(Hybrid Assistive Limb®)という、身体機能の改善・補助・拡張・再生が期待できる世界初の装着型サイボーグをはじめ、様々なテクノロジー開発を行う企業です。会社代表は筑波大学の教授でもある山海嘉之社長。人の役に立つテクノロジーという考えをもとにした開発は、日本だけでなく医療、福祉の分野で世界中に注目されています。

今回、サイバーダイン社のご協力を得て、HAL®誕生の地でもある茨城県つくば市にある『つくばロボケアセンター(※1)』でHAL®自立支援用下肢タイプと単関節タイプの装着体験にトライしてきました。
実際にHAL®の体験を伝えるだけでなく、知らないことの多いHAL®の治療や効果についてなど、たくさんの情報を得ることもできましたのでレポートします。


センサーで、脳からの信号をキャッチ!

今回、体験するのは非医療用タイプのHAL®です。現在、下肢の機能改善を促す「HAL®医療用下肢タイプ」は保険適用となっています。ただし、どんな病状でも医療保険で治療が可能というわけではなく、日本では8つの疾患(※2)にかぎるという条件付き。補足すると、医師の診断も必要です。
サイバーダイン社の方から、「今回の体験は自立支援用のHAL®を使って行います」と説明がありました。
えっ!?自立支援用?
知らなかったのですが、HAL®には、医療用と非医療用(自立支援用)があるそうです。次回にアップ予定の後半「インタビュー」記事にて、詳細を説明いたします。

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「HAL®自立支援用単関節タイプを装着」

それでは、体験の様子をお伝えします!
まずは、装着する前準備。
人間が身体を動かすとき、脳から筋肉へと “生体電位信号”という信号が送られているそうで、HAL®はこの信号に応じて動作を補助し、装着者の意思に従った動きを実現させます。
そのため、信号をキャッチできるように、皮膚の表面にセンサーをつけていきます。
病気が進行し身体機能が低下すると“生体電位信号”が弱くになるそうです。ちなみに、医療用HAL®は微弱な信号でも読み取れるよう開発されているので、歩けなくなった方でも身体機能の維持・向上や自立度を高めることが期待できます。


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「HAL®自立支援用単関節タイプを装着して、足関節を動かす」

身体の動作状況を確認しながら、設定を調整していきます。装着部位に応じて、初回はこうした個々の身体の状態チェックとそれに合わせたHAL®の設定を行うため、時間がかかります。下肢タイプの場合は、装着して歩行ができるまで約30分。初回以降は15分くらいでセッティングし、歩行できる状態になるとのこと。
装着完了、いよいよ歩行開始です!


しっかり立てる!歩ける!足があがる!    

HAL®は下肢タイプで重量約14kg。そのままでは足を上げることができない重さのように感じました。けれど、スイッチオンでアシストが入るとグンと軽くなり、重さを感じることがなく足を前に出すことができました!
装着感はあるものの、いつもより足上げが軽く感じられるのは驚き!
最初は自分の意思で足を動かしているように思えず、おっかなびっくりという状態。動きもぎこちない感じです。
この日、体験を担当してくれた理学療法士の戸田さんが、何度も動きやすさをチェックして調整してくれます。

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「HAL®自立支援用下肢タイプを装着したプログラムを体験」

足を上げたり、後ろに蹴ったり、歩きやすいと感じられるまで調整し、10分ほどゆっくりと歩行。歩く度にシュッ、シュッと機械音が聴こえてきます。
幼い頃に観たヒーローもののテレビ番組が頭に浮かび、マシンと一体になって敵と戦うヒロインになった気分です(笑)。
緊張して肩や手、足に力が入っていましたが、一周、二周と歩いているうちに動きがスムーズになり、装着した状態に慣れてきました。
気が付くとうっすらと汗をかいています。歩くという動きは全身運動だということを改めて実感して休憩。普段、使っていない筋肉を動かすので、歩行した後はいい運動になったというのが、まずは感想です。
こうした歩行を定期的に行うことでHAL®との一体感が生まれ、段々と自然な動きになれるそうです。立てる、歩けるというだけでも、体にいい影響が期待できそうです。もちろん、それだけではなく、HAL®を使って歩くことで今度は脳に信号が送られていき、脳はどうにかして動くようにいろいろな神経に働きかけ、それが繰り返されることで神経系のループが強化され、そして機能改善へと繋がっていくのです。
わぁお!すごいな、HAL®!!

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自分の歩きを知って、修正し、改善へ!  

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「モニターを見ながら歩行動作の状態を確認」

さて、ひと休みして、今の動きを確認してみます。モニターで可視化されるため、歩行バランスや生体電位信号レベルなど、自分の歩いている状態がリアルタイムで確認でき、とても参考になりました。
「左足の信号が強く出でいますね」「こうすればバランスがとれますよ」など、戸田さんからの的確なアドバイス。自分の歩行のどこが悪いかを理解し、修正点を明らかにして、次のステップに進むようにします。

休憩後は、もうひと歩き。修正すべき点を頭に入れて、再スタート!
最初の歩行よりも、ぐんと足の運びが楽に自然になってきたのを感じます。
人間は常に学習する動物なんですね♪
スピードも先ほどよりもアップして進むことができるようになりました。
姿勢や左右の足の使い方のバランスの悪さなど、まだまだ課題はたくさんありますが、これを続けて改善することを目標にしていくようです。

テクノロジーに勝るのは、やっぱり人!

ここからは、私個人の感想になるのですが、HAL®による治療を始めるとしたら、やはり大切なのはどれだけ効果を出せるかという点です。今回の体験をとおして、個々にあった対応が必要だということを知り、サポートしてくれる方との連携の大切さが重要になってくると感じました。HAL®の効果を高め、利用者のモチベーションを上げるには、やはり支えてくれる“人”の存在が必要です。
利用者の体の状態だけでなく、どういった目標を持ちたいかという希望も共有して、気持ちも一緒に進んでくれるサポートスタッフの方とタッグを組めば、いい結果に結ぶつくかも。そんな期待が感じられました。
これからHAL®にトライしようと考えている方は、サポートされる方と機能向上を目指して意思の疎通などをしっかりとはかられることをおすすめします。わからないことも多くありますが、自分からどんどん伝えていく。そこが大切なのだと思います。
HAL®装着プログラムで、自分の体がどのくらい反応して改善されるか。今後、期待を込めて治療にトライしてみたいと思いました。

さて、HAL®について興味を持っていただけましたか?
詳しく知りたい、わからないことだらけ、という人は後半もぜひご一読ください!サイバーダイン社の方への「インタビュー②」を掲載します。
「知らなかった!」という驚きが盛沢山。インタビュー後はHAL®を少し身近に感じることができるかもしれません。


★担当していただいた戸田莉恵さん。ありがとうございました!

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※導入施設一覧
WEBサイトで導入施設が掲載されているページを見つけました。すべての導入施設が掲載されているわけではないようですが、参考として掲載します。

※1『つくばロボケアセンター』
茨城県つくば市研究学園5-19
TEL : 029-828-8282

※2 保険適用8疾患:脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、シャルコー・マリー・トゥース病、遠位型ミオパチー、封入体筋炎、先天性ミオパチー、筋ジストロフィー


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