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2023年11月の本棚

11月に読んだマンガをまとめました。



【新】君と宇宙を歩くために 1 / 泥ノ田犬彦(講談社)

勉強もバイトも続かない小林くんのクラスに、変わり者の宇野くんが転校してくるところから物語は始まる。

宇野くんは立て続けに話しかけられると混乱してしまったり、同時に複数のことをできなかったり、学校生活で求められる「普通」がちょっと苦手。それでも自分なりに工夫しながら頑張る健気な奴。

そんな宇野くんに共鳴するように、小林くんの日常も少しずつ変化していく。「普通」ができない二人の友情と成長の物語。

小林くんも宇野くんも所謂「発達障害」の類の特性を持つ人間として描かれます(作中そういったワードが出てくるわけではないですが)。それに伴う「日々の生きづらさ」を「宇宙に浮いているみたい」と表現した上で、そんな宇宙みたいな毎日を君と歩くために、自分たちの人生に工夫を凝らしていくという物語に仕立てる、このマンガはすごい。素晴らしきマンガ体験…!って感じでした。生きる術を教えてもらった気がします。


【完】宇宙の音楽 3 / 山本誠志(講談社)

やっと部が一つにまとまり、コンクールに向けて頑張ろう!というところで水音先輩が母親の意向もあり海外留学することに。それでも諦めない零は直向きに指揮棒を振り続ける。

長い人生の中でたかだか数年、一緒に吹奏楽をやるだけの関係。それがどれだけ意味のある時間か、部活として「吹奏楽」をやることの根本的な醍醐味がヒシヒシと伝わってきました。

音楽マンガの魅力を表す際に「音が聞こえてくるよう」と形容されることがあるけど、この作品は「音が吹き抜けていくよう」な爽やかさというか、清々しさみたいなものがあった。そういうところも「吹奏楽」の魅力なんだと思う。

零と水音先輩を中心にストーリーが最後までブレなかった点も、スッキリとして読後感に繋がっていて本当に良かった。

1巻から3巻まで名言もいっぱいで、何度も読み返したい大切な作品になりました。次回作にも期待大です。

人の気持ちは 宇宙やから
他人の気持ちを動かすなんて途方もない
いくら考えてもキリがない
そういう宇宙に挑戦してんねん 俺らは

宇宙零/『宇宙の音楽』3巻 p.117


【新】佐々田は友達 1 / スタンニング沢村(文藝春秋)

埼玉の県立高校に通う佐々田絵美は放課後の一人の時間が大好きな地味目な女子高生。そんな佐々田は同じクラスの中心人物で、みんなとの時間が大好きな高橋優希とひょんなことから連むように。互いに住む世界がまるで違う二人の毎日は、噛み合ったり噛み合わなかったり、ぎこちなくも不思議な交友関係を築いていく。

正反対な二人が仲良くなっていくオーソドックスな構図に、女子同士というキャラクター属性なので「百合」的な要素を見出す方もいると思いますが、本作はそんな属性すらも覆していく、紛れもない「変化」の物語です。

すごい個人的な感想だけど、学生の頃の自分を読んでいるような気持ちになった。高橋みたいな奴いたな〜、って。卒業してから何度か遊んだりもしたけど、ここ数年はすっかり疎遠になってしまった奴。今どこで何やってんだろう。


【新】雷雷雷 1 / ヨシアキ(小学館)  

『殺し屋は今日もBBAを殺せない』の芳明慧先生がペンネームを改め描く、本格SFアクションコメディー地球外生命体エイリアンとの戦争から50年。人類は戦いにこそ勝利したものの、地球は宇宙害蟲が蠢き、宇宙害獣が闊歩する脅威に襲われていた──。

主人公・市ヶ谷スミレは、父親の残した多額の借金を返済のするため、宇宙害蟲駆除会社で働くしがない18歳の少女。そんなスミレの日常は、UFOに攫われ、謎のエイリアンと融合させられたことで一変する。

序盤に漂う『怪獣○号』的な空気に少し身構えたものの、負の存在(今作の場合、謎のエイリアン・ダスキン)を身に宿して共闘するような流れは個人的に大好物。分かりやすい例だとヴェノムみたいな。

持ち前のコメディー要素も随所に効いていて楽しい。BBAの時はなかった女体表現の巧さにも注目です。


【新】サチ録 ~サチの黙示録~ 1 / 茶んた(集英社)

人類の命運は一人のクソガキに託された!天使と悪魔がある人間を審査し、その結果で人類を存続させるか否かを決める“人間神判”。その審査対象に選ばれた稀代のクソガキ小学生・上野サチは、自堕落な天使・ラン、生真面目な悪魔ボロスと同居生活を送ることに。シュールでカオスなギャグコメディー開幕。

憎たらしいくせにたまに見せる妙に真理をついた言動をするサチ、作中最も人間味のあるラン、強面だけど真面目で根は優しい(?)ボロス、この3人にしか醸し出せない独特の空気感がクセになります。もはや人類の存亡なんてどうでもいい。3人仲良く楽しく暮らしていてほしい。


うめともものふつうの暮らし 7 / 藤沢カミヤ(竹書房)

うめももの双子の姉妹が紡ぐ、ありふれた”ふつうの暮らし”を覗く最高傑作。6巻発売時にどっぷりとその世界にハマり、今ではもう特に理由もなくページを捲る日があったりするほど大好きです。今年一番ハマった作品の一つなのは間違いない。BIG LOVE…

やっぱり生きるのってどうやったって辛いことなので、日常の中にささやかな幸せを見つけていく二人の姿勢を参考にして、日々を愛しみながら生きたいな、と思います。


【新・完】このゴミをなんとよぶ 上・下 / 鉄一(KADOKAWA)

『双子たちの諸事情』鉄一てつかず先生の新作。兄・界の元カノ、アキラを好きになってしまった弟・優人。その重すぎる性格が原因で別れた後も界をしつこく付け回すアキラと、兄の写真や近況の情報と引き換えに交友関係を築いていく優人、そして二人の秘密の関係に気づいてしまう界。歪な三角関係を描いた上下巻の”執着”の物語。

純愛といえば純愛だけど、家族との適切な距離感が個々人の人格形成に多大な影響を及ぼすんだよな~という話。界の今カノ・紫苑の家族が理想的な家族として描かれますが、それすらもあくまで一例に過ぎないのが家族の難しいところ。

キャラクターデザイン、個人的な絵の好み、上下巻完結という点は評価に値しますが、題材的にストーリーの落としどころが難しかっただろうなという部分もあったかも。いや面白かったけど!


【新】ずっと青春ぽいですよ 1 / 矢寺圭太(講談社)

『ぽんこつポン子』の矢寺圭太先生の新作は、アイドル研究部の陰キャオタクたちの青春譚。なんとしてもアイドルをプロデュースしたいという部長の執念が空回りしながらも眩しく輝く。陰キャでもいい、オタクでもいい、彼らの日々は紛れもない本物の青春だ。

学校の部室で気が合う仲間たちと只管だらだらするとか、今も昔も割と最上級の青春な気がするけど、当事者たちがそれに気が付かないまま無駄な時間を過ごしていく、というのまでがセットというのも変わらない。

オタクに優しいギャル要素もあり、なんかもう羨ましい通り越して腹立ってきたけど、今後の展開にも要注目です。


【完】おとなになっても 10 / 志村貴子(講談社)

おとなになっても、皆ちょっとずつ我儘で、お互いがお互いを理解する努力もあれば、許容しない自由もあり、それぞれが不完全な存在のまま生きている。

世の中に「この人の生き方が正解」という答えなんてもちろんなくて、でも各々の人生に少なからずの希望があるはずだと思いたい。今作も志村先生らしい締め括り方でした。次回作も楽しみ。


【新・完】商店街のあゆみ / panpanya(白泉社)

『足摺り水族館』から数えて丁度10冊目となるpanpanya先生の新刊。

「ここはどこでしょうの旅」シリーズは相変わらず謎解きみたいで楽しいし、「スーパーハウス」「奇跡」の無茶苦茶具合には笑った。「ビルディング」の設定・ストーリーも面白かったし、「正しいおにぎりの開け方」には先生の執念のような凝り性が発揮されていて脱帽。表題作「商店街のあゆみ」「うるう町」「蓋然」に描かれた、場所や景色が持つは不確定さ、あいまいなまま移り変わっていく様に哀愁を覚える感覚、まさしく「ようこそpanpanyaの世界へ」という感じだった。


転がる姉弟きょうだい 1~5 / 森つぶみ(小学館クリエイティブ/ヒーローズ)

両親の再婚で姉弟になった高校生の姉・みなとと小学生の弟・光志郎。最初は「思てたんと違う!」という出会いだったものの、だんだん姉弟になっていく二人と、その交友関係が描かれるほのぼのホームコメディ。

年相応に恋や勉強の日々を送る乙女なJKのみなとと、見た目からしてクセ強めでアホの子だけど目が離せない光志郎。二人とも根が似ているのか、結構すんなり馴染んじゃう。森つぶみ先生の柔らかいタッチと優しいキャラクターたちが織りなす人間模様が沁みます。最高だぜぇ〜!

ブロスコミックアワード2023大賞受賞おめでとうございます(その関係かサイン本を入手できました)!

光志郎の妖怪っぽい見た目からずっと敬遠してしまっていたけど、今はもう愛しくて愛おしくて仕方がなくなってしまった。『転がる姉弟』というタイトルも素敵。


【新】秋葉原はユーサネイジアの夢を見るか? 1 / 春野ユキト(講談社)

警備員として働くPTSD持ちの主人公・いかるの唯一の癒しは、勤務先のビルに入っているメイド喫茶のメイド・鶴子の存在だった。

彼女への憧れや好意を自慰行為で発散する鵤。その事実を知ってもなお、優しく接してくれる鶴子。白昼夢のような雰囲気で物語が進む中、最後の最後で鋭い刃が飛んでくるようなラストは必見です。

ちなみに聞きなれない「ユーサネイジア(euthanasia)」という言葉の意味は「安楽死」。これがつまりどういうことか、是非読んで確かめてみてください。


【新】大怪獣ゲァーチマ 1 / KENT(講談社)

突如、海に出現した怪獣。主人公・宮矢子の住む港町は甚大な被害を受けるも、活動を停止した怪獣は海に溶け、魚介類への栄養となる。港町に発展をもたらし、豊穣の神・ゲァーチマとして崇められるようになった怪獣は果たして、人類の敵か味方か。

あまりこういうタイプのSFは読んでこなかったので新鮮でした。どう転んでいくのか全然分からなくて面白い。ヤシマ作戦のBGMを聴きながら読んだのは自分だけではないはず(ダーンダーンダンダン…のやつ)


【新】COSMOS 1 / 田村隆平(小学館)

『べるぜバブ』などで知られる田村隆平先生の新作。嘘を嗅ぎ分けられる高校生・水森は、宇宙人専門の保険会社調査員・穂村と出会い、消息不明になっていたクラスメイトが実は宇宙人だったと知らされる。

そのまま流れで自身の能力を買われ見習いとして働くことになった水森は、宇宙人が潜む現代社会を舞台に、黒スーツに身を包んだ(重要)クール(重要)低身長(重要)凄腕(重要)美少女(重要)と共に、仕事を通して自分を見つめ直しいく。

アクション要素はあるものの、ヒューマンドラマの側面が強めな感じ。主人公の能力についての言及がほぼないので、血筋に宇宙人がいるとか過去に宇宙人と接触したとかだろうな、多分。


【新】ポンコツ魔王の田舎暮らし 1 / 渡邉ポポ(新潮社)

魔界から田舎にやってきた陰キャ魔王ののんびり隠居(?)生活。基本、魔王がずっと一人でブツブツ言っているだけで終わるの面白すぎる。このまま孤独に生きていってほしい。


【新】恋愛代行 1 / 赤坂アカ・西沢5㍉(集英社)

超売れっ子漫画家&原作者の赤坂アカ先生と可愛い絵柄に定評のある西沢5㍉先生がタッグを組んで描く新作は、タイトル通り、恋愛を代行するラブコメ。

「こいつら両想いなのにお互い性格に難ありでくっつかない」という構図は見覚えあったけど、代行するエージェントたちも実は…という二重構造で面白くなっていきそう。

ところどころほぼオタク向け恋愛参考書みたいな内容で、読む人は選びそうな部分もあるかもしれないけど、しばらくは読んでいこうと思います。


【完】テンマクキネマ 3 / 附田祐斗・佐伯俊(集英社)

『渚』を撮り終わり、学生映画コンクールで上映され、エンドロールに天幕滝飛虎の名前が出すという粋な展開。

数年後、映画監督になった新市くんと天幕が倉井さんの元へオファーへ行って終わり。山も谷もないまま終わってしまった感は否めないですが、お疲れ様でした。


【完】べんりなふたり 2 / あやき(トゥーヴァージンズ)

何でも屋の二人が、集落の人たちの困りごとを解決しながら友情を育んだり、周囲の人たちとの関係を築いていく、という流れを想像していたけど、もう少し内向きな方向性で完結。

1巻を読んだ時に期待した「繋がり」重視で描かれた方が個人的には好みだったかも。でもまぁこれもこれで良いかとも思う。


僕の心のヤバいやつ 8 / 桜井のりお(秋田書店)

付き合い始めた市川と山田。とりあえず山田家に挨拶に行く市川のスタンス、勇気ありすぎる。(役作りのため)ギャル化した山田と下北デートしたり、お姉の軽音インカレサークルのライブで披露される新曲に自作の歌詞が当てられることになったり。

付き合い出してからも変わらず面白いのは、お互いの内面がしっかり描かれつつ、それが短いスパンでちゃんと交換されているからだろう。読者としても何かしらのメーターが振り切ったまま読み続けている感じが堪らんですね。


正反対な君と僕 5 / 阿賀沢紅茶(集英社)

クリスマスにお正月と年末年始な第5巻。急に谷くんの実家にお呼ばれしてしまい、テンパる鈴木が不憫だけど可愛い。タイラズマ、ニシヤマダも気になる展開が続きます。

ホンちゃんやナベサトみたいなストーリー的には深く描かれないであろうキャラクターに妙に愛着が湧いてきたりする。

小説版も同時発売。十数年ぶりにジャンプの小説レーベルを買った気がする。ちびちび読んでます。


氷の城壁 6 / 阿賀沢紅茶(集英社)

4人の関係に大きな進展はないまま後輩たちが登場。美姫の弟でこゆんとも親交がある優希の存在にミナトが悶々としたり、こゆんと因縁のある真夏の妹・秋音の存在にこゆんがゾワゾワしたり、秋音の友人で露骨にミナトに近づこうとする桃香に振り回されそうになったり、ヨータと美姫はバイクデートしたり。

自分の高校時代に、こんなに他人に歩み寄ろうともしなかったし、歩み寄られるようなこともなかったのでなんか悲しくなってくる。


逃げ上手の若君 13 / 松井優征(集英社)

”先代”の天下人の後継にして、”当代”の天下人に挑んだ”中先代”が起こした大戦、終結。頼重の傀儡としてではなく、激戦を繰り広げた戦の主として歴史に名が刻まれた時行。それだけに諏訪明神・頼重の壮絶なる忠義と、時行との義親子の抱擁は涙なしには読めなかった。

日本史の教科書にある数行の戦にこれだけのドラマが詰まっている。漫画として脚色されている部分があるのは百も承知で、命の使い道を弁え、尽くした人たちがいたということを忘れないでいたい。


8月31日のロングサマー 2 / 伊藤一角(講談社)

「8月31日」をループする男女のエンドレスラブコメ。鈴木くんも高木さんも、下手したら一生このままなのにあまり焦っていないのが面白い。

時間的制約が一切なくなった状況でいつかは必ず終わるはずの「恋愛」をテーマに描く。ラブコメを読んでいる時にしばしば感じる「一生やってろ!」という感想を逆手に取ったような仕組みなのは巧いな〜と思います。


ブルーピリオド 15 / 山口つばさ(講談社)

広島合宿編完結。桃代・鉢呂と比べ、八雲は真田から多大な影響を受けて現在の自分が形成されたが故に、人一倍彼女の死を受け入れらなかった。

でもそれでいい。その悲しみを一生背負って生きていい。呪われたままキャンバスに向き合えばいい。

世田介くんの客観的な視点が八雲に許しを授けたのはズルい。世田介ェ! 八虎もまた少し前進できたようで、それは何よりです。

いついかなる状況でも「死」の存在は理不尽で、向き合い難いものだろうけど、隣人の死を(美術に限らず)芸術に昇華できるのってとんでもないことだと思うんよ。

そっか
この悲しみって一生背負ってもいいんだ…

幽霊でもいいから会いたかったなぁ

でも
ちゃんと呪われてるじゃん

村井八雲/『ブルーピリオド』15巻 p.121-122


自転車屋さんの高橋くん 7 / 松虫あられ(リイド社)

自分の夢に向き合うために東京に戻る決意を打ち明けたパン子二人の結婚について持ちかけることができなかった高橋くん

お互いに好き同士でもすぐさま結ばれるわけじゃない。好きだからこそ自分で考えて、自分で決めて、自分の足で立っていたい。そう思えるパン子も、それを受け入れられる高橋くんも素敵だ。

最後、二人とも相手に見えない場所で大号泣するシーンには泣いた。高橋父(母)がパン子とパン子母の間の良き緩衝材になっているのも良い。

本当の意味での「自立」ってやっぱり難しいけど、ここを乗り越えた先の二人を見たい。

9月にスピリッツで始まった松虫先生の新連載『林檎の国のジョナ』も注目です。

(※2023年12月8日追記)諸事情により『林檎の国のジョナ』は3話で連載終了とのことです。残念。


生徒会にも穴はある! 5 / むちまろ(講談社)

むっつりで一途な会長が可愛すぎる。とどうにかこうにかくっついてほしいけど癪なのでくっつかないでもほしい(?)。バイトを頑張る陸奥も可愛い。陸奥が幸せでいてくれたらもうそれでいい。

夏休みに生徒会メンバーで島へ旅行!これは水着回確定!と思ったら次巻に持ち越しで生殺しもいいところだよ。

いつもの豪華作家陣の寄稿でかにかま先生が当然のようにたんを描いていてグッドだった。描くならたんか陸奥だろうなとは思ってた。


ややこしい蜜柑たち 2 / 雁須磨子(祥伝社)

5年前に一悶着あった女性にじんわりと迫られる白柳くんの立場がなんとも言えないというか、清見が不気味すぎる、というのが一番の感想。

ここに人気イラストレーターの不知火さんも絡んでくるけど、清見の良き相談役ポジションに落ち着いてしまっている状態。ややこしや。そして現状のこの三角関係に初夏が投入され、さらにややこしくなることが確定しているのだ。


スクールバック 2 / 小野寺こころ(小学館)

高校の用務員・伏見さんの目を通して描かれる高校生たちの日々。高校生たちが被る理不尽の殆どが、親だったり、教師だったり、見知らぬサラリーマンだったり、「大人」から降りかかって来るのがどうもやるせなくて苦しい。大人も所詮一人の人間とは言え。

一人で悩んでしまったり、生徒同士で揉めるタイプの生徒の話の方が純粋に読める気がする。仲良しグループで他人の悪口ばかりで盛り上がる話はスカッとした。あと幕間の伏見さんのプライベート回好き。


青野くんに触りたいから死にたい 11 / 椎名うみ(講談社)

青野母の虐待行為そのものも怖いけど、表情がコマ毎に変わるのが本当に怖い。笑ったと思ったら怒って、泣いて、困って、無表情になったと思ったらまた笑う。この情緒不安定さが一番怖しい。

最終的に鉄平は祖父母の家に預けられ、青野くんは母と暮らすわけだけど、過去編はここで終わり。

話は現代へと戻り、混乱真っ只中の文化祭の舞台上、立ち尽くす優里の腹は妊娠したように大きく膨らんでいた…。受肉編加速!


私の胎の中の化け物 4 / 中村すすむ(講談社)

青砥との化け物対決に勝利した千夏の悍ましい衝動は、遂に友人たちに向けられ始める。「そもそも友人でも何でもなかった」というだけでは片付けられない辛い展開にしかならなそうでもう辛い。青砥との一件も今後尾を引きそう。彼女はどこまで行くのか…


クジマ歌えば家ほろろ 4 / 紺野アキラ(小学館)

節分やらバレンタインやら新の友達に身バレやらがあったのち、遂にやって来た兄・英の大学再受験はまさかの「シリツゼンブオチタ。」という最悪の幕開け。頑張れ…!とにかく頑張れ…!!


トリリオンゲーム 8 / 稲垣理一郎・池上遼一(小学館)

ガクと桐姫が手を組み、「T-REX連合」としてメディア事業は成功。桐姫はドラゴンバンクから事実上離れ、黒龍社長は徹底的にハルたちを潰しにかかる流れに。第3勢力となった桐姫はハルガクらに携帯キャリアの新事業立ち上げを持ちかけ、ハルは桐姫の提示した1兆円の準備資金を確保するために遂にトリリオンゲーム社の上場に乗り出す。

感情が追いつかないようなスピードで話が進むので、登場人物たちの目的を見失いそうになるけど、ここからが本当の「トリリオンゲーム」ということと、どこかで桐姫が手のひら返しするんだろうということは分かる。

株式公開編に入って明らかに「この作品はフィクションです。」の注釈だらけになったのは面白かった。今まで以上にブッ飛んだやり方で押し通している感じなので。


ゆるキャン△ 15 / あfろ(芳文社)

イヌ子とメイの山梨縦断サイクリング編。いよいよ本格的に『チャリキャン△』になってきた感。丁度、今年山梨まで走りに行ったので懐かしくもあり。これはこれで面白いけど、なでしこ全然出てこなかったのでそこは減点対象です(なでリン過激派)

個人的には「自転車」と「キャンプ」はあまり結びつけたくないので、自転車を出すならゴールでキャンプしてくれない方が嬉しいけど、それだといよいよ『ゆるチャリ』になってしまうか。アニメ3期もなんだかんだ楽しみです。


よふかしのうた 18 / コトヤマ(小学館)

キクとマヒルの一件を終え、日常に戻ったナズナとコウ。そしてナズナは自覚する、自分が抱く感情を。

本誌では完結に向けた告知がされ、いよいよ物語も締めに入ってきた印象。なんか最後はマジでボロ泣きする根拠のない自信がある。コトヤマ先生はこういう時、憎い演出をしてくる予感しかしないんだ。


天才魔女の魔力枯れ 2 / 辻島もと(小学館)

魔力を使い切り、無能になってしまった元天才魔女が自分を慕ってくれる弟子やその他友人たちに支えられながら復活を目指すゆるギャグラブコメディ。この期に及んで小賢しい魔女が本当に可愛い。果たして復活の日はやってくるのか。


涙子さまの言う通り 2 / 山本ルンルン(KADOKAWA)

1巻で提示された「慈愛の涙/犬飼涙子」の危うさが沢渡刑事の身近な人物に向けられ始める2巻。だいぶ本格サスペンスの様相を呈してきて怖いけどゾワゾワ面白い。頼むから妹にだけは手出さんでくれ…


恋文と13歳の女優アクトレス 3 / じゃが(芳文社)

真面目で仕事人間だけどぼんやりもしていて、そこが魅力なような弱みなような文のこのどっちつかずな性格が面白いけどもどかしい。まぁ文乃に手出しちゃったらアウトなのでそこはちゃんと線引いて欲しいですが。


IDOL×IDOL STORY! 3 / 得能正太郎(芳文社)

4人組×4グループの計16人の動向を把握するのがだいぶ苦しいけど「アイドルオーディション」というテーマなだけにそうせざるを得ない感。もうみんな合格でいいよ!とかいう甘い感想になってしまう。


ヤニねこ 2 / にゃんにゃんファクトリー(講談社)

ヤニカス獣人の腐った日常を描く汚作の2巻。作者は複数人の集団で持ち回りで作っているんですね。誹謗中傷された事件とかもあったみたいですが、それすらも作風的にそこまで違和感ないのが面白い(誹謗中傷がダメ絶対ですが)


つらねこ 2 / 熊倉俊隆(KADOKAWA)

「自分の住む町から出られない」という特異体質を持つ主人公・知里。裏世界のような空間「ネドコ」を経由して別の土地へ行ける力を持った六尺さんと行動を共にするように。新たな世界へ足を踏み入れた少女は、新たな感情を知る。

色々散りばめていく段階な感じ。3巻で少し核心に触れて4巻で完結、くらいが個人的には一番嬉しいです(気が早い)


イジめてごっこ。 6 / 南文夏(白泉社)

ゆかちゃんの大学の友人・まこちゃんは、援助交際で心も身体もボロボロになっていた。ホテルに入る直前で呼び止め、自分部真っ直ぐな気持ちを伝えるゆかちゃんだったが、まこちゃんの心には響かず。一方、まこちゃんのDV彼氏・瀬戸くんのバイト環境・家庭環境も相当ヘビー。

正直読むのも辛い内容だったけど、実家に帰ったまこちゃんが自分で更生しようと思えただけでも救い。SM道の更なる高みへと登る真広さんも関東への転勤が決まってまこちゃんとの遠距離が確定。NTR展開だけは回避してほしいけど、結構重めなのが飛んできても納得してしまうくらい濃い巻だった。


嘘の子供 3 川村拓(スクウェア・エニックス)

市役所で働く先輩嘘アニマルの物部さんの過去。大切な人を失くしたり周囲との関係が希薄になった人たちにとって「嘘の子供制度」はやっぱり有効なんだと思う。


【推しの子】 13 / 赤坂アカ・横槍メンゴ(集英社)

アクア(吾郎)がルビー(さりな)に前世を打ち明けるシーン、盛り上がりはあったかもだけど、正直もはやそこまで重要なことではないことに思えてしまって、そこまで乗れず。結局やることは変わらんわけだし。ルビーの心持ちが変わるのは紛れも無い大きな変化だけど。


クラゲの骨は青 2 / 追本(講談社)

工藤の周りで起こる不審な事件と、遥花が過去に会った夏樹青という人物。そして「屍人憑き」の噂。もう答え出た感じ。ただ目的とかは謎なので無事完結まで描き切られるように願っております。



まとめ・雑記

そんな11月でした。ってもう11月終わっちゃうのか…

今月は1巻が豊作だった印象です。中でも『君と宇宙を歩くために』『佐々田は友達』はツートップという感じ。『雷雷雷』『サチ録』『ずっと青春ぽいですよ』とかもおすすめです。

完結した『おとなになっても』『宇宙の音楽』もそれぞれ良い終わり方でした。終わって改めて自分の中での評価が上がった気がします。

既刊の『転がる姉弟』も大好きな作品になりました。チンポラップに元気を貰う毎日です。チンポン!!ポンチン!!チンポポンチン!!イェア

12月は何かと騒がしい月なので楽しみな反面、今からもう既に気疲れしてしまっている自分もいます。とりあえず今年のまとめの何かは書きたい所存。

「このマンガがすごい!」も発表されるんでしたっけ。忙しくなりそうです。

ちいかわ島編のラストを受け入れたくなさすぎて、このままセイレーンたちは島を素通りしたと思い込むことしました。ナガノ先生鬼か。

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