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いや、無理でした

父と話をしたかった

いや、無理だよ

わたしも父も口下手で

話をするのが苦手だった

いろんなことを思い出す

わたしはあなたに思っていることをほとんど言えてない

孫たちに対してはやさしい、いいじいちゃんで

いろんな知恵をいっぱい与えた

賢いじいちゃん

孫と娘は違うのか

あぁ、そうかわたしとあなたの間には
重い重い問題があった
あなたが持ってきた病を
わたしが引き受けた

あなたはわたしに
労りの言葉を一回でも
かけてくれたら
わたしは流せたはずだと思う

その言葉を死ぬまで聞けなかった

あなたはあなたの父親と同じことをわたしにした

ちゃんと向き合おうとしないで

逝ってしまった

その代わり母はしっかり向き合ってくれだけれど
それは母との問題ではない

愛情深い母と親の愛を知らない父に育てられ
わたしはいびつになっていった

いえいえ、あなたのせいだとは言わないけれど
わたしも親としては至らないから

親からは放り出され、棄てられた
他人様に育ててもらった

常々あなたはそう言っていた

自分の父親とも向き合おうとしなかった
病のことも
直接話をしないで内容証明をわたしに書いて送らせた

「あのじいさんは人間ではない」と母方の祖父に言わしめるほど、人間の心を持たない父方のじいさん

そんな血を分けた父
そしてまたわたしにもその血が流れている

おぞましい
時折生きていたくなくなる
消えていなくなってしまいたい

晩年のあなたはよく鏡を見て
自分の父親と同じ姿になり
「この血を抜きたい」とつぶやいていた

だからわたしも母のことを自分では分からないうちに傷つけていなかったか
といつもいつも反省する

もう少しやさしい言葉を掛ければ良かった
今さらだけど
いつもいつも思う
後悔をしている

自分のやったことは自分に還る
わたしは自分のことしか考えない

分からない、知らないという言葉を繰り返すだけ
ただのワガママと
息子はイラつくと必ずわたしを責める
痛いところをついて来る

母がいなくなってからも
それは変わらない

かなしいかなそんなわたし
生きている価値ないと思う

自分を変えようともしないで

自分を変えるのは
とても大変なこと

無理と決めつけることはない
わたしは変わらないと

おぞましい血を少しでも消してゆかないと
それが生きる意味なのか

それがわたしの使命なのか





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