見出し画像

8、社会復帰は波乱含み   ①すべては母のお陰で

8、社会復帰は波乱含み   ①すべては母のお陰で

平成元(1989)年、最後の月に長男を出産。その後、産経新聞社に新設された育児休暇制度活用1号となって、職場に復帰した。
残念ながら、同期のMは様々な事情で、退職する事になってしまった。育休中もお互いの家を行き来しながら頑張ったのに、本当に残念だった。その後も変わらぬ友情は続いた。
会社に戻る前に、年末に開かれた文化部の忘年会に招いてもらった。久しぶりに見るメンバーの顔は懐かしく、新しい顔ぶれも加わっていた。多摩支局に私を引き継いで配置された後輩の内の一人、女性記者のKが文化部に配属になっていた。もう一人のNは外信部だった。
賑やかな顔ぶれになっていた。息子のためのプレゼントと、ディズニーのビデオなど、沢山お土産を抱えて買った事を覚えている。
いよいよ始まるのだなと、噛み締めた。

その一方で12月に入って、長男の慣らし保育が始まっていた。最初は数時間の預かりで、子供を園の環境に慣らす。その後、じわじわと、預かり時間が増えて行き、最終的には午前9時から午後6時まで。通常は午後5時だが、とてもお迎えが間に合わないし、母の負担を少しでも減らしたいと、1時間の延長保育を希望し、申請が通った。
多くの子供が、慣らし保育では母親と離れる事を拒み、かなり手こずる。が、我が家は、あまり母親の私に子供たちが期待していないのか、3人どの子供も慣らし保育はスムーズだった。じゃあね、バイバイ!と言う感じ。嬉しいやら、あら、そんなお別れ?とも、何とも複雑な気持ちの働くママではあった。

年が変わり、平成3(1991)年、正月明け。職場復帰した。出産前はJR西荻窪駅から中央線一本で東京駅までの出勤だった。が、通勤風景が変わった。
最寄りの私鉄駅から途中で地下鉄直通に乗り換え、もしくはラッキーだと地元駅から直通に乗れた。そして、もう一度地下鉄に乗り換え、大手町駅まで。通勤時間は片道40分ほどから1時間に増えた。
出勤前に9時前には長男を送り届けるので、実家からは最寄りの保育園からは離れていた我が家を、バスで乗り継いで送っていた時は午前8時に出た。が、あまりに時間がかかるし、雨の日はバスがギュウギュウ詰めになり、赤ん坊を抱えての出勤は大変だった。
あれこれ思案し、結局、免許を取ってから全く運転する必要が無かったのだが、車で送迎しようと、ペーパードライーバー教習に通う事にした。朝の送り時間がぐっと短縮された。当時、我が家は三菱ギャランシグマで、結構、車の横幅があり、実家の車庫入れが最初は手こずった。が、免許を取得していた事が、こんなにありがたいと感じられた事はなかった。
小さな息子を安心して保育園に届ける事が出来るようになった。
今は、近場の保育園でも、若い父親たちが子供を送る姿を良く見かけるようになった。実に羨ましい光景だ。当時は、ほとんどそんな父親はいなかった。もちろん、我が家は例外ではなかった。保育園の送迎は全て、母親、おばあちゃんの仕事だった。
また、時折早く出れると、W保育を受け入れる2軒目の園の送迎バスを園の入り口で見かけた。本当に大変だなあと、涙が出そうになった事もあった。

が、自分の帰宅は、とても午後6時には間に合わなかったので、母が毎日、雨の日も風の日も迎えに出てくれた。金曜日には、1週間、昼寝に使った布団カバーなどを布団から外して、一式も持ち帰らねばならなかった。面倒な事だったと改めて思う。稀に仕事から直帰出来た日には、自分が迎えに行った。いつも金曜の延長保育の子供たちは、みんなホールに集められて、その日の午後4時半から放送されていた『それいけ!アンパンマン』を見ていた姿が忘れられない。
そして、迎えに到着した母親たちに子供たちは満面の笑みで飛びついて来てくれた。
ステキな光景で、大好きだった。

母は孫を連れ帰ると、迎えに行く前から少しずつ下ごしらえしてくれていた夕食を完成させ、父が帰宅すると、一緒に長男に食べさせてくれていた。いつも帰宅が一番遅くなるのは私だった。
本当にありがたい事に、母は私の分の食事まで、毎晩、用意してくれていた。なので、自分は会社から実家に直行し、用意された温かい食事をいただき、夜遅く、大体午後9時前後に帰宅の途に就いた。帰宅したら、お風呂に入って寝る。その繰り返しだった。

こうして、自分は母のお陰で仕事が続けられたのだった。
今でも、本当に実家に足を向けて眠る事は出来ない。

そうこうして、やっとの事で会社に復帰した。
出社初日、W文化部長に早速、「神津クン」と、呼び出された。そして、彼の口からは、思わぬ言葉が飛び出した―。

「え、そんな…」

<写真キャプション>
大好きだった手塚治虫さんのご長男に取材させていただいたことも、良い思い出です。

※いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。
お盆休みは休載します。また、1週間後にお目にかかりましょう。
感謝、感謝です。毎回。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?