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異世界に転生したい私たち

こんにちは、何者でもない相葉と申します。
noteを投稿し始めた時は、誰の目にも留まらないのでは…と思っていたのですが、反応頂けて大変嬉しく思っております。
ありがとう御座います!モチベーションになっております。

今回はちょっとエッセイに近い感じ…

「異世界転生」モノ、多くない?

ゲームの業界でお仕事(企画職の末端の末端ですが…)をしていますが、1からゲームの企画や世界観を考えたりする機会は、実はそうそうありません。
スマホが普及し始めた当初、ガラケーからスマホへの過渡期は「ソシャゲって儲かるらしいよ」と安易に手を出しては、秒で散っていくタイトルも数多くありましたが、今は不景気も相俟って、新作を作るハードルがグンと上がりました。
とはいえ、コンペ用に企画を考えたり設定を作ることは、そこそこまぁまぁやって来たりします。(もちろん頻度はかなり減りましたが…)

全ての‟ものづくり”に言えることだけど、企画や設定を作る上で、「今何が流行っているのか、どんなものが多くの人に刺さるのか…」を知ることは最低限の市場調査とも言えます。
その中で、近年誰もが思っていることが1つあります。
「異世界転生もの多くない?」

皆さんの異世界モノはどこから?

女性ターゲットのタイトルを例に出して申し訳ないのですが、
マンガだと「ふしぎ遊戯」「魔法騎士レイアース」、それからネオロマンスゲームとして一世を風靡した「遙かなる時空の中で」は、主人公が自分の姿そのままで異世界へと転移する話です。

1990年代のアニメ・漫画で、ファンタジーといったら鉄板の設定でした。(ですよね…?)
主人公の女の子が異世界に転移して、その世界の問題を解決する……そんな序章から始まる物語ですが、基本的に転移先の異世界では「割と歓迎されて、好待遇を受ける」のに対し、その土地の人々から石を投げつけられる「十二国記」は、こんな辛い異世界転移もあったものだ…と当時、衝撃を受けたものです。
(歓迎されない異世界転移……ハードモードすぎて心が折れてしまう…)

と、自分の姿そのままで異世界へ転移する設定が多かったのに対して、昨今の作品は、主人公は今生きている世界で一旦死んでから、異世界で「別の容姿」に生まれ変わって物語が始まるのがスタンダードになりました。
もちろん、これだけ作品がありますから、必ずしも…ではないのですが…
(ちなみに、別の姿はスライムだったり、人以外であることもあるし、美男美女だったり、そうでもなかったり…とパターンは無数にありますヤッタネ!)
時代の流れと共に、自分自身が、「今の状態で転移すること」から、「自分自身は一旦死んで、別の姿で異世界転移すること」に変わっていきました。

人と比較してしまう世の中

「異世界転生」が流行る理由、多くの共感を得ている理由として、私自身が思うことは、ただ1つ。
それだけ「今の自分に満足出来ていない人が多い」ということ。
(色々な見解があると思うので、もちろん一概には言えないのですが…)
もちろん、満足の基準は人それぞれです。

現代は、SNSの世界でもあり、良くも悪くも、人々が数値に踊らされている時代です。
業界で言うと、声優のキャスティングにフォロワーの人数を加味して選考するコンテンツも当然ありますし、きっと多くのビジネスの場でも、同様でしょう。

私はガッツリオタクなので、当然、友人もガッツリオタク。
その中で、やっぱりみんな数値には踊らされている。

同人の世界では、Pixivの台頭により、ブクマが数の多い少ないで翻弄されるようになりました。(昔はアマチュアイラストの上手い下手を可視化するツールはありませんでしたから…即売会に行き、とあるスペース前では人が賑わってんな~、と感じたり、絵めっちゃ上手いな~とか、○○さんは大手だよ、とか人伝に聞くくらい)
コスプレの世界でも、いいねとフォロワーの数に翻弄される。
(写真が伸びない…とか○○さんはフォロワー少ないよね…とか、そういう闇もめちゃくちゃある)
数だけではなく、SNSを通して、他人を広く、浅く見えるようになり、投稿している写真や文面で、どんな生活を送っているのか、どこに行ったのか、等、たくさんの情報が見えるようになりました。(ガチャで何を引いてる!とかね)

そんな世界では、多かれ少なかれ、他人と比較してしまうのも無理はないと思います。(隣の芝は青いとか、他人は他人!と思っていても、気になっちゃうもんなんだよな…もちろん全く気にならずに己の道を進む仙人のような人もいらっしゃるけど…)

いやー。辛い世の中だね……他人と比較したらキリがない。
「もっと絵が上手くなりたい」「もっと可愛くなりたい」「お金があれば」「学力があれば」……理想は尽きないものです。
今の自分の力では、どうしたって叶えることが難しい欲も当然あります。
その気持ちが「今の自分ではなく、別の自分になりたい」という気持ちに昇華するのは、めちゃくちゃ理解できます。

こうありたいと願った夢の形

昔、ゲーム会社の先輩(有名タイトルを手掛けている超ベテランの方)が
「今のラノベが、おっさんに刺さるのは当たり前。だって、過ごせなかった青春や、こうなりたいっていう妄想を描いているのは、おじさんだから」
と言っていた言葉が、今でも強く印象に残っています。

その時に流行っていたのは、いわゆる学園ラブコメ系でした。
昨今、友人のお母様や、父親が、韓流のらラブコメ系ドラマにハマっている様子を見ると、「ああ、そういうことなんだな…」と、先輩の言葉を思い出します。

ラノベや漫画はエンターテイメントです。
異世界転生ものは、フィクションです。
(いや、現実に異世界転生して、カムバックした方がいるかもしれんけど!)
誰しもが作品を娯楽として楽しみつつ、けれども、心のずっとずっと奥底、
きっとそれは本人も知らないような深層で、
「別の自分」になって、異世界転生して無双したり、悪役令嬢として「ざまぁ」したり、冒険者になってギルドに向かったり……そんな体験をしてみたいと一度は思ったことがあるからこそ、異世界転生の作品が世に広く受け入れられているのだろうなと思います。
いや、もちろん、中にはエンタメとして純粋に楽しんでいる方もいるだろうけど!(少なくとも私は厨二病末期患者なので、異世界転生したいってずっと思っています)

いつかまた‟異世界転移”が流行るといい

「自己肯定感」
書店へ行けば、この文字を見ない日はありません。
それどころか、心理、自己啓発、話題書、ビジネス……ありとあらゆるコーナーで、しかも平積みで陳列されている。
我々オタクに限らず、自己肯定感に悩む人がいかに多いかが分かります。

昨今の「異世界転生」のように、今の自分が死んで、異世界へ行く物語ではなく、そのままの自分で異世界へ転移する物語が、再び隆盛する日が来ること……は、現実と照らすと、当面難しそうな気はしますが、「今の自分も悪くないよね」と多くの人が思える時代になればいいな、と思わずにはいられません。

とりあえず、創作くらいはもう少し「今の自分にも」設定を盛ってあげなさいよ!!

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