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今後、どのような状態になれば「コロナは収束した」と思えるようになるのか?

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*****令和5年4月30日(日)第157号*****

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今後、どのような状態になれば「コロナは収束した」と思えるようになるのか?
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◇─[はじめに]─────────

 新型コロナの感染症法上の位置づけが、この大型連休明けの5月8日から、インフルエンザと同等の「5類」に移行します。その一方で、東京都内の新規感染者数は「増加傾向」をみせています。

 テレビ等のニュースでは、海外に出国する人が空港のカウンターに大行列をつくって順番待ちをしていたり、スポーツの試合でも会場に大勢のファンが詰めかけ、大声を出して選手を応援しています。

 弊紙発行人は東京の郊外に居住しておりますが、スーパーマーケットに買い物にいった際には、マスクを外している人の数が着実に増えていることを実感します。これらの「流れ」はもはや「逆戻り」することはないでしょう。

 今後、新型コロナの新規感染者数が減少して、専門家による「収束」宣言が出されれば良いのですが現実には、多くの専門家が「例えば東京では、5月上旬から中旬にかけて、新規感染者数の増加がピークを迎える」等と予測しています。

 いずれにせよ、今後は新型コロナの感染に対して、マスクの着用をはじめとして「個人の判断」で対応しなければならなくなります。しかし「個人の判断」と言っても、現実には各個人によって、考え方に「大きな幅」があります。

 これを踏まえ東京都では、新型コロナ対策の司令塔を担う組織「東京iCDC」が先月、20代から70代の都民35人に対し、インタビューを行いました。内容は、これまでのコロナ渦の生活をどのように感じ、何をもって「収束した」と受け止めるか――等です。

 弊紙発行人は、今後のコロナの感染防止対策に対して、介護サービスを受ける高齢者を中心とした「慎重派」と、若者を中心とした「楽観派」に分かれるのではないかと推測していました。

 今回のインタビューの結果をみると、全体的に「慎重」な考えを持つ人が多いのではないか、と実感しました。そこで今回の本紙では、読者の皆さんが今後の「個人の判断」を下すための参考にすべく、インタビューの内容をご紹介することにいたしました。

 今回の記事が今後の、皆さんの「行動基準」を決定する際のご参考になればと思います。どうか最後まで、ご一読頂けますと幸いです。

 日本介護新聞発行人

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 今回の記事は「東京iCDC」が3月に実施した、グループインタビューの調査結果で、弊紙が着目した点を取り上げて、ご紹介いたします。インタビューの概要は、次の通りです。

 ◇調査方法=グループインタビュー(120分)
 ◇実施場所=都内のインタビュールーム
 ◇調査対象=東京都に住所を有する20代から70代までの35人(6名×6グループ=本来は36人だが、1人欠席して35人)
 ◇グループ設定条件=性別・年齢層・居住地・コロナ感染経験などに偏りがないように設定
 ◇調査期間=今年(2023年)3月8日(水)~3月11日(土)
 ◆インタビュー項目
 ▼「新型コロナ流行による影響」は?
 ▼「新型コロナの収束」「コロナ共生のイメージ」とは?
 ▼「今後、行政から発信してほしい情報」「 行政に取り組んでほしいこと」は何か?

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結論=「コロナの収束は、人々の気持ちの落ち着きによってもたらされる」
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 「東京iCDC」は、今回の「まとめ」として、次の4点を指摘しました。なお「結論2」「結論3」の内容はインタビューとは別に、都民に対して「東京iCDC」が実施したアンケート調査の結果を含んでいます。

 ■結論1.コロナ流⾏によって、都民のくらしにはポジティブ、ネガティブの両面で様々な影響があった。

 ■結論2.コロナ陽性との判定を経験した人の4人に1人は、後遺症を疑う症状があった。そのうちの多くの人は後遺症による⽇常生活への支障があったと回答し、仕事(学業)を休んだ人もいる。

 ■結論3.今後の流⾏によって感染し、医療を受ける可能性について、回答者の多くは認識している。そして「今後はどのように医療を受けるのか」「どのくらいの医療費がかかるのか」について漠然とした不安を抱えている。

 ■結論4.収束についての捉え方は様々であるが「医療提供体制の進展だけではなく、人々の気持ちの落ち着きによってもたらされる」という考え方も示された。

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新型コロナ流行による影響=ポジティブ・ネガティブの両面から、多角的な意見が……
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 まず、コロナが流行したことによって、経済面・生活・社会活動・教育などの面で、「どのような影響と変化があったのか?」を尋ねました。これには「ポジティブ(肯定的・積極的)」と「ネガティブ(否定的・消極的)」の両方の意見が出されました。

 「ネガティブ」な影響としては「旅行や遊びに行けなくなった」「人との交流が減った」といった、外出自粛や人との接触を減らすこと等にともなう影響についての意見が多く聞かれました。

 また、医療機関や高齢者施設の面会制限による影響、教育環境の悪化の深刻さについての声もありました。一方「ポジティブ」な影響としては「テレワークで勤務環境が良くなった」

 「ネットでの楽しみが増えた」など、オンラインの活用・普及による変化についての意見が聞かれました。具体的には次の通りです。この中で「▼印」は、高齢者や介護サービスに関係する事項です。

 ■■ネガティブな影響■■

 ■【旅行や遊びに行けなくなった=9名】
 「家族で海外旅行に行っていたので、それができなくなったのはストレス」(20代女性)
 「父も高齢で、いろいろなところに行けないのはかわいそう」(50代女性)

 ■【人との交流が減った、外食ができない=10名】
 「中学の同級生と2ヶ月に1回くらい会っていたが、全く出来なくなった」(60代女性)
 「毎月勉強会をやっていて、社外の人との横のつながりがあったが、その勉強会がなくなった」(50代男性)

 ■【入院した人に会えなかった、看取れなかった=3名】
 「自分が入院しているときに、家族が荷物を持ってきてくれているのに会話も出来ない」(30代女性)
 「親戚がコロナとは違う病気でなくなった。ワクチンの(接種の)前だったので、看取れなかった」(40代女性)

 ■【教育環境が悪化した=5名】
 「2020年の4月から大学に入学。東京に来て、キャンパスライフも出来ないし、人とも会えない」(20代男性)
 「孫が小学校6年で卒業式もなく、中学の入学式もクラブ活動もなくて、楽しい生活を送れたはずなのにかわいそうだった」(70代女性)

 □□ポジティブな影響□□

 □【テレワーク推進で勤務環境が良くなった=8名】
 「会社でリモートワークを推進してくれた。そんなのは全く無かった会社なので、会社が進んでいった」(40代女性)
 「コロナになって、働き方がかなり違った。テレワークとかZoomのような、ウエブ会議のツールがかなり普及した」(50代男性)

 □【テレワークで通勤がなくなった=4名】
 「仕事もテレワークが出来るようになって、通勤の時間を寝る時間にあてられるようになった」(30代男性)
 「幸いなことに、2020年の3月から在宅になった。通勤のストレスが減った」(60代男性)

 □【ネットでの楽しみが増えた=4名】
 「足が悪くて家にいるが、家にいる辛さが分かる人とかSNSで繋がる人が増えて、ネットでの出会いが増えたのが良かった」(30代女性)
 「ネットでテイクアウトをしたり、ネット動画を新しく契約したり、家にいて色々な時間の使い方が出来るようになった」(20代男性)

 □【飲み会などの嫌な付き合いが減った=2名】
 「会社の忘年会とか飲み会とか『絶対出席』と言われているものが⼀切なくなった。残業もしないで『早く帰っていい』とか、職場での強制的なストレスがすごく減った」(40代女性)

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新型コロナの収束=「終わってはないが、すでに収まっているとは思う」との意見も…
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 新型コロナの感染は、今後もある程度続いていくと思われますが、それではどのような状況になったら「収束した」と思えるのか? それから「コロナと共生」にどのようなイメージを抱いているのか尋ねました。

 この結果「コロナの収束」や「コロナと共生」のイメージは人によって異なり、なかには「すでに収束している」と考える人もいました=画像・東京都HPより。「収束や共生の条件」としては、感染者数の低下や治療薬の進歩、どの医療機関でも受けられる環境等が挙げられました。

 さらに「人々の気持ちの落ち着きがもたらすもの」との受け止めもありました。具体的には次の通りです。前項と同様に「▼印」は、高齢者や介護サービスに関係する事項です。

 ■【インフルエンザと同じような感覚で捉えられるようになったら=9名】
 「インフルエンザ並み、普通の風邪並みになったら収束。季節の風邪と⼀緒で、毎年これから延々と続いていくと思う」(70代男性)
 「インフルエンザと同じ感覚で、みんなが⾏動するようになったら元通りになったなと思う」(50代男性)

 ■【感染しても、普通のことと思えるようになったら=3名】
 「ふつうに『コロナにかかっちゃった』と言えるようになったら、特別なことではなくなる」(60代女性)
 「誰でもかかる、みんながかかる、かかる人が多くなる、かかって当たり前という状況になったら」(50代女性)

 ■【病院で、他の病気と同じように診てもらえるようになったら、病院がひっ迫しなくなったら=5名】
 「病院で、ふつうに診察してもらえるようになったらコロナも特有のものではなくて、ふつうの病気の一つとして診てもらえる」(30代男性)
 「介護施設も含めて、医療機関(に関する様々な制限等)が緩和されて『医療機関や現場が普通に動き出すこと』が、ある程度目安になると思う」(60代女性)

 ■【治療薬が普及したら=7名】
 「治療薬が市販化されて、風邪薬と同じくらいの価格で買えたら。病院で処方箋を出してもらわないと買えないのではなくて」(40代男性)
 「薬が出たら。インフルエンザの薬は普通のクリニックでも処方してもらえるので、普通の病気の感じで医療が受けられると収束かな」(30代女性)

 ■【感染者が十分に減ったら=3名】
 「ニュースを見ていて、重症者数とか死亡者数が明らかに減ってきたら」(50代女性)
 「感染者数が1ケタになったら収束かな。ゼロという訳にはいかないと思うけれど」(60代女性)

 ■【報道されなくなったら=1名】
 「テレビで、毎日のように感染者数が発表されることがなくなったら。今も夕方に毎日やっているが、それがなくなったら収束」(20代男性)

 ■【すでに収束・共生している状況だと思う=4名】
 「もう収束していると思う。新規感染者が減っているし2類から5類になると決まったから、それを考えると『終わってはないが、収まっている』とは思う」(60代男性)
 「自分の中では『収束している』と思っている。重症化率が極端に低いから。かかっても普通の風邪くらいのものの方がほとんどだから」(40代男性)

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行政から発信してほしい情報=「感染者の報告を止めた途端に大変なことになるのでは」
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 最後に「今後、行政から発信してほしい情報、行政に取り組んでほしいことは何ですか?」と尋ねました。これには感染者数について、目安となるような情報(増減の傾向など)を求める声が上がりました。

 また、感染時の対応(連絡先、受診先など)に関する情報の提供継続の希望もありました。さらに「個人に対してだけなく、事業主や病院、学校に対する情報発信をしてほしい」

 「医療体制の整備を含めて、今回の経験を今後に活かしてほしい」との声が聞かれました。具体的には次の通りです。この項目も同様に「▼印」は、高齢者や介護サービスに関係する事項です。

 ■【感染者数の公表は続けてほしい=5名】
 「数が増えてくれば、どういう『株』かも検査をするだろうし、数字はある程度追って欲しい。何千人台とか、アバウトでも『増えてきた』と⾔ってくれたら、また気をつけ始めると思う」(40代⼥性)

 「感染者情報の報告は、毎日して欲しい。これは続けてくれないと、なくなったら何を頼りにしたらいいか分からない。(感染者の報告を)切った途端に、大変なことになりそう」(60代男性)

 ■【感染した際にどうするか受診できる病院の情報=7名】
 「ワクチンの情報と病院の情報」(70代男性)
 「かかったという予感がしたときに、どこに連絡をすればいいのか。医者に⾏く前にどう対処すればいいのか」(70代男性)

 ■【事業主や病院、学校に対しての情報発信信=3名】
  「⼀般市⺠に対してより、事業主とか病院側にアピールしてほしい。⼀企業で判断は難しい。指標を指し示してくれたら、企業も動きやすいと思う」(30代男性)
 「学校関係。子どもがいるので『安全ですよ』と⾔う情報を、教育現場から真っ先に周知できるようにして欲しい」(50代男性)

 ■【ワクチン費用・治療費用の支援=11名】
 「ワクチンも無料じゃないと打たない人はいると思うので、高齢者は無料で打てるといい」(60代女性)
 「医療費は、補助してもらうとありがたい。それも年代によって。高齢者とか基礎疾患のある方には手厚い補助が欲しい」(60代女性)

 ■【病院での対応を整備=7名】
 「(これまでのコロナ対応で)医療機関の連携や、他の病気でも『たらい回し』になっていたが、それが生じないようなシステムは継続してもらいたい」(30代男性)
 「今、コロナは特別な病院でしか受け入れていないが、これからは普通の病院でも受け入れてくれる体制ができれば安心だ」(40代男性)

 ■【経験を今後に活かす=4名】
 「新型コロナで検討したり、やったことを風化させないで欲しい。今後もこういうのは出ると思うので、今回の経験をベースにやって欲しい」(30代男性)
 「今後、このくらいの感染症が広がることもあるかも知れない。これで対応を風化させないで、この対策を同じ様なことのために活かして欲しい」(50代女性)

◇─[おわりに]───────────

 今回出された様々な意見の中で、弊紙が最も印象に残ったのは「もう収束していると思う。新規感染者が減っているし2類から5類になると決まったから、それを考えると『終わってはないが、収まっている』とは思う」(60代男性)との指摘です。

 これを弊紙流に解釈すると「コロナはまだ終わっていない。しかし、政府が『5類にする』と言っているのだから、今後は全て『コロナは収まっている』ことを前提として、各個人は対応していかねばならない」になります。

 特に今後、5月中旬にかけて「ピークが来る」と予測されている新規感染者数の増加の時期には、政府は「収まっている」ことにこだわらず、場合によっては早急に「収まっていない」との認識に改め、必要な対策を迅速に実施する覚悟が求められます。

 この「判断」が遅ければ遅いほど、最も被害を被るのは高齢者の方々です。この点を踏まえ、弊紙は今後も「個人の判断」を下すのに有益な情報を、読者の皆さんへできるだけ早く配信して参ります。

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