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未知なるゲームをフェスに求めて

俺は疲弊していた。

アーマードコア6でものすごく興奮し、スターフィールドに心底ガッカリし、ピノキオに怒りの雄叫びをあげ、新生サイバーパンク2077とそのDLC『仮初の自由』でふたたびものすごく興奮する。この一か月近くというもの、ネガ/ポジの両極端に情緒が振り切れる日々を過ごしていたのだから、疲れるのも当然だ。サウナと水風呂は気持ちいいけれど心臓に悪い。

秋が来ると飽きが来るなんて寒い駄洒落だけれど、実際この時期は8月9月の大作ラッシュをなんとかさばいては毎年ヘロヘロになっているような気がする。とくに今年は、ティアキンが発売された5月頃から全く休まる気配がない……楽しみが尽きないのはいいこととはいえ、なんとも因果な趣味だ。

因果のダメ押しとばかりにやってきたのがSteamのNEXTフェスだ。NEXTの名のとおり、これは今後発売予定のゲームを特集し、無数の体験版を遊べるイベントである。とはいえ、完成品と見紛うようなものからプレイアブルの虚無までピンキリな体験版を漁る行為は過酷を極める。

日々のよしなしごとで忙しいあなたのために、俺がめぼしい体験版をいくつか遊んでおいた。礼はいらない。

SENTRY

まずは、今回遊んだ体験版で最も純粋に面白いと思えたゲームから。『SENTRY』はウェーブ形式で襲来するエイリアンから宇宙船を守るタワーディフェンスFPSだ。エイリアンを一定数ゴールさせてしまうとゲームオーバーなので、プレイヤーはそれを水際で防がなくてはならない。

各ウェーブの前には準備フェーズがあり、その間にプレイヤーは敵からドロップしたスクラップを使ってトラップ、回復アイテム、弾薬をマップ上に設置する。マップの構造と敵の導線を考えながら地雷や電撃マットを設置するのには、ただ撃ちまくるだけのFPSとは異なる戦略的な楽しみがある。トラップの種類もシンプルな殺傷系から敵をスローにさせるトリッキーなものまで様々で、手元のコストをやりくりするのが面白い。

準備が終わったら実行フェーズが始まる。若干の時間ロスは発生するもののプレイヤーは2回までリスポーンできるため、死を恐れてビクビク立ち回る必要はない。ヒット音やキルマーカーなどの演出もぬかりなく、エイリアンにショットガンをブチ込んだときの手応えのよさには思わずウットリしてしまう。

製品版ではマルチ協力プレイもあるというのだからまったく隙がない。文句なしでウィッシュリスト上位に直行だ。

Forgive Me Father 2

クトゥルフ×DOOMなFPS。線の太い書き割りのようなビジュアルが特徴的だが、逆にいえばそれくらいしか特徴がない。ショットガンの攻撃判定が大きいので雑魚ゾンビを数体まとめて吹き飛ばせるのは気に入った。

本作はクトゥルフホラーな雰囲気を出すためにゲームスピードが控えめになっていて、そのせいか書き割り風ビジュアル以上に平坦な印象を受ける。弾薬が少なめ、かつチェーンソーで敵を弾薬に変換するようなシステムもないので、バカスカ撃ったりゴリゴリ敵に近寄れるわけでもない。前作はスルーしてしまったのでわからないが、変にDOOMに寄せたせいでDOOMになりきれない部分がかえって悪目立ちしてないか?

ビジュアルには惹かれるものがあるが、おそらく購入はしない。

The Last Exterminator

うん、またDOOMなんだ。すまない。

ショットガンやマシンガンを乱射しながら赤とか青とかのカギを集めて先へ進む、まったく奇をてらわないDOOMクローン。この手のゲームはソウルライクと同じで、ほとんどの場合本家の出来の良さを再確認する結果にしかならない。そんなことわかっているのに、サジェストされるたびになんやかんやで手に取ってしまう。俺はそういうカルマを背負っている。

この『The Last Exterminator』と同じようなゲームは世の中に100万個くらいあるだろうけれど、だからといってこれがつまらないというわけでもない。キャラクターの動作がかなり速く、"動かしていて気持ちいい"というラインをちゃんと超えているので印象がいい。変に敵が硬いというようなこともないので、頭カラッポで撃ちまくるジャンクなラン&ガンが楽しめる。

とはいえ、体験版で遊んだ範囲では「それならDOOMやるよね」を覆せていない。これもまた、DOOMライクの背負うカルマだ。この類のゲームをいちいちウィッシュリストに入れるとキリがないので、今回は見なかったことにする。

EMPTY SHELL

古い監視カメラのようなVHS風のモノクロ画面が特徴的な、見下ろし型ローグライクアクション。

本作は「孤島にそびえる旧日本軍の秘密施設を探索する」というSCP的な設定で、死んでゲームオーバーするたびに別のキャラが別の場所から探索を開始するという形でニューゲームが始まる。マップ構造の変化やアイテムのロストにうまい説明をつけているのは高ポイントだ。

しかし実際のゲームプレイはかなり淡白な部類。ノイズ交じりの粗いグラフィックはいい味を出しているけれど、さすがに粗すぎて画面でなにが起こっているのかよくわからない。音声もざらついたローパス加工がされているので、謎めいた怪物に襲われる恐怖の生々しい部分がカットされすぎているように感じた。

ハマりそうでハマらない、でもちょっとハマりそうな……いややっぱハマらない、そんなゲーム。俺のウィッシュリストには入らない。

ANOMALY AGENT

時空や重力などの超自然的異常アノマリーを調査するエージェントとなって戦う横スクロールアクションゲーム。吹き出しの台詞がせわしなく動いたりするあたりには『Katana ZERO』の影響を感じたり感じなかったりする。

さほど目新しさはないが、アクションの手触りには光るものを感じる。攻撃を当てればヒットストップが心地よく、パンチ→キック→ショットガンのようなコンボのキレもいい。あらゆる行動をキャンセルして回避やパリィができるのも地味に気が利いていて、混戦状態でもストレスなく戦える。しかもこのゲーム、二段ジャンプが最初からできる。すべてのアクションゲームに必要なのは結局のところ二段ジャンプなのだ。

ドット絵横スクロールとしては優等生な『ANOMALY AGENT』だが、もう少し突き抜けた部分が欲しい。今のままだと「ゲームパスにあったら遊ぶかも」程度であり、それはつまり「遊ぶ可能性はかぎりなくゼロ」を意味する。

とりあえずウィッシュリストに入れておこう。

GHOSTRUNNER 2

サイボーグニンジャになってサイバーパンク都市を駆け抜ける、一撃必殺一人称アクションの二作目。自分も一撃で死んでしまうがリトライも一瞬で、クリアするころには流れるように無双できているというホットラインマイアミ式だ。

滑らかなモーション、網膜を焼くネオンの輝き、刀の一閃で美しく切り離される四肢と首。こうした『GHOSTRUNNER 2』の基本要素は前作で完成されているので、通常戦闘は前作からほとんど変わらず楽しい。それに加えて今作では、新要素としてバイクステージが追加された。しかしこのバイクステージがなかなか厄介で、体験版で遊んだかぎりでは微妙に楽しくない。

すこし考えればわかると思うが、高速で動くバイクを操作しながら障害物を次々に避けるのはたとえゲームであっても一筋縄ではない。キーボードで操作してるのもよくないのだろうけれど、ハンドルの切り方がほんの少し甘かっただけでしょっぱい事故死を繰り返してしまう。普通の戦闘で敵に殺されるのは自分の至らなさだと受け止められるけれど、バイクステージでの事故死は釈然としない。どちらかというとイライラ棒寄りのプレイフィールになる。本質的にはどれも覚えゲーなのだが、見せ方ひとつで感じ方は変わるものだ。

無条件に面白いとはいえない。なのに、最後にバイクをAKIRA滑りさせる演出ひとつで俺はバイクステージのことを嫌いになれなくなってしまった。おそらく『GHOSTRUNNER 2』の製品版は買ってしまうだろうし、ブツブツ言いながらもなんやかんやで楽しんでしまうことだろう。

Parkour Legends

本作はタイムアタック型の横スクロールプラットフォームゲーム……身も蓋もない言い方をすると、パルクール版の『OlliOlli』だ。

OlliOlliと違うのは使用ボタンが多めなところで、ほかのゲームであれば自動で行われるような「崖際につかまる」アクションだけにわざわざ右トリガーが割り振られたりしている。現実のパルクールにおいて五体をフル活用する感覚が、このゲームでは使うボタンの多さや操作の複雑さというかたちで表現されているともいえる。

当然、操作はややこしい。チュートリアルは基本だけでも7ステップの長さに渡り、序盤は煩雑さが勝ってなかなか楽しめなかった。妙にリアル志向なので、ジャンプのタイミングをちょっとミスっただけで障害物につまずいたり頭をぶつけたりする。規定タイムでクリアすることで星を3つまで獲得できるが、慣れるまでは星1つどころかゴールするのが精一杯だった。

『Parkour Legends』はα版のゲームなので、今はなにもかも粗削りだ。グラフィックは素朴を通り越して粗末だし、ゲームがクラッシュすることも2回ほどあった。しかし、何度も転んではリトライを繰り返して星3つの完璧なランを決めるストイックな楽しみはすでに十分完成されていて、気付けば没頭して遊んでいた。

期待を込めて、ウィッシュリスト上位行きとする。

Soulslinger: Envoy of Death

Bloodborne風の黒衣に身を包み、リボルバーを操るガンスリンガー。死神と契約を果たした彼はソウルスリンガーとなり、辺獄リンボにはびこる悪魔を撃ち殺す使命を背負うのだった……。

自動生成型のアリーナで敵を殲滅し、ボーナスを手に入れて次のステージへ進む『Hades』ライクなローグライトFPS、それが『Soulslinger』だ。あまりにもHadesすぎて、説明をほとんど飛ばしてもすんなりプレイできてしまったほどだ。グラフィックはインディータイトルとしては及第点であり、魔物を殺すガンスリンガーというWeird Westな世界観が俺の好みのド真ん中をいく。

とはいえ、最初に紹介した『SENTRY』に比べると足りない部分も見受けられる。『Soulslinger』の体験版にはヒットマーカー、ヒット音、ヒットストップといった要素がほとんど存在せず、撃破された敵が爆発四散したりもしないため、銃撃を当てたときの快感に乏しい。その割に銃撃の反動は結構派手なので、なんだか虚空に撃っている気分になってしまう。FPS用語でいうところのガンプレイがちょっとよろしくない。

HadesにしろDead Cellsにしろ、名作と呼ばれるローグライトアクションはそもそもアクションゲームとして直感的に気持ちいいのが前提だ。もし『Soulslinger』のガンプレイがCODやDestinyのそれであれば購入確定なのだけれど、本当に惜しいところで画竜点睛を欠いている感じがする。

……などとほざきながら、俺は体験版ということも忘れて何度かリトライしてしまった。なんのかんの言ってもローグライクの中毒性はこのゲームに正しく宿っているようだ。悔しいが、ウィッシュリストに入れておこう。

趣味じゃない傑作に出会いたい

上記以外にもたくさんの体験版を遊んだ。20分遊んでもゾンビと出会わなかったサバイバルホラー、ローポリ劣化版『ローラードローム』風TPS、ガワだけ変えた『Valheim』モドキ……ただ、これらのゲームは味がしなかったりそもそも遊べるレベルに達しておらず、そういったものまで全部書くと脳がおかしくなるので割愛する。

正直、こうやって玉石混交のインディーゲームをDigるのは得意じゃないし好きでもない。徒労感がある。それでも折に触れてやるのは、「趣味ではないけれど傑作」に出会うためだ。きょうび趣味に合うものはおせっかいなアルゴリズムがいくらでもサジェストしてくるけれど、趣味の外側にある傑作は誰も教えられない。だから、ときには自分でSteamの深淵に飛び込んで探さなければならない。

そうして、俺のウィッシュリストは膨れ上がっていく。

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